|
突然、”酵母にも個性がある”、と言ったら、”何のことかよくわからん!”とおしかりを受けそうです。実はパンに使う酵母も、日本酒に使う酵母も、ビールに使う酵母も種類は一緒でも全く違った発酵をします(酵母の写真はここをクリック)。パン酵母には、パン生地がよく膨らむように炭酸ガスを多く出すことが求められます。さらにジアセチルという、パンを焼いたときの香ばしい匂いのもとになる物質を多く出すことも求められます。日本酒の酵母には特有の香り(例えば吟醸酒に見られるフルーツ型の香り、吟醸香)やお酒の主成分のエチルアルコールを多く作ること(濃度にして20%前後)が求められます。ビール酵母ではパン酵母ほど多く炭酸ガスを作る必要がないのですが、パン酵母よりも強いアルコールを作る能力が必要です。酸素の量と栄養成分の量が、アルコールと炭酸ガスのどちらをより多く作るかをコントロールできます。でも、酵母の個性も大きく影響するのです。パン酵母で好まれるジアセチルは日本酒では嫌われます(業界用語では、つわり香といいます)。日本酒用の酵母やビール用酵母でパンを作ることはできますが、炭酸ガスを出す能力が弱すぎて良いパンができません。まさに適材適所と言った感があります。最近、日本酒用の酵母で地ビールを造っているメーカーがあるとの情報を聞きましたが、一体どんなビールになっているのでしょうか。 バニラ(ワニラともいう)は、アイスクリームなどに欠かせない素晴らしい香料です。16世紀にアステカ王国(今のメキシコにあった)がスペイン人フェルナンド・コルテスに征服された当時、アステカの王達はココアとコーンパウダー、蜂蜜、そしてバニラ豆を原料とした香りのよいチョコラートという飲み物を飲んでいました。これが注目されないはずはありません。コルテスは実際に飲んでみて、そのおいしさのあまり財宝と共にヨーロッパにバニラを運び、やがて広く使われるようになりました。彼はバニラを持ち帰るとともにバニラ入りのチョコレートを作らせ、これがきっかけでチョコレートが世界に広がることになったんです。バニラはチョコレートの父でもあったんですね。さて、化学が発達した今日では天然バニラの香り成分が分析され、バニリン、アニスアルデヒド、アニスアルコールなどが香りの成分として知られています。中でも香りの最も主成分であるバニリンは、様々な方法で化学合成できるまでになっています。ところが値段の安い合成バニリンではなく、とても高価な天然バニラの人気は根強いものがあります。何故かというと、天然バニラの香りは、バニリン以外に様々な成分が入っていて、その絶妙な組み合わせは合成品に勝るとか。実は、バニラ豆は取ったそのままでは香りが出ません。キュアリングと呼ばれる処理によって本来の香りが出てくるのです。キュアリングの方法は産地によって何通りかあるそうですが、直射日光に当てるのは共通事項といえます。この処理により豆の色が緑から暗褐色となり、豆の中の酵素の作用で香りが出るのです。 カマボコの板ってただ付いてると思っていませんか?ところがどっこい、ちゃんと意味があるんです。板の材質は樅(もみ)などが使われます。樅は水分をすいやすい特徴があります。カマボコを蒸したときに出る余分な水分を板が吸ってくれるので、カマボコの保存性が良くなると同時にきれいに仕上がるのです。ところで、カマボコって漢字で書けますか?漢字で書くと、蒲鉾となります。これは蒲鉾が焼き上がった様子が、水辺に生える蒲(がま)の穂に似ているために、この漢字を当てたとか。今日のちくわに近いスタイルで、板付き蒲鉾ではありません。蒲の穂に似ていたことからわかるように、当時の蒲鉾は細い竹に塩を加えたすり身を付けて焼いていたのです。このタイプの蒲鉾は、平安時代の1115年に書かれた文献に記述があることからかなり昔から食べられていたようです。板付き蒲鉾ができたのはずっと後のようです。豊臣秀頼が伏見から大阪に戻るときに料理人にいた付き蒲鉾を作らせたという記録があり、桃山時代の終わりには板付き蒲鉾が作られていたことがわかっています。ただし、現在の板付き蒲鉾は蒸して作る蒸し蒲鉾なのに対し、当時の蒲鉾は表面を火で焼く焼き抜き蒲鉾でした。ちなみに、板付き蒲鉾が登場してからはこちらを蒲鉾というようになり、それまで蒲鉾と呼ばれていた物は、ちくわと呼ばれるようになったのです。今や蒲鉾は仙台の笹蒲鉾、東京のはんぺんや伊達巻き、小田原の蒸し蒲鉾、焼津のなると巻き、大阪のや聞いた蒲鉾山口の白焼き蒲鉾、鹿児島のつけ揚げなど全国各地に原料にする魚や形、味などが違う様々なバリエーションが生まれ、地域に根ざした食品として発達してきました。蒲鉾を食べながら、その蒲鉾を生んだ風土を知る。そんな食べ方も素敵じゃないですか? とかく日本は何に付けても上下がうるさい。そんな中で西洋から渡ってきたビールにも上下があるって知ってました?どこのビールがうまいとか、そういう話ではないんです。実はビールには、上面発酵ビールと下面発酵ビールがあるのです。上面発酵ビールは、ビールの種類でいえば、スタウト、ポーター、ゴーゼ、バイツェン、ベルリナーワイス、リヒテンハインビール、ケルシュ、アルト、エールなどが該当します。上面発酵ビールに使う酵母は、発酵中に酵母が液面に浮かんでくる酵母(上面酵母、top yeast)を使います。一方、日本の大手メーカーで生産されているビールのほとんどは、下面発酵ビールです。下面発酵ビールは、ビールの種類でいえば、ミュンヘンビール、ボックビール、ウィーンビール、ピルスナーなどが該当します。下面発酵ビールに使う酵母は、発酵中に酵母がタンクの底に沈んでくる酵母(下面酵母、bottom yeast)を使います。上面発酵ビールは、下面発酵ビールに比べ醸造期間(お酒になるまでの時間)が短いことも特徴です。以前、某大手メーカーの技術者に上面酵母と下面酵母は遺伝子(DNA)に特に違いがあるのかと質問したことがあります。答えは特にないとのこと。微生物はちょっとした発酵条件や性質の違いで、様々な美味しさを私たちに届けてくれるものだと実感したしだいです。 マキシーキャップをご存じですか?マキシーキャップといっても、オグリキャップ(往年の名馬)の親戚じゃありませんよ。このコーナーは食品雑記帳、食品関係じゃないと話題にならないんですから。マキシーキャップというのはオロナミンCのキャップに使われているものです。あれ?オロナミンCってスクリューキャップ(ネジふた)じゃなかった?という方、年齢がわかりますよ。確かにオロナミンCのキャップはかつてスクリューキャップでした。では何故マキシーキャップになったのでしょうか。昔のことですが、飲み終わった後のオロナミンCのビンに農薬を入れてふたをしてあったのを知らずに、別の人が飲んでしまって中毒を起こす事件がありました。注意すれば一度開けたビンかどうかわかりそうなものですが、この事件を教訓としてビンのふたの改良が検討されました。ポイントは一度あけたら二度とふたができない。一度封を切ったら誰が見てもわかるようにするということでした。それでマキシーキャップが採用されたのです。マキシーキャップは炭酸飲料の高い圧力にも充分耐え、しかもあけやすいという特徴もあります。ちなみにうまくあけるコツは、ふたを一気に取らず取ってのリングを手前に引いて、一呼吸おいてからふたを取ることです。これはリングを手前に引くとふたの裏のディスクとビンの間に僅かな隙間ができます。これでビンの中のガスが外に抜けて、中身が吹き出すのを予防できます。もちろんビンを開ける前に振ってはいけません。 コーラって何でしょうね?こう聞かれると誰もが答えに詰まるでしょう。コーラとは、コーラという西アフリカのナイジェリア原産の高さ6〜9m位になるアオギリ科植物に名前が由来します(ちなみにカカオもアオギリ科の植物)。コーラは1.5〜2.5%のカフェインを含む栗粒ほどの実を付けますが、この実からエキスを抽出します。現地人が飲んでいたコーラ飲料は1800年代にヨーロッパに上陸しました。一方、アメリカではコカという植物の葉を利用した飲料が上陸していました。時は1885年。、アメリカの薬剤師ジョン・ペンパートンがコーラエキスとコカエキスを混合した飲料を生み出しました。これがコカ・コーラの始まりです。お気づきの方も多いと思いますが、コカの葉は0.5〜1.5%のコカインが含まれるので、コカインの原料となります。無論コーラの原料となるエキスは、コカインを完全に除去して作られているのでご安心を!さて、このコーラ飲料は全米のソフトドリンク生産高の約6割を占めるほどの人気だとか。世の中刺激がほしい時代なんですかねー? 真珠漬ってご存じですか?三重県の鳥羽方面に行くと至る所で”真珠漬”と書かれた看板を目にします(写真はここをクリック)。真珠入りの漬物なんて高級な・・・などと思われるかもしれません。実は真珠漬と行っても真珠が入っているわけではありません。何故真珠漬と呼ぶのでしょう?真珠の養殖にはアコヤガイという貝を使います(真珠のできる仕組みは長くなるので触れません)。アコヤガイから真珠を取り出した後に貝柱も食用に取り出されます。このアコヤガイの貝柱を酒粕につけ込んだものが真珠漬です。アコヤガイの貝柱は以外に大きく、食べ応えがある逸品です。特産の海の幸を隅々まで利用する姿勢には、学ぶべきものが多いのではないでしょうか。ちなみに三重県ではありませんが、真珠貝のその他の部分を使って魚醤油のような食品ができているとか。真珠貝でできた醤油や真珠漬けなんて、リッチな気分になれますね。 人気の高い時代劇に必殺仕事人があります。あの三味線の糸を使った技は印象的です。実はカキ(牡蛎)の世界にも必殺のこの技が活かされていると言ったら驚きですか?。三重県にはカキの産地として知られる的矢湾があります。的矢の牡蛎は全国に先駆けて清浄牡蛎を実現したので有名です。この的矢で特別注文された牡蛎には細いワイヤーが付いていて、これを引っ張るだけでいとも簡単に牡蛎殻を開けられると言うのです。ワイヤーが小柱に食い込んで、やがて切れるためです。生きた牡蛎の殻をきれいに開けるには熟練の技が必要でした。この必殺仕掛人もどきはどんな仕掛けになっているのでしょうか。水揚げした貝をある物質(ニガリのようなものと考えてください)に漬けておくと、貝は口を開きます。そこをすかさず小柱をとりまくようにワイヤーを入れます。次に通常の海水に戻すと貝は殻を閉じます。ちなみに牡蛎は海水を取り込んでいるため、ニガリの成分は残らないとか。あとはワイヤーの端を結べば出来上がりです。これはフランスの特許を使用しているそうですが、さすがに人の美食にかける意気込みを感じる技術です。 さて、以前ガラナの誕生についてご紹介しました。その回の最後に北海道限定販売の状態だったガラナが、97年から全国で販売されるようになったこともご紹介しました。なぜ今ガラナなのでしょう。まず、アメリカでカフェイン入りミネラルウォーター、ドイツでエナジードリンクなどという刺激のある飲料がブレークしたのが一因でしょう。万国共通の若者が刺激を求める傾向を、メーカー側が敏感にキャッチしたのです。まずガラナの実にはコーヒーの3倍のカフェインが含まれていること、そしてガラナ飲料は強炭酸(20℃の液体に含まれる炭酸ガス圧力が 3kg/cm2を越える)であることなどがニーズにあっているのです。さて、この動きにさらに追い風が吹きました。ネズミの脳の培養細胞を使った実験で、ガラナに含まれるエピカテキンという成分に、アルツハイマー病で問題となるβ−アミロイドというタンパク質から神経細胞を守る効果がある、という論文が東大から発表されたのです。北海道以外ではコーラに連戦連敗だったガラナも、ここにきて逆襲を始めたのです。しかし、やはりコーラの力には負けてしまい、’97年末には新規参入した企業はほぼ撤退しました。またもや北海道限定販売の状態になったガラナ。でも、ガラナ自体の出荷量はわずかながらのびています。次のガラナの逆襲はいつになるのやら?これから御紹介するガラナは市販品と外国で飲まれているガラナ飲料の写真はここをクリックしてみてください。ちなみに、京都、大阪、九州でガラナが違った形で生き延びているんだそうな。北海道のガラナがコーラを目指して作られているのに対し、これらのガラナは旅館やスナックなどで利用があるとか。このガラナは、お酒が強くない人が酒席で飲むことが多いようです。そのため味も大人向けになっています。特に九州地方で飲まれているお父さんの味方ともいえるこのガラナは兵庫県の一企業で作られているんだそうな。別の機会に御紹介しますが、二日酔いの時はカフェインが多く入った飲料を飲むと、頭がすっきりするんだとか。スナックとガラナって意外にいい相性かもしれませんね。 クレオパトラ(BC.69〜30)は、毒蛇に乳房を咬ませて自殺したり、牛乳風呂など伝説に事欠かない世界3大美女の一人。今回は、みなさんがあっと驚く?お話。世界で初めて炭酸入り飲料を作ったのは、なんと彼女だというのです。クレオパトラは真珠をぶどう酒に入れて溶かして、美容と長寿の秘薬として愛飲していたとか。真珠は主に炭酸カルシウムでできているため、酸性であるぶどう酒と反応すると、溶けて炭酸ガスがでます(よいこのみなさんはやらないでください!ママが泣きますよ!)。また、こんなエピソードもあります。彼女はローマの将軍アントニウスと、”一回の食事で100万シスタセスの財産を使いきることが出来るか?”という賭をしました。あまりの大金に出来ない方に賭けたアントニウスに対し、出来る方に賭けた彼女は、ビネガーに真珠を溶かして飲み干したとか。このエピソードは酢が真珠や石灰岩を溶かすことを知っていた証拠だといわれています。エリザベステーラー主演の某有名映画のワンシーンにも使われたこの伝説。さすが絶世の美女はスケールが違うと言うことでしょうか? |