新琴似、屯田防風林を歩く
Shunta
 「屯田防風林もよいウォーキングコースだよ」と、札幌シニアネットのI氏 が云っていたことを思い出して、7月末の好天のある日に出かけてみた。JR 札沼線(学園都市線)新琴似駅でディゼルカーを降りる。地下鉄南北線麻生駅 からも徒歩10分程度とごく近い。駅舎も最近になって新しく改修され、今ま た駅前広場の整備工事が進みつつあり、北の大住宅地の表玄関として相応しい 姿を見せている。

 新琴似地区は、明治20年、新川の北に新琴似屯田兵村として、内地より2 20戸が応募し入植したことに始まる。兵村の中心は第一大隊第三中隊の本部 が置かれた四番通りであり、ここに新琴似小学校、新琴似神社も設置された。 明治36年に屯田兵制度が廃止された以後は大根と牧場の近郊農村に変貌し、 特に「新琴似大根」はここの名産として札幌都心部に大量に売り出された。当 時大根畑は200町歩の広さがあったと云う。戦後の昭和30年には札幌市と 合併、以後屯田兵の切り開いた開拓地のほぼ全域を細分し、札幌近郊のベッド タウンとして急速に住宅化が進んだ。

 まずは寄道して駅のすぐ近くにある新琴似神社に立ち寄ってみる。神社の広 い境内には屯田兵時代の中隊本部の建物が復元され、市の有形文化財として保 存されている。明治の早い時代に、このような洋式のスマートな建築物と屯田 兵屋の素朴な小住宅群が原始林の中の開拓拠点となっていたことは、当時の写 真でも覗われる。神社の境内には、はるにれややちだもの大樹が、原始のまま ではないにしてもまだ多く敷地の周囲を取り囲んでおり、当時を偲ぶよすがに なる。

 道を戻って駅前の道から「琴似栄町通(道道277号琴似停車場新琴似線)」 を北へ進む。すぐ右手奥には「麻生球場」と「創成川下水処理場」の大きな建 築物が並んで見える。やがて創成川に架かる中島橋の手前から北西に全長3キ ロに及び延々と伸びる「屯田防風林(ポプラ通中央緑地)」の東端の天を突く ようなポプラの樹林が目の前に現れる。

 屯田防風林の入口には、コース表示板を兼ねたユニークな造形のモニュメン トや休憩ベンチ、パーゴラとテーブルなどがそこかしこに置かれているが、防 風林だけあって材料の木材にはこと欠かない。防風林の幅は100m未満で樹 木の隙間から両側の住宅地が透けて見えるものの、これから進む長手方向の様 相はどうしてなかなか昼なお暗い立派な森林コースである。足元も自然の土の 上にウッドチップが撒かれていて、近在の歩行愛好者の姿は多い。

 屯田防風林は大正時代に植林されたようで、樹種はポプラ、ヤチダモ、はる にれ、ナナカマド、白樺、エゾイタヤ、エゾマツなどの混交林になっている。 このグリーンベルトは、当然、風避けが目的であるが、新琴似地区と屯田地区 との境界に位置しており、冬季の北風を避ける効果は新琴似地区にしか恩恵を 与えないと思われる。現在行政区分上は屯田地区に入っているので「屯田」の 名前が付いているようだ。もっとも屯田地区のための防風としては、さらに北 へ2キロのところに、また別の防風林が配置されている。

 「屯田」は新琴似のさらに北の三角形の地域で、明治22年、篠路兵村(第 一大隊第四中隊)として220戸が応募・入植したことに始まる。兵村の中心 は中隊本部の置かれた三番通りの辺りで、札幌市内のかっての4兵村のうち正 式な町名として「屯田」を称するのはここだけである。この地は石狩川の流路 切り替え工事が完成する以前はしばしば洪水に見舞われたところで、農作物も 潰滅的被害を受け当時の戸数も70戸に減ったそうだ。その後、残った人々は、 創成川と新川から灌漑用水路を切り開き、やがて水田面積680町歩に及ぶ安 定した農村を築き上げている。近く昭和41年には北海道住宅供給公社の屯田 団地の造成により、こちらも大住宅地として変貌した。

 心地よい日陰の樹林の下、すぐに「おおうばゆり」の群落に出会う。日射が 少ないためか、やや小振りで色付きも淡いようだが、樹林の下生えからすらり と真っ直ぐに立つ姿は気品さえ漂う。ポプラの古木の節くれだった樹幹に風雪 の年期を思い眺め、白樺並木の清楚な回廊を楽しみながら歩いていくと、コー スの中ほどに親水ゾーンが現れる。この水源は先の創成川下水処理場からの高 度処理水を地下誘導したもので、防風林内に設けられたかっての用水路跡を利 用して流し、この先の「屯田西公園」の東縁から北に向きを変えて発寒川に注 ぐ「屯田川」の水源にもなっている人工河川である。

 屯田防風林は、入口から3キロほどで屯田西公園で終わるのだが、林内に遊 歩道のない防風林帯は屯田地区の西と北にもあって、屯田地区の三方を囲うよ うに配置されており、創成川沿いのポプラ並木も含めるとまるで広大な坪庭で ある。屯田兵村以後の農業を風から守り育てた入植者達の苦労が偲ばれる。

 屯田西公園は、運動施設を備えたいまどきの典型的な公園であるが、防風林 が隣接しているためか、小鳥のさえずりも多く聞く。このときも公園の芝生で あかげらのつがいのダンスを見ることが出来た。公園の西縁は「安春川」で区 切られるが、たまたま川面で数羽のかもが強い日射のなかでも水面に涼しげに 浮かんでいた。

 帰りは元来た防風林の中を戻って、札沼線のガード下脇に設けられた遊歩道 に沿う植生を眺めながら南へ700mでJR新琴似駅まで辿って行った。



(2005.07.25. 屯田防風林入口の案内板モニュメント)

(2005.07.25. 樹林の中のおおうばゆりの群落)

(2005.07.25. 防風林コース中ほどにある親水ゾーン)
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