HOBIA(北海道バイオ産業振興協会)



HOBIA例会・セミナーの記録
これまでのHOBIAの例会やセミナーの記録です。HOBIAの活動状況が見えてきます。


HOBIA第88回例会、2000年新年交礼会開催報告

 平成12年1月25日(火) フジヤサンタスホテル
 第88回例会ならびに新年交礼会が、90名の方々の参加者のもと盛会に開催されました。

1.第88回例会開催報告

T.高尾会長挨拶
 記念すべき2000年のHOBIA例会に、道内各地から多数のご出席をいただきありがとうございます。バイオは21世紀の基幹産業の一つとして期待されており、この新年開催されましたバイオ団体交流会議でも、日本各地の団体が活発に活動しております。
 一方、本道の経済環境は厳しいなかにありますが、本道の豊かな資源を日本の再生、復活に役立てるために、我々の総意と努力を結集して、この一年を希望のある一年としたいと考えております。
 本日は、北海道への積極的な御提言を拝聴しようと、バイオについてもご造詣の深い北海道経済連合会 戸田会長をお招きしております。また日本をリードするようなベンチャー企業の創出について通産省の新規産業課長 石黒氏に講演をお願いしております。


高尾HOBIA会長

U.「産業クラスターとバイオインダストリー」
北海道経済連合会会長 戸田 一夫 氏
1.はじめに
 北海道は130年間官主導の開発が行われましたが、当初は日本の近代化の精神的な地域として役立てたいと考えられていました。その高尚な思想の元に札幌農学校が設置され、ケプロン氏をアメリカから招聘しました。
 黒田清隆長官の胸には高度な教育をして日本の理想の土地にしたいという思いがありました。しかし、ケプロン報告にもあるように、薩摩などから来た官の人々にとって利権のいい餌になったのです。
2.北海道拓殖銀行
 拓銀倒産は、その命運を市場にゆだねたことに重要な意味があります。政府をとがめることはできません。莫大なお金をこれまで北海道に投資しています。拓銀を中心として北海道の開拓をしてきた経過の中で、北海道の甘えの構造が育ってきたことも事実です。北海道の金融があまりひどい状態にならないように、今も政府は非常に努力していることを忘れてはなりません。
 海外からの視察団が北海道の悲惨な金融状況を視察によく訪れますが、北海道経済のあまりに平穏な様子に驚きの色を隠せません。
3.北海道の役割と現状認識
 北海道は資源開発がメインのテーマで資源供給基地として位置づけられてきました。また、戦後は人口を定着させることがテーマでした。
 石炭の相場と、円ドル推移を見ますと、まことに相関しています。現在、北海道電力では火力発電用燃料の石炭を、輸入物で6,000円/トン、国内産は18,000円/トンで購入しています。ですから、円レート360円のときには国内炭も輸入炭と競合状態にあったわけです。森林資源についても同じ傾向で、伐採量も円ドル推移と同じようになっています。
 資源供給型地域において資源が国際競争力を失い、さらに今、農水産業も全く同じ状況にあります。その使命の終わったところをいつ普通に戻すか、いつまでも甘えてもらっていては困るというのが中央の本音です。
 北海道開発庁も、12月にその使命を終えます。専任の大臣を持たないことは政治的に無力であることを肝に銘じるべきです。北海道の経済的、政治的、金融の特別扱いは終わったと国は考えています。そういう状況の中で、北海道の産業構造がどうなったかを見ると、製造業が全国の平均比率と比較すると半分以下です、それでも食っていかなければならない。
 北海道は、これまで公共事業および補助金で成り立っていたのはご承知の通りです。その見返りでこれまで人材、原材料、ノウハウが本州に流出してきました。中央では、情報、ノウハウ、技術、知識を持っています。北海道の中で何が残るか?道路、港は残るが技術や人は東京に流れていく。できれば北海道で就職したいと思っても就職するところがない。自分で自分たちの子供の就職を作ることができなかったのです。
 一国にも値する人間を抱えていて北海道に、知識情報、ノウハウ、技術を蓄積することができなかった。ゼロではないが、おおざっぱに言うとこういう流れになっています。
4.フィンランドを見て
 私がフィンランドに行ったときにはソ連との貿易が20%で、産業戦略をしっかり決めて産業クラスターを中心に構造改革を進めていたときでした。特に、独立後、産業機械を一生懸命作るということを行い、7年間でソ連に賠償金を完済したのは大きな自信になっているようです。
 このようなフィンランドの独立から戦後にかけて、自国の産業をどう育てたかについて調べてきました。
 彼らの言う産業クラスターとは、基幹産業に自分たちのノウハウを結集していけば国際的に競争力を持つと判断しています。森林の国として林業を中核として、いろんな産業を構築する手段を取っていました。自分たちの持っている技術をしゃぶり尽くすことによって必ず次の種がでてくる信念があったのです。これからのフィンランドは基幹産業を世界のトップレベルに持っていくために、産業政策として研究費をGDP1.7%から3%に引き上げ、技術者教育と生涯教育を組み合わせています。
5.北海道への提言
 北海道の基幹産業を何にするのか?をもう一度考えてみましょう。国際競争力のある北海道の資源はないという結論になった。しかし、それでは困るので、キーワードを食、住、遊を柱にクラスターを組み立てましょう。
 北海道は農林漁業の中に北海道の将来があると考えるべきです。たとえば、山の中にどういう木が生えてきて、そればどういう風に使えるのかを真剣に考えることが重要です。海の海草類も昆布と海苔くらいは採るけど、資源化についてどのように考えているかをもう一度整理すべきでしょう。これまで、農林水産業ですぐに食べられるものばかり手を着けていたけれど、北海道すべてを資源として考えたときになにするかを考えてください。よいものであれば、本州の企業がすぐに持っていってしまうので特許化が必要です。それには、大学、試験研究機関の助言が必要です。それには、我々がどういう意志を持つかが大切です。
 今道内の大学も学の知識を北海道の産業に役立てようと変化しつつあります。デンマークの農業者が常にトップであり続けられるのは、よく学び皆が力を合わせ、常にデンマークのことを考えているからだと言います。
 その言葉を北海道呼びかけたいと思います。よく学び、力を合わせ、常に北海道のことを考えましょう!
 世界に対して情報発信できない地域はいずれ滅びます。570万北海道民の考える総力が都会に対して付加価値をもてるか?もてなければ北海道が滅びるのです。


北海道経済連合会 戸田会長

V.「株式公開型ベンチャー企業の育成について」
 通商産業省 産業政策局  新規産業課長 石黒 憲彦 氏
1.個人的な見解としてのアメリカ経済
 アメリカ経済は依然バブルといわれながらも引き続き好調です。私は85年から86年にかけてスタンフォード大学に留学していましたが、当時、日本型企業は賛美され、創造性はないけれど非常に優れたシステムであると言われていました。
 当時、アメリカの労働者の質が悪く、労働者のモラルを高めるのが重要課題でした。今はどうでしょう?現場に行くと非常に優れた指導者がいる。パソコンなどは発注を受けてから5日でできあがる。コンパックはシリアル番号で組立者が分かるようになっています。
 一方、日本のマネージメントは労働者の代表であって責任感にかけ、しかもドラスティックな改革ができないと言う状況にあります。この点アメリカのマネージャーはカリスマ性があります。
 ダウンサイジングとリストラを完全にやると、確実に体力が落ちます。この80年代から90年代にかけて、アメリカはコンピューター(情報化)投資を行いました。人を切りながらコンピューターに投資したのです。そしてコアビジネスに集中して、ノンコアな部分(ほかの企業がやっていること)は他に任せるというやり方をしました。
 アメリカは元々情報の共有化は不得意でした。ちょっと偉くなると個室に入ったからです。アメリカはその苦手な情報の共有化をe-mailで克服しました。
2.アメリカ経済は何故好調か
 第1に、今アメリカの成長は個人消費に支えられています。製造業は輸入品が安い値段で入ってくるので、タイやインドネシアの労働者と競争せざるを得ず、実は労働者は今大変なのです。
 しかし、賃金が下がり雇用が増えないが全体としては成長しています。これはいわゆるベビーブーマーがアメリカの牽引車となっているからです。今、彼らは金融資産を上げるために、お金を貯め込んでいます。そのお金が、株に投資されるため株式市場の好調になっているのです。また、住宅投資が好調なのは彼らがリタイアにそなえて住宅を買っているからです。
 第2として80年代からの構造改革が今生きているともいえます。規制緩和により、価格を上げるわけには行かない(生産性を上げる)ので企業にとって非常に厳しい環境であるが、インフレが起こらない環境にあります。アメリカでは、インターネットのつなぎっぱなしの環境で30ドルしかしません。流通、情報の規制緩和によりどんどん値段が下がってきています。レーガノミックスは一時70%という最高税率を出したが、その後86年に30%まで下がってきました。また、ファックスシェルター(税金のがれのために牧場経営などをする事をなくす)をなくすことにより、投資効果が上がってきています。
3.ベンチャー企業
 今アメリカではベンチャー企業が多数ありますが、ベンチャービジネスが増えてくるのは80年代からです。アメリカでの、大企業神話が崩れてきたときからベンチャー企業が増えてました。ある意味で、今日本も同じステージに入っていると思います。しかし、まだまだ70年代のベンチャーのレベルに追いつかない。しかも、大企業の雇用人数も落ちてきています。
4.どうして日本ではベンチャー企業ができないのか?
 アメリカンドリームと比較してみるとよく分かるのですが、日本では一流大学に入って大企業にはいるのがサクセスストーリーで、いわゆるローリスクな選択です。
 ベンチャーはハイリスクであるというハイリスク神話が崩れないために皆さん手を出したがらないのです。やはり、イメージとしてもミドルリスク、ローリスクにならないとベンチャーは始められない。また、ベンチャー企業に対する投資を見てみますと、普通の人たちのお金がベンチャーキャピタルに投資されているのがアメリカです。知り合いが100万円単位で投資する文化がありますが日本には残念ながらありません。
 アメリカの開業時の資金調達は、個人投資家から40%を得ていますが、日本では個人が借金を背負って企業を興すという図式になっています。また、今まで株式を公開するまで25年もかかっていましたが、現在これが変わりつつあります。さらに、証券業界の垣根も取り払われてどんどん競争が激しくなってきています。法律が変わって、倒産するリスクも少なくなってきているのも事実です。日本ではサービス業がベンチャーの主体であるが、アメリカでは技術がその主体であります。また、アメリカの大学ではビジネスセンスや経営を教えるシステムがあるが日本にはありません。これらが日本においてベンチャー企業が育たない原因であると考えています。
5.新事業分野拡充事業
 国がベンチャー育成する意味は何か?商法の特例を設けて、税金の縛りを緩くするなどの措置が考えられます。ベンチャーキャピタルを支援し資金の流用性をはかるなども考えられています。その際、企業側の用件としては成長性と新規性です。エンジェル税制というのがあります。これは、損をしたときに3年間税金をとらないということですが、得をしたときにもその利益によっては使えるようにしました。非常に使いやすくなっているのと思うのですが、残念ながら6社69人しか利用されていません。
 北海道でもこれらの優遇税制を利用してベンチャー企業がでてくることを期待しています。


通商産業省 産業政策局 新規産業課 石黒課長

2.新年交礼会
 盛会な例会に引き続き、60名の方々の参加によって新年交礼会が開催されました。交礼会の開催に当たり高尾 会長からバイオ産業の今後の展開とHOBIAの今年の抱負を述べられました。引き続き、北海道経済連合会会長の戸田 一夫氏の乾杯の御発声により参加者の懇親、交流が和気藹々と行われました。会の半ばには北海道通産局 産業部長 井津端 様からHOBIAへの支援と、力強い励ましの言葉をいただき、最後にHOBIA 冨田 副会長がますますのHOBIAへのご支援をお願いして会を閉じました。 


和やかに行われた新年交礼会

 シンポジウム「食と健康を考える’99」
−健康維持に必要な食品についてどこまでわかったのか− 開催報告
 平成11年12月14日(火)えぽあホール

 講演会開催に先立ち、北海道立食品加工研究センター 所長 中井 和夫氏より「市民参加型の講演会として今年で2年目に当たり、多様な方々の参加を得ることができて大変うれしいことだと思っています。今年も、みなさまと一緒に食と健康について考えていきたいと思います。」と挨拶がありました。その後、東京都老人総合研究所 副所長の柴田先生と名古屋市立大学の奥山先生から健康維持に必要な栄養素として、タンパク質と油について最新のデーターを示した講演がありました。いずれも、今までの肉は体に悪い、動物性の油は体に悪くリノール酸は体に良いというこれまでの説を覆し、健康のために肉を食べよう、リノール酸のとりすぎは体に悪いというデーターを示しながらの講演会は非常にインパクトがあるものでした。
以下、両先生の講演の要旨を掲載いたします。

「より元気な生活を送るための中高年の食事のあり方」
 東京都老人総合研究所 副所長 柴田 博氏

1.はじめに
 日頃の研究から、元気で長生きするにはどうしたらいいのかというところに視点を当ててお話しします。日本人も私もお魚になじみがあり、魚に対する知識、愛着は持っている。しかし、長生きするには魚だけでもどうもだめなようで、肉が歴史的に不足しています。こういう国は非常に少なく、世界的に見ると韓国、ノルウェーがバランス的に日本に似ている。一日の肉の摂取量は、日本人80g/日、アメリカ人280g/日です。

2.老化とは
 現在は、SUCCESSFUL AGINGと言う考え方が主流です。それは、@生命の量を多くする−寿命を伸ばす−、A生活の質(QOL)を上げる、BProductivityを向上させるという3つを成し遂げるところにあります。日本における戦後十数年は@のみでしたが、現在はA、Bのレベルに達してきています。 老年期の健康指標としては、@死亡率(mortality)、A羅患率(morbidity)、B生活機能(functional capacity)の三つですが、最近では病気があっても自立していればいいという物差しに変化しつつある。これから障害老人が多くなるのか?という疑問があります。今確かに高齢人口が増えてはいるが、昔の人間に比べて弱くなっているわけではなく、寝たきり老人の人数を比較すると、80年の半分近くなってきています(年齢調整したレベルで)。ここ何年かの間に高齢者の自立度が上がってきています。

3.長生きするための生活改善
 長生きするためには、食事、運動、知的活動、物的環境の四つが大切です。日本の30年前では百歳の人が
405人しかいなかったが、今年の九月には11,500人に増えている。最高何歳まで生きたかを見ると、116歳が今までの最高だと思う。平均寿命は延びましたが人間の限界寿命は変わらないのです。性格的には外向的で、勝ち気でくよくよしない性格の人が長生きするようです。
 食事についてみると、当時の平均よりも低カロリー高蛋白食を食べている。タンパク質の中でも、動物性タンパク質の割合(動物性タンパク質・総タンパク質)が日本平均(48.7%)よりも高い(男:59.6%、女 57.6%)のが特徴でした。すなわち、これまで信じられてきたように長寿者=菜食主義者ではない。この長生きしている人たちも、昔は当時の日本人特有の食品を食べていました。すなわち、一日に米5合、みそ汁6杯、塩鮭20g、漬け物20gという平均的な日本人の食事でした。このときの平均寿命は世界で60番台と低くかった。実は平均寿命が50歳代になったのは戦後のことです。タンパク質の摂取比率は1980年くらいに、動物性と植物性タンパク質が半分半分になりました。

4.戦後の大きな日本の食事の変化
 昭和30年台はお米が増えて、芋類が減ってきているが、肉、乳製品はほとんど増えていない。40年代に入るとお米が減って、お肉と乳製品が増えてくる。昭和50年の前半でその増加も止まり、日本型と言われる食事体系になってきた。結果的として長寿になったのであって、医学者の知識によって伸びたのではない。1930年台に欧米では心臓病が増えてきたが、戦後日本では心臓病が増えなかったので寿命が伸びた。

5.70歳の人を追跡調査
 長生きの条件を15年間探ったところ長寿の秘訣が見えてきた。肥満度を身長の2乗で体重を割った値で算出しているが、ちょうど太り具合の真ん中の人が長生きすることがわかった。やせることが長生きの秘訣だと言われていたときのことです。肥満度が23−25の値の人、たとえば170cm、73kgがもっとも長生きです。中国の仙人の絵を見てもやせている絵は無い。統計では牛乳を飲む女性が最も長生きし、飲まない男性が最も短命であることもわかっています。残念ながら北海道は、あまり牛乳を飲まない。また、日本人の油の取り方が少ないので、毎日油料理を食べる方が長生きする。お酒は、やめた人の方が短命である。お酒を飲む人は、運動したりする人が多いので、お酒をやめるということはその生活スタイルが変わっていると考えられる。適量のお酒を飲む人が長生きするというのは世界的なコンセンサスである。

6.コレステロールについての誤解
 コレステロールと死亡率の関係を見るとコレステロール値の低い人が一番短命である。女の人はコレステロール値が220から240の人がもっとも長生き。男性は190から219である。何歳になってからでも食生活を改善する意義がある。日本の長寿要因をまとめてみると、@総熱量2000キロカロリーは明治以来不変、Aタンパク質、脂肪の動物性と植物性の比が1:1である、B根菜、キノコ類、海草類を常食が揚げられる。64歳の追跡調査ではコレステロールの低い人が自立できなくなり、ボケが始まる比率が高い。体の中のコレステロールの4分の1が脳に入っていて重要な役割を担っている。また、最近ではコレステロールの善悪はないというのが定説になりつつある。すなわち、いわゆる悪玉コレステロールがすくない人の方が、自立できなくなる比率が高いという結果になっている。 また、コレステロール値は精神的な部分にも影響を与えることが知られている。日本における女性の自殺はハンガリーと並んで世界で1位で、年間3万人死んでいます。男性の方も世界8位である。コレステロール値の低い方が、心臓病は確かに少なくなるが、ガン、脳卒中、自殺の率が上がります。コレステロール値を下げると、全体の死亡率が7%上がったのです。心臓病は15%減ったのですがガンは43%増えた。自殺、他殺、事故死を示すMortality not related to illnessが75%も増えた。コレステロールやビタミンEの血中濃度が少ない方が鬱を起こしやすい。おいしさを味わうことが、人間の意欲や能力にも響いてくる。

7.現状の問題点
 二十代の女性の49%がやせ過ぎで、栄養失調となっているのが問題でまさに発展途上国並である。骨の量というのは一番骨が大きくなったときがMaxとなるので、これらの女性が老年期に達した時には、骨折が非常に多くなると考えられている。70歳になっても肉は50g、魚は80g摂りましょうと提唱している。また、子供たちに甘いものを摂らないようにする風潮があるが、甘みとうま味以外の味は学習のみです。甘いものをとらないことによってストレスがかかっており、食べるときの雰囲気も重要です。

「健康に良い油と悪い油の区別があるのか?」
名古屋市立大学 教授 奥山 治美 氏

1.はじめに
 一時、動物性脂肪はコレステロールを増やすから身体に良くないが、リノール酸は良い、魚の脂は良いと言われていました。リノール酸は本当に身体に良いのでしょうか?これらの脂肪で何が違うかというと、実は脂肪酸の組成が違うのです。飽和脂肪酸は、我々の身体で作られますが、一価不飽和脂肪酸のリノール酸(ω−6、N−6)やαーリノレン酸(ω−3、N−3)は作ることができないので必須脂肪酸として知られています。このリノール酸とα−リノレン酸は我々の体内で違う脂肪酸に変化します。オリーブ油、菜種油は飽和脂肪酸であるオレイン酸が多くリノール酸が少ない。大豆、コーン、ひまわり、紅花油はリノール酸が多い。また、シソ油はα−リノレン酸が多く、リノール酸が少ないことが知られています。

2.成人病コレステロール説の真偽
 脂肪酸の動物体内での変化を見ると、リノール酸はγ−リノレン酸を経てアラキドン酸になりホルモン様物質に変化します。一方、α−リノレン酸はエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸になる。リノール酸とα−リノレン酸は体内で相互変換することはありません。リノール酸の系列とα−リノレン酸のバランスは実に多くの疾患と結びついています。動物性脂肪と植物性脂肪の摂取について長い期間見ると、コレステロールの血中濃度には違いがなかった。これまで、動物性脂肪がコレステロールを上げると言われていたのは短期間の研究結果が元になっており、動物性脂肪が体に悪いという説は否定されている。動脈硬化には脂肪酸のバランスが大きく関与しており、アラキドン酸は血栓性を促進させ、α−リノレン酸は抑制するか又は関係ありません。死亡率と血中コレステロール心筋梗塞との関係は、欧米では相関があるが、日本や南欧では相関はない。日本と南欧では魚をとっているということが大きいのではないかと思っている。それでも、アメリカやオランダでも血漿コレステロール値が高い方が長生きです。古い脂質栄養指針の精算をしなければなりません。コレステロール摂取を押さえ、コレステロール値を下げる成人病医療は根拠がなかったのですから。

3.リノール酸神話はうそ
 日本人のリノール酸摂取量はここ20年で2.6%から6%と急増しています。厚生省は、日本人は現在最長寿であって特に変える必要はないという考え方ですが、学会ではリノール酸は今の半分まで減らした方が良いという考え方です。最近のガン研究は、アラキドン酸代謝経路にも注目しています。欧米で発症率の高い肺線ガン、大腸線ガン、乳腺ガンなどは、リノール酸で促進され、α−リノレン酸で抑制されることがわかっている。また、アレルギー反応のメディエーターはアラキドン酸から作られるものが強いことからアレルギー反応を亢進すると考えられるようになってきた。アトピーの患者にステロイド剤を与えると怖いので(リン脂質からアラキドン酸に行くことを止めるから)抗アレルギー剤を使うときには、リノール酸を減らさなくてはならないのですが、現在は食事指導はしていないようです。

4.油のもう一つの問題点
 キャノーラ油、オリーブ油、高オレイン酸紅花油、高オレイン酸ひまわり油、月見草油、高架大豆油、硬化菜種油などに、脳卒中ラットの寿命を短縮する効果がある。リパーゼ処理により得られる遊離脂肪酸分画には活性がないので、脂肪酸以外の微量成分の作用であると考えられる。植物ステロールが有害作用の本体ではないかと指摘もあるが、植物ステロールの作用ではありません。キャノーラ油などは、血小板数の減少、腎血管、糸球体損傷などが脳卒中ラットやブタなどで認められており、ヒトでも大豆に比べて肺ガン、肝臓ガンを促進する効果が指摘されている。この問題を解決しないと、これらの油脂を安心して人に勧めることができない。

5.まとめ
 動脈硬化、心疾患、脳卒中、欧米型ガン、アレルギー過敏症、そのほか難病指定の多くの疾患に関して、リノール酸摂り過ぎが高い危険因子となっている。これらの疾病を予防する上で、飽和・一価不飽和脂肪酸は肥満にならない範囲で安全ではあるが、リノール酸の摂取量を半減し、α−リノレン酸群の摂取を増やすことがよいと考えられる。油脂は食品のうまさを引き出す上で書かせないものだが、良い油、悪い油を見分けて食卓に取り込む知識が必要になってきている。