環境サロン
1月26日(火)14時〜16時、北海道通産局会議室
1.テーマ
「鉄錯体による有機性廃棄物の土壌改良材化」
北大先端科学技術共同研究センター 助教授 荒磯 恒久氏
鉄錯体(例えば鉄、ポルフイリン錯体など)は酸素分子から活性酸素を生成し、この活性酸素は反応性が高く有機物をラジカル化し分解を進行させる。
(1) 鉄錯体単体の利用
土壌に鉄錯体単体を極微量加え、作物の収量アップ、品質改善(ビタミン、糖度)等をはかる。大根、南瓜、人参、チコリー、ヤーコン、キャベツ、ピーマンなどで確認。
(2) 鉄錯体を利用した有機性廃棄物の土壌改良材化
生ゴミに同量の粘土を配合し、水と微量の鉄錯体を加え、80℃で8時間攪拌すると土壌改良材(ニュートリ・ソイル)が得られる。
コンビニ店の生ゴミから作ったニュートリ・ソイルの試験で、ほうれん草の収量が増加した。
鉄錯体による有機性廃棄物の堆肥化反応は微生物による堆肥化反応と異なり、炭水化物の多くを不定形炭素として土壌に戻すことになり、CO2抑制の効果が期待される。悪臭成分(N系,S系)の分解においても有利である。
シンポジウム「食と健康を考える'98」
12月22日江別市えぽあホール
講演は「体力・健康の向上と食べ方」と「疫学的視点からの日本人の健康」の二題です。
1.「体力・健康の向上と食べ方」
札幌医科大学医学部運動化学 助教授 岡野 五郎氏
(1) 運動する人の体力の向上と食べ方
体力(行動体力)は、筋力・パワーと持久性に分けられます。筋力・パワーは、筋肉の機能が重要ですので、筋肉の作り方が鍵となります。運動選手の蛋白所要量は、筋肉作りのためには、一般の運動しない人の1.5〜2倍の摂取が必要となります。それ以上過剰に摂取しても、筋肉量は増加しないことが最近わかってきました。蛋白質摂取量とともに重要なのが、摂取するタイミングです。これは近年注目を集めている研究で、筋肉作りのためには運動後なるべく速く蛋白質を摂取することが効果的であり、そうすることで筋肉量が増加し、体脂肪形成が抑制され、さらには骨形成も促進されることがわかってきました。筋力向上のためのもう一つの方法として、最近クレアチン投与効果の是非が注目されています。筋肉中には、短時間に強い力を発揮する際のエネルギー源として、クレアチンリン酸が含まれていますが、これはわずか数十秒足らずで枯渇してしまいます。筋肉中のクレアチンリン酸量を高める方法として、クレアチンを経口摂取することで、筋肥大が起こることがわかりました。しかしながら、このようなクレアチンの筋力向上効果は、まだ統一した結果を得てはおらず、今後さらに研究を重ねる必要があります。
(2) 持久力すなわちスタミナの向上について
スタミナ向上の食べ方として、筋肉中のグリコーゲン量を増やすことは重要です。
グリコーゲン負荷法という方法がこのために開発され、改良を加えられた後確立されていますが、この方法によって、日本人では、筋肉中のグリコーゲン量が約1.4倍増加しています。
スタミナ向上の方法としては運動後素早く糖分を摂取する方法もあります。運動によって低下したグリコーゲンを急いで回復させるのに効果のある方法で、さらに、糖分と一緒にクエン酸も摂取することで効果が上がることが私どもの研究でわかりました。
クエン酸は、解糖系内で糖の分解を抑えるため、摂取された糖はインスリン応答によって、グリコーゲンを合成するというしくみです。スタミナ向上の食べ方の3つめとしては、運動のために補給する糖分を考えることです。運動直前に糖分補給する場合は、グルコースよりもフルクトースの方が適しています。これはフルクトースの方がインスリン分泌に刺激を与えないため、脂肪酸化が抑制されず、エネルギー源として、筋グリコーゲンと脂肪が使えるからです。運動中になりますと若干様子が異なりまして、運動強度によって、効果の高い糖分が変わってきます。スタミナ向上の食べ方の4つめは、運動によって起こる筋肉疲労だけでなく、脳の疲労も改善する方法です。
持久性の運動によって、血中の遊離トリプトファンと分岐鎖アミノ酸の比が高くなり、脳内のセロトニン濃度が上昇します。セロトニンはやる気を無くさせる物質ですので、中枢の部分が疲労してしまうということが最近わかってきました。これを緩和するためには、運動中に分岐鎖アミノ酸を投与すればいいということになります。実際に、分岐鎖アミノ酸の投与によって、持久性が上がるという結果も出ました。
(3) 肥満を予防する食べ方
これはまず、高脂肪食をさけるということが非常に重要です。脂肪はエネルギー源として、体に最も蓄積されやすく、熱として逃げづらい栄養素です。また、高脂肪食の摂取を続けますと、交感神経系の活性が落ちてくることも肥満の要因として考えられます。その他、肥満防止の食べ方として、まとめ食いをさける、夜に多食しないことが重要です。
肥満予防のためには、食餌療法に加えて、運動も効果的です。肥満の改善は、運動プラス軽い減食で行います。減食だけで痩せますと、筋肉や骨などの除脂肪体重の低下が非常に大きくなりますが、運動することによって、除脂肪体重は減らずに、体脂肪だけが減少するという健康的な痩せ方ができます。
運動する場合は、有酸素的な運動で脂肪を燃やすことが大切ですが、軽・中強度の運動をやや長めに行うのが薦められます。最大酸素摂取量の半分位の運動を小一時間程度行うのが良いでしょう。最大酸素摂取量の半分位の運動とは、きついと感じるような運動ではなく、にこにこペースで、おしゃべりができる位の運動です。運動を行うタイミングも重要でして、大きな食事の前後に軽く運動することは、体重を増やさないということで効果があると思います。食事前の運動は、食事後の発生熱量を増やし、脂肪の酸化能が高くなります。また、食事後の運動は、インスリン分泌の抑制によって、脂肪の蓄積の抑制につながります。さらに、有酸素運動とは別に、ウェイトトレーニングをすることも筋肉量の維持・増加をすることも太りにくい体を作るという点で効果があります。
2.疫学的視点から見た日本人の健康
東京都老人総合研究所副所長 柴田 博氏
(1) はじめに
私どもの研究所は昭和47年に設立され、現在170名ほどの研究者が働いております。昭和47年というのは日本の高齢者の割合が7%を越えたときで、国連の定義で言いますと65歳以上の人口が7%を越えますといわゆる高齢社会と言うことになります。昨今の17%を越えた社会はいわば超高齢者社会でありまして、これに対する対応もいろんなところから急を迫られています。その問題の一つは健康問題であります。健康というのは1984年のWHO憲章で、高齢者の健康というのは生活における自立と定義され、生活機能というものが新しい健康の概念として導入されました。これは、従来どのくらい健康でないかということを見てきたのに対し、日常生活や社会生活をどの程度できるのかを見るようになりました。
(2) 生活機能
皆さんが常日頃強く生活機能として意識されているのは簡単な歩行とか食事、持ってきたら食べれらるという食事、それから排泄、入浴、脱衣などの自立です。これで、人のお世話になっている人を要介護老人とか、程度が悪ければ寝たきり老人と言います。
65歳以上の方を調べましたところ、95%が自立しており、逆に言うと5%の人が障害を持っていました。もう少しレベルを上げてみて、たとえば公的な輸送機関を使えるかとかショッピングができるかとか金銭管理が完璧かどうかというのを見ますと、80%もしくは70%台になってしまいますし、当然性差も出てきます。一番基本的なことでは自立しているけれども、この辺のところでは自立していない人を、要介護老人に対して要援護老人、障害老人ではないけど虚弱老人という行政用語が使われるようになりました。こういう方々というのは寝たきりに移行する可能性がありますし、生活機能アップに成功すれば自立することが可能になります。
(3) 食の伝説
私も、昔は長生きの人は菜食主義者の人が多くて肉よりも魚を多く食べるんだろうなということを思ってました。ところが、昭和47年に研究所ができた記念に、全国の100歳の方を100人調査したところ、摂取量は1000キロカロリーくらいで一般の人の半分くらいでしたが、蛋白質摂取量の割合は日本の平均よりも高いということが分かり、低エネルギー高蛋白質しかも高動物性タンパク質食をとっていることがわかりました。もちろん野菜などもまんべんなく食べており、結局少ないのはご飯類だけでした。
このように、戦後の食生活の変化を先取りしていたような形で動物性タンパク質を全員がとっており、私が当初予測した菜食主義者というのは一人もいませんでした。
(4) 日本食は理想食
100歳の方々の食生活が大きな変化をはじめたのが昭和40年で魚や肉の供給が増えて参りました。これを境にして国民病であります脳卒中の数が急激に減って寿命が延びてまいります。昭和40年の中頃にスウェーデンを抜き去り50年代には1位のアイスランドを抜き去りましてそれから日本は長寿世界一なのです。日本は、総エネルギー数が今日本では2000キロカロリー位なのですが、ここ100年間も変わっていません。アメリカではカロリー摂取量を1/3くらいカットすると理想的になると言われておりますが、それがまさに今の日本食なのです。
日本食のもう一つの特徴は、タンパク質と脂肪におけます動物性と植物性の比率がだいたい50%くらいになっていると言うことです。そのほかに、野菜類の取り方も優れております。また、脂肪酸の比率も、飽和脂肪酸、一価の不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の比率が1:1:1と理想的です。もちろん人によって摂取量は違うのですが、国民の平均が理想に近いということは非常にすばらしいことです。
(5) コレステロールバイキン説
ハワイの日系人を対象とした研究で成人病での死亡率を見てみますと、虚血性心疾患は予想通りコレステロールの低いところは低くて高いところは高いという結果になりました。ところが、ガンと脳卒中はコレステロール値の低い方に多くて高い方に低いという結果になりました。死亡率を見てみますとコレステロール値は180から240の間が一番低くなります。コレステロールが低い方に、肺炎や結核などのばい菌に係わる病気が多いのは予想されるのですが、どういうわけか自殺が多いというデーターが出て参ります。自殺だけではなくて、人に殺されたり事故死に会うというのもコレステロール値が低い人に見られます。それがどういうことを意味するかというのが最近の研究のホットな話題の一つです。コレステロールが高い、あるいはビタミンEが高いと鬱状態を抑制することがわかってきております。
(6) ライフスタイル
個人的には私はどの病気で死にたいという好みがございますから、好みに合わせてライフスタイルを作れば良いのかと思います。分析科学的にはこの食品が良いとか悪いとか言うのは、全部正しいのですが、単品で全てまかなえる食品はないのですから、やはり食品の組み合わせ、全体の量と構造をどうやって確保するかが必要です。個々の食品の分析とともに、私たちのような実際にどういう食生活をしている人がどういうアウトカムをしているかという研究が一緒になったときに初めて大きな成果をもたらすと思っています。
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