第40話 バイオと寒天の意外な関係
    私たちが何気なく口にしている寒天ですが、なんとバイオでも活躍しています。このコーナーを書いている私自身、寒天とは切っても切れない間柄です。寒天はアガロース(寒天の強度を左右する)とアガロペクチン(アガロースに少量の硫酸とピルビン酸が結合したもので、寒天の弾力性を左右する)でできています。バイオの分野で使う寒天は、寒天からアガロースだけをとって生成したものです。微生物を培養するときに寒天を使うことがよくありますが、寒天が栄養分を包み込むことと、適度な温度で固体から液体(液体から固体)になること、微生物に分解されないこと(アガラーゼという酵素を出す微生物をのぞく)が優れているのです。この方法はなんとドイツの家庭の主婦が考えたといわれており、コレラ菌の発見で有名なコッホが発展させたものです。まさに、主婦の知恵は侮れないといったところでしょうか。遺伝子実験に使うアガロースは、微生物培養用のアガロースよりももっと精製されたものが使われます。バイオの世界では常套手段となっている電気泳動法は、寒天にDNAやタンパク質を寒天の中に入れて電流を流す実験方法です。寒天が固まるときに編み目構造ができます。DNAやタンパク質は弱い電気を帯びていますから、電流が流れると寒天の中をゆっくりと移動していくのです。まるで運動会の時の梯子くぐり競争を想像するとよいでしょう。移動する速度は電気の量(電荷量)と分子量(大きさ)によって左右されるので、DNAやタンパク質を染めると、寒天に縞模様になって現れるのです。寒天はハイテクを支えているのです。
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    第39話 魚は暮らしのパートナー
     日本人はよく魚を食べる民族だと言われます。それを反映してか、日本のことわざや言い回しには、魚がよくでてきます。”たらふく食う”、”やたら食う”のたらは鱈のことで、鱈が大食漢の魚であることに由来します。秋ナスビと並んで嫁に食わすなと言われている秋サバ。うまい秋のサバを憎い嫁に食べさせたくない意地悪な姑の心理を表しているとも、あたりやすいサバを嫁に食べさせると体にさわるという優しい配慮だとも言われています。どの説に立つかは読者の皆さんにお任せしましょう。サバは”生き腐れ”と言うほど早く鮮度が落ちるので、急いで数をごまかして売ったことから、サバを読むという言い回しが誕生しました。よく実らぬ片思いをさして、磯のあわびの片思いなどといいます。ちなみにあわびはああ見えても巻き貝なんです。ですから対になる殻など無いことから生じたことわざです。当の本人からすると余計なお世話ですが。同じ貝でも
    蛤は合わせられた貝殻を離して、他の同じ大きさの蛤の殻と組み合わせようとしても合わないのです。ぴったりと組み合わせられるのは、もともとセットになっていた貝殻同士だけです。そのためか、かつては蛤の内側にきれいな絵を描いて、高貴な人々の結婚の縁起物とされていたようです。この性質を利用したのが、平安時代から行われていた貝合わせ(貝覆いとも言う)という遊びで、日本版神経衰弱とも言えるものです。まず蛤を360個用意します。蛤の貝殻を分けて片方(地貝)を甲を上にして並べ、もう一方の貝(出貝)を1つずつ出してきてフィットする貝を見つけるという遊びです。後に貝の内側に絵や和歌の上下の句を書き込んで遊ぶようになりました。このように魚や貝は大切なパートナーだったのです。
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    第38話 ゼラチンと寒天の違い
    ゼラチンと寒天は、似ているものとしてややもすれば混同されてしまいます。固まる点を除いて、両者には大きな違いがあります。ゼラチンは動物の皮や骨から作られ、タンパク質が主成分です。一方、寒天はテングサやオゴノリなど海藻から作られ、主成分はアガロースとアガロペクチンです。アガロースやアガロペクチンは、食物繊維としてはたらきますから、整腸作用が期待できます。ちなみにイスラム教国では、ラマダン(断食)明けにまず寒天を食べます。断食の後いきなり高カロリーの食事をすると胃腸が対応できないので、ノンカロリーで整腸作用のある寒天を食べるのは実に理にかなっています。さらに寒天は、凝固点が35〜40℃、融解点は85〜95℃です。ですから、一度固まった寒天は気温が高くても型崩れしにくいのです。ゼラチンは凝固点が15〜25℃、融解点は20〜25℃と低く夏場に型崩れするおそれがあり注意が必要です。
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    第37話 常識に潜む嘘
     一般に常識と言われていることが大嘘であることがたまにあります。
    1.アメリカンはコーヒをお湯で薄めたもの?
     味が薄いのでそう思われているのでしょう。しかし、アメリカンは珈琲豆の焙煎を軽めにして、最初から薄めにドリップしてこそなのです。
    2.ふぐは毒を作る
     ふぐの毒はテトロドトキシンといい、加熱に強い毒素です。テトロドトキシンは微生物の作る毒素を除いて、自然界に存在する毒素では最強の部類に入ります(青酸ソーダの1000倍の毒力といわれています)。この毒素はフグ以外にも、いもりの一種やカニの一種にも含まれています。なんと微生物(ビブリオ属の一種)にも見られます。最近ではふぐが毒を作るのではなく、毒性のあるものをフグが取り込んで毒化するのだとの説も出されていますが、未だに確認はとれていません。
    3.コーヒーカップ=ティーカップ?
     コーヒーカップとティーカップは同じものと思ってませんか。コーヒーは温度を保つのが大切で、そのためコーヒーカップは厚手になっています。しかもエスプレッソ用など様々な大きさのものがあります。紅茶は色の鮮やかさを楽しむ要素があり、そのためカップは浅めで肉薄になっており、カップの内側は着色されません。つまり、ティーカップは紅茶の色を引き立てる作りになっているのです。
    4.抹茶はお茶を粉にしたもの?
     抹茶はお茶を粉にしたものと思ってませんか?実は抹茶にする茶葉は玉露と同様に茶の新芽が伸びてきた頃に覆いをかぶせて光があまり当たらないように育てます。この後くっついている茶葉を風を当ててバラバラにし、熱乾燥させてから石臼でひいたものです。茶揉みはしません。意外にもお茶を粉にして飲む方法は元々中国にある飲み方が日本に伝わったものなのです。
    5.ビールの王冠を栓抜きでたたくとビールがおいしくなる?
     ビールの栓を抜く前に、栓抜きで王冠を叩いている方いませんか?もしそうしている方がいたらやめた方がいいですよ。ビールの味がまずくなる可能性があるんです。ビールにはなんと約2気圧の圧力がかかっています。炭酸ガスはある程度まで水に溶け込むことができますが、これも15℃、1気圧の時約0.2%にすぎません。一方、実際のビールには0.5%程度も炭酸ガスがとけ込んでいます。このような限界を超えて物質が溶け込んでいる状態を過飽和といいますが、とても不安定な状態なのです。でも、ビールの場合はビール中の成分が炭酸ガスを吸着してくれるので、比較的安定した状態をとっています。それでも過飽和には違いありませんから、むやみに衝撃を与えた後に栓を抜くと安定した状態が一気に崩れて泡が吹き出してしまうのです。ビールは衝撃に弱いデリケートな飲み物なのです。
    6.都会の牛乳は薄められている?
     ”都会の牛乳は薄い。水でも入れてるんじゃないか?”よくこんな話を耳にします。これは大きな間違い!牛乳は様々な法律で成分、細菌数、製造方法や容器への表示に至るまで細かく規定されています。水の一滴でも入れようものなら、れっきとした違法行為です。
    では何でこんな話が生まれたのでしょうか?その一つの原因に均質化(ホモジナイズ)の有無があります。通常のパック牛乳は、牛乳の中にミクロの粒状で存在している脂肪球を細かくする工程(均質化)を行っています。もし均質化しないと、徐々に比重が軽い脂肪が牛乳の表面に浮いて、表面の脂肪が濃く、逆に下の方は薄くなります。この状態で牛乳を飲めば、最初に口に入った脂肪分の味で口の中がいっぱいになり、後の薄い部分の味に気づかない事があり得るのです。それから、牛乳の脂肪分は牛の種類によって違います。一般的なホルスタイン種に比べ、ジャージー種は乳量が少ないけれども脂肪分の高い牛乳を出します。ですから、ジャージー種の牛乳を飲むと濃く感じることと思います。
    7.バナナを青いうちにとってくるのは熟させるため?
     よくバナナ(写真はここをクリック)を青いうちにとって日本に運ぶのは、熟した状態で運ぼうとすると熟しすぎて傷むからだ、などとまことしやかにいわれています。ところがこれは真っ赤な嘘です。熟したバナナにはミバエという害虫がついていることがあり、熟したバナナは検疫に引っかかるんです。青いバナナが輸送中に熟すかというととても時間が足りず、甘みもあまり期待できません。そこで現在は植物の成熟ホルモンであるエチレンガスをバナナにかけて黄色く熟させているのです。しかも熟成中のエチレンガス濃度はコンピューター管理されているというのですからバナナはすごい!
    8.炭酸飲料は歯や骨を溶かす
     よく魚の骨などを炭酸飲料につけておくと、溶けてしまうという実験を引き合いに出して、”炭酸飲料は歯や骨を溶かすので体によくない”という噂を耳にします。歯や骨はリン酸カルシウムを主成分にしていますから、酸に溶けるのは当たり前です。やはりそうか。十藻はないでください。ここに重要な落とし穴があります。酸にも色々な種類があります。日常食べているものでは、酢の方が炭酸飲料に比べて強い酸です。事実、巣に魚の骨などをつけておくと、炭酸飲料よりも早く溶けてしまうとか。でも、酢で歯が溶けるということはありませんね。そうです。骨や歯をすや炭酸などの食品の酸で溶かそうとするとかなり時間がかかるものです。食べ物は口に入っている時間が短いので、酢や炭酸飲料程度の酸では問題が起きません。骨の場合は酸性の食品と直接接触はありません。消化され、吸収された成分との接触ならあります。でも、酸性の食品を食べたらさっbせいに、在処理性の食品を食べたらアルカリ性にと、体の環境が食べた食事によって急激に変わるようでは生きていけません。実際に体は恒常性という性質があり、体のない武官強が激変しないような仕組みになっています。ですから、炭酸飲料を取ったり、酢を取ったりしても、骨がもろくなるいということはありませんし、持久力が低下することもありません。色々な実例が引き合いに出されていますが、それらほとんどは飲料よりむしろ乱れたり、偏ったりしている食生活に原因があるといえます。炭酸飲料を気にする前に、カルシウム不足を解消したり、ビタミンをとるよう心がけ、適度な運動をする方が効果があります。
    9.ミョウガを食べると物忘れがひどくなるってホント?
     ミョウガを食べると、物忘れがひどくなるって聞いたことありませんか?実際には、全くの事実無根なんです。でも、なぜこんなことを言われるようになったのでしょう?実は、ミョウガとはバンドクという一人の男にちなんだ植物だからなのです。バンドクは自分の名前すら忘れてしまうほど物忘れがひどいので、お釈迦様は自分の名前を書いた荷物を背負わせました。みんながバンドクをバカにしましたが、お釈迦様は”たった一つであっても約束した掃除を忘れずに守った彼は立派だ”と人々に諭したとか。このエピソードから、彼にちなんだ植物であるミョウガは、草冠に名、その後に荷と書いて茗荷(みょうが)と読むわけです。
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    第36話 捨てたものから大逆転・・・その2
     ベビースターラーメンって御存知ですよね。私も昔食べました(今でもたまに食べますが)。このベビースターラーメンが逆転の発想の産物であることを御存知ですか。ベビースターラーメンを生産している会社(おやつカンパニー)の創業者は、製麺業(麺を作る仕事)を営んでいました。ある時、製麺機を使って仕事をしていたときに、機械から出てくる麺の不要な切れ端に目が止まりました。もったいない。そう思った社長は子供のおやつにと麺の切れ端をしょう油だれに漬けて、揚げて子供のおやつにしました。子供たちは喜んで、”おいしい。おいしい。”といって食べたとか。それを見た社長はひらめきました。そうだ、これをスナックにして売ろう。こうしてベビースターラーメンが誕生したのです。ちなみにベビースターラーメン(カップラーメンじゃなく袋菓子の方)にお湯をかけても、ラーメンには戻りません。これはラーメンにはカンスイが入っていますが、ベビースターラーメンにはカンスイが入っていないためです。ところが水を吸って歯ごたえが変わるのを利用した製品も開発したとか。もんじゃ焼きやあんかけに加えるというのです。とろみのある餡とベビースターラーメンの食感が面白いんだとのこと。創業者の逆転の発想は現在も息づいているということでしょうか。
     さらに大逆転の発想をもう一つ御紹介しましょう。耐熱性ガラス容器って便利ですよね。ガラスに熱いものを入れると割れるという常識を覆したすばらしい発明品です。オーブンや電子レンジの料理に重宝で、しかも丈夫です。この耐熱性ガラス食器のはしりであるパイロセラムは、失敗の産物を床に投げ捨てたことから始まったってご存じですか。アメリカにコーニング・ガラスという会社があります。そこで新しいタイプのガラスを研究中だったストーキー博士が、実験中に間違ってガラスの温度を900℃まで上げてしまいました。博士は失意のうちに失敗作を床にたたきつけました。すると、どうでしょう。ガラスは割れるどころか、床の方がへこんでしまいました。このガラスを調べてみると、きれいな結晶構造が全体的にできていて、耐熱性や耐凍性、激しい温度差にも耐え、しかも鉄並みに丈夫だということがわかったのです。こうしてパイロセラムは生まれました。
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    第35話 捨てたものから大逆転・・・その1
     捨てていたものからとんでもない素晴らしいものができる。こんな大逆転があるという話は、第13話のイカのゴロ(内臓)からコレステリック液晶がとれる話のようにいくつかあります。今回はみなさんの身近な食べ物から大逆転の発想を1つ。寒天が捨てたものから生まれた日本独自の食べ物だという話です。以前に御紹介しましたが、ところてんは平安時代に中国から伝わったものです。でも、ところてんは寒天のように白くなく、しかも海藻臭いものでした。時は江戸時代、徳川4代将軍家綱公の頃。京都の旅籠(今で言う旅館)の美濃屋太郎左右衛門のところに参勤交代途中の薩摩藩主島津公が宿をとりました。その時に出した料理の中にテングサを煮て作ったところてん料理がありました。余ったところてんを捨てておいて数日後、太郎左右衛門は捨ててあったところてんをみると、なんと干物になっていました。このところてんに水を加えて煮てみると、あら不思議。ところてんは溶けてしまったではありませんか。そのまま放っておくとまた固まって、しかももとより白くなり、海藻臭さもなくなっているではありませんか。これがきっかけで、太郎左右衛門は研究に研究を重ね、ついに寒天の製造法を確立したのです。このとき何が起こったか説明しましょう。京都は盆地のため冬の夜はとても寒くなります。捨ててあったところてんは凍ってしまいます。やがて朝になり日が昇ると、凍ったところてんが溶けて自然乾燥されます。それが数日間繰り返されて干物ができたわけです。この過程で海藻由来の不純物が除かれたと思われます。かつて寒天の精製が今程良くなかった頃、微生物実験に寒天を使う場合に寒天を固まらせては凍らせ、溶かしてはまた固まらせるという手順で寒天を精製していたとか。ちなみに私も微生物が専門ですが、こんな苦労はしたことがありません(実は若いんだとPRしているだけか?)。昔も今も寒天の精製法は変わらないんですね。ちなみに美濃屋は、その後寒天製造業を始めたとか。素晴らしい食材を遺してくれた美濃屋太郎左右衛門さんに感謝!ちなみに寒天という名前は、江戸時代初期に中国から渡来し黄檗宗の開祖となった隠元禅師なんです。ある時に寒天を試食したおりに名付けたとか。実は寒天というのは由緒正しい名前なんですよ。
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    第34話 牡蠣のすごい底力
     牡蛎(カキ)と言えば広島が有名ですが、ここ北海道オホーツクのサロマ湖は、ホタテの産地であるとともに牡蠣の産地でもあります。かのジュリアス・シーザーやナポレオンも大好物だったという牡蠣にはものすごい底力があります。まず牡蠣は牛乳に勝るとも劣らないほど栄養価とバランスに優れているので、別名を海のミルクと呼ばれているほどです。サロマ湖の牡蠣は主に1年もので身が小振りではありますが、エネルギーの元になり、しかも味のまとめ役として重要な働きをするグリコーゲンが豊富で消化がよく、身も締まっていておいしいのです。その他に、タンパク質、リン、カルシウム、鉄などのミネラル(無機塩)、ヨウ素も豊富です。レモンを絞るか、レモンの切れ端と一緒に食べれば最高の味。目の疲れをとるタウリンも豊富です。おねしょや寝汗にも体が温まる牡蠣がよいとの説もあります。不眠症にもよいとか。さて、特に注目されているのは亜鉛が多く含まれることです。最近の若い世代には亜鉛不足による味覚障害があり、薄い味がわからなかったり、本来の味とは違う味に感じたりしてしまうとか。そんなあなたに牡蠣がおすすめ。牡蠣があなたの味覚を正常に戻してくれます。素晴らしい海の幸、牡蠣に拍手。
     さて、 カキといえば英語の月のスペリングにrのある月(9〜4月の秋から春にかけて)は食べて良いとされます。これはカキが栄養をためて肥え太る時期です。これに対し5月以降は産卵行動にはいるため味が落ちるとか(ちなみにこの時期のカキは鼻垂れカキの異名があるとか)。日本でも花見をすぎたら食べるななどといった諺があり、洋の東西を問わず先人の知恵には驚くばかりです。
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    第33話 ネコにキウイ?
     猫にマタタビは誰でも聞いたことがあるでしょう。猫にマタタビ(実や葉)を与えると、猫は甘ったるい声を出してじゃれついて、よだれを流して転げ回り、最後は恍惚として寝込むんだそうです。これを専門的にはマタタビ反応といいます。これは猫だけでなく同じネコ科のトラやライオンでも同様とか。なんだかマタタビ反応を起こしたトラなんてだらしなく見える話です。マタタビ反応はマタタビに含まれるイソイリドミルメシン、イソジヒドロネペタラクトン、イリドミルメシン、イソネオネペタラクトンが原因となっておこります。これらの物質がネコ科動物の脳内だけにある器官に反応するんだとか。実はマタタビはサルナシ科(マタタビ科)の植物で、同じサルナシ科の植物には、サルナシ(北海道ではコクワともいいます)やキウイ(写真はここをクリック)があります。実は同じサルナシ科のキウイにもマタタビ反応を起こさせる物質が多少あるので、弱いながらもマタタビ反応が起きてきます。でも、猫にキウイって言うのは妙な気もしますが。キウイを家庭菜園に植えている方は、ネコに苗を掘り返されないように注意が必要です。
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    第32話 ギョウジャニンニクを臭わず食べよう
     ギョウジャニンニクを御存知ですか?ギョウジャニンニクは、北海道に自生しているネギ属の野草です(写真はここをクリック)。この名前は、植物学の権威である牧野富太郎博士が、行者が食べるネギのようなにおいのする植物という意味で名付けられたのだそうです。ビタミンCや食物繊維もさることながら、カロチンを特に多く含んでおり栄養価の高い食品です。でも、たった1つ気になる点が。それは名前にもあるように強いネギのような香りがするため、ギョウジャニンニクを食べた後は口臭が気になってしまうのです。この点を解決したのが北海道東海大の西村弘行教授です。先生が北大の助手をしていた時代に、ネギ属植物の研究をされていてギョウジャニンニクと出会います。ギョウジャニンニクの香りが出る仕組みは、ニンニクやネギ、タマネギなどネギ科の植物が身を守るために示す共通した反応によることに注目します。食べられたときに臭いにおいがしたら、もう食べられないと言う原理です。においの出る仕組みは、アリインなどの硫黄分を含むアミノ酸(含硫アミノ酸)にC−Sリアーゼという酵素が作用します。すると、アリシン様物質という抗菌性のある成分が出てきます。さらにアリシン様物質は化学反応で臭い成分になります。そこで、この反応を止めればにおいが消えるわけです。酵素反応を止めるのが手っ取り早いので、傷を付けずにギョウジャニンニクを加熱する方法が考えられます。しかし、これではギョウジャニンニクの有効成分を活かしきれない、そう考えた先生はある方法を採りました。それはアリシン様物質とビタミンB1を化学反応させ、活性持続型ビタミンであるアリチアミン類にする事だったのです。こうすれば、ギョウジャニンニクの有効成分を無駄なく活かせます。先生はついに無臭ギョウジャニンニクを活かした食品を生み出しました。餃子です。私が北海道大学農学部農芸化学科(現・生物機能化学科)の学生だった頃、先輩から後輩に引き継がれる秘密のノートがありました。それが西村先生の無臭ギョウジャニンニク入り餃子の理論とレシピでした。毎年6月頃開かれる北大祭では、農学部の前にこの餃子の模擬店が建ちます。結構いい売れ行きなんです。当時は西村先生と面識がなかった自分もレシピを元に、冷凍したギョウジャニンニクを料理した思い出があります。なぜ餃子かというと、餃子に含まれる挽肉はビタミンB1が多く含まれているので、先に御紹介した反応でアリチアミン類が合成されると言うわけです。実際にはもう一寸工夫があるんですが、その辺は西村先生の本を見るか、北大祭の模擬店でギョウジャニンニク入り餃子を食べながら学生に話を聞いてみてください。餃子を作る前に御紹介したお話をしっかり勉強することが義務づけられているはずですから。
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    第31話 ビールあれこれ
     今回はビールにまつわる素朴な疑問についてお答えしましょう。
    1.生ビールってどういう意味?
     よく居酒屋で”生ひとつ!”なんて注文したりしませんか?この生はもちろん生ビールの生ですが、この生ってどういう意味でしょう。通常のビールは容器にビールを詰めた後、パストライザー(殺菌機)で60℃の温水をかけて酵母の働きを止めて日持ちをよくしています。この加熱処理(パスツリゼーション)を行わないのが生ビールです。現在はセラミック濾過法という熱をかけずにセラミックフィルターで酵母を濾過して除く方法で生ビールが作られています。
    2.ラガービールってどういう意味?
     ラガービールって何気なくいってますが、これはどんな意味でしょうか。ラガーはドイツ語のLagern(貯蔵)が語源で、貯蔵による熟成工程をとるビールのことで、日本のビールはラガーが主流です。
    3.ピルスナーの由来は?
     日本のビールはピルスナーが主流です。ピルスナーは下面発酵ビールの一種で、発祥の地であるチェコのピルゼン地方が名前の由来です。ちなみに、現在は地ビールブームですが、地ビールメーカーが製造しているビールは、アルトやエールなどの上面発酵ビールが最も多いとか。下面発酵ビールより醸造期間が短いという点もさることながら、ピルスナーなど下面発酵ビールに慣れた私たちに地ビールの個性をアピールした結果だという意見もあります。
    4.ビールの大瓶はなぜ633mlなの?
     これは不思議ですよね。720mlなら1升(=10合)の40%量ですから、720mlビンは4合ビンと言われていますね。でも、633mlと言う半端な数字はどうしても出てきません。昭和15年(1940年)に酒税法が改正されたときに、ビールの入っている量を精確にしようと調査が実施されました。すると、一番大きいビンで643.992ml(3.57合)、一番小さなもので633.168ml(3.51合)でした。最も小さいものに会わせれば今まで使っていたビンを無駄に使わなくて済むとのことで、昭和19年(1944年)にビール大瓶は633ml(3.51合)と決められたのです。同様に小瓶は334mlと決められたのです。
    5.ビールがググッと飲めるわけ
     ビールをジョッキに何杯も飲む人をよく見ますが、同じ温度の水はがぶ飲みできないのではないでしょうか?なぜ、ビールはたくさん飲めるのでしょうか。実はビールと水では吸収され方が違うのが原因なんです。水は腸でしか吸収されないので、胃にどんどん溜まります。ところがアルコールは胃で吸収され、そのときに水も道連れにして吸収されるのです。さらにビールを飲むとトイレが近くなりますよね。実は、ビールには利尿作用(尿をでやすくする作用)があるのです。具体的に言えば、バソプレッシンという抗利尿ホルモン(尿の生成を抑えるホルモン)の分泌を抑える働きによります。こうして飲んだ先から小便になっていくというのも、ビールがたくさん飲める秘密でもあります。
    6.ビールを冷やしすぎると味がおちる?
     ビールの特徴は発酵の際にアルコールとともにできる二酸化炭素を、たるやびんに閉じこめてあることです.びんの口を開けると、ビールに溶けていた二酸化炭素は泡になって出てきます。ビールの中に溶けこむことのできる二酸化炭素の量は、温度が上がるほど少なく、逆に冷たいと多くなります。日本のビールは約10℃前後でちょうどよく泡がでるよう調節してあります。そこで冷え方が不十分だと泡立ち方が激し過ぎ、逆に冷蔵庫などで冷やし過ぎると泡の立ち方が不十分になるわけです。ビールの泡は口あたりをなめらかにし、にが味やアルコールの刺激を和らげる作用があります。ですから、泡の出方が不十分だとビール独特の味を十分味わうことができません。また、泡がでないほど冷えたビールは香りの発散も不十分です。
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