HOBIA(北海道バイオ産業振興協会)



HOBIA例会・セミナーの記録
これまでのHOBIAの例会やセミナーの記録です。HOBIAの活動状況が見えてきます。
 H14年度幹事会・総会・記念講演

 平成14年度通常総会および特定非営利活動法人北海道バイオ産業振興協会設立総会・記念講演・懇親会を4月25日(木)、ホテル札幌ガーデンパレスを会場に開会しました。特定非営利活動法人北海道バイオ産業振興協会設立総会においては、NPO法人設立申請に向けた議案が全て異議なく承認されました。以下にその概要をお知らせします。

【幹事会】
 総会に先立ち、幹事19名の出席のもとに開催され、北海道バイオ産業振興協会の運営に関する基本方針を審議しました。この席上で、高尾会長が退任の意志を表明され、これを受けて新役員案が決まりました。審議に提案された内容は、通常総会および特定非営利活動法人設立総会と同じですので、次節で紹介します。

【通常総会】
 高尾会長が議長をつとめ、第1号議案から第7号議案まで審議されました。
●第1号議案   平成13年度事業活動報告
 例会・セミナー、専門部会、バイオインダストリー振興事業、コーディネート事業について開催場所と日時、講師の紹介、参加人数などを報告しました。
●第2号議案   H13年度決算報告、監査報告
 平成13年度決算報告が以下のようになされ、ならびに 平成13年度会計監査報告がなされ、承認されました。

     収入      14,688,953円
     支出      12,483,232円
     差引額     2,205,721円
  
●第3号議案   平成14年度事業活動計画(案)
 (1)研究開発事業 (2)例会・セミナー (3)バイオインダストリー振興事業 (4)バイオ・ステージ (5)HOBIANEWS などを中心とした、平成14年度事業活動計画案が報告され、承認されました。
●第4号議案   平成14年度収支予算(案)
 H14年度の収支予算案が説明され、承認されました。
●第5号議案   会長・副会長・幹事選任
 留任の方を含め、以下の役員が選任されました。
                        (敬省略)
[顧問]  江口良友・高尾彰一
[会長]     冨田房男
[副会長] 小砂憲一・西村弘行
[幹事]
 浅野行蔵、池田隆幸、稲葉紀男、大澤真澄、岡田一憲、尾谷賢、澤田美智子、寒川卓知、清水繁夫、清水條資、高野茂、高橋国男、高橋健、竹田博幸、谷田昌稔、中野誠一、西影研治、村上紀夫、山田邦重、吉元勝雄
[会計監事]
  滝川幹・田中重信
●第6号議案   規約改正
 解散および残余財産の帰属に関する第17条・18条を
追加し、会則を整えました。
●第7号議案   特定非営利活動法人格取得
 満場一致で、特定非営利活動法人格の取得について承認されました。
●報告事項
 新規加入会員15、脱会会員13について報告しました。また冨田会長が企画運営委員を指名し、新企画運営委員会の陣容について報告しました。

【特定非営利活動法人設立総会】
<特定非営利活動法人(NPO法人)認証申請>
 議長を冨田房男会長に、また議事録署名人に吉元勝雄幹事・浅野行蔵幹事を選任し、特定非営利活動法人の趣旨および確認書について、および以下の議案について審議しました。
第1号議案 定款について
第2号議案 役員について
第3号議案 事業計画及び収支予算について
第4号議案 会費について
第5号議案 寄付財産について
第6号議案 設立代表者選任および設立代表者の権限について

【総会記念講演要旨】
 冨田房男会長が農芸化学賞を受賞されたことを記念して、去る4月25日(木)にH14年度通常総会記念講演会が開催されました。以下にその要旨をご紹介します。

1.微生物資源の探索とその機能開発
北海道大学大学院農学研究科 応用菌学教室 教授 冨田 房男 氏

 新規な抗生物質のような化合物或いは新規な酵素を探索するには、様々の手法が考えられるが、微生物を探索源とすることの優位性について述べてみたい。
微生物ほど多様性に富んでいる生物群はない。しかし、現在我々が手に出来るものはその数%であるといわれており、まだまだ未開拓の分野である。一方、例えば抗生物質などは多くの研究者によって数千の化合物が見つけられていて、新規な物質を見つけるのには様々の工夫が必要である。その一つにターゲット指向(target-oriented)スクリーニングと新規微生物を主な探索源とすることの組合わせが、考えられる。

1)ターゲット指向(target-oriented)スクリーニング
a) 抗腫瘍性物質の探索
抗腫瘍性物質の多くが核酸及びその生合成系に作用するものが多く知られていたので、枯草菌の核酸合成系の変異株と野生株とに対する抗菌力の差を指標にすることで簡便な予備探索法を開発し、様々の新規抗腫瘍性物質を多数見出すことが出来た。いずれも新規骨格をもつもので合成化学による修飾によって選択毒性の低下を試みた結果、数種のものは現在、臨床試験にある。(図1, 2)。

図1. Tetrocarcin A (Bcl-2 antagonist)


図2.  Quinocarcin

b) プロテインカイネース-Cをターゲットとする探索
プロテインカイネース-Cは、癌化に関与する重要なシグナルの発信源であることが知られているので、これをターゲットとするアッセイ系の開発と新規微生物を主な探索源とすることを組合わせることで、プロテインカイネース-Cの阻害剤であるスタウロスポリンを再発見した。スタウロスポリンは、既知物質であったがこのような作用のあることは初めての発見であり,この分野の研究を大きく推進させた。その結果、我が国からの学術発表の中で引用率が極めて高いものとしての評価を受けている。また、よりプロテインカイネース-Cに特異的な阻害剤 (UCN-01) (図3)も発見され、抗ガン物質として注目をあつめている。

図3.UCN-01発ガンのシグナル伝達を阻害する抗ガン物質

c) リポ多糖、キチン生合成をターゲットとする阻害剤の探索
リポ多糖は、様々の薬剤の透過を阻害してグラム陰性菌の生残力を増すように働いている。また、キチンは、真菌類に特徴的な化合物である。これらに特異的に作用する物質を探索することから新しい骨格を発見できた(図4)。

図4. キチン合成阻害剤 ascosterosid

2)未利用多糖を原料とするオリゴ糖生産酵素の探索
北海道の地域性を考慮した研究として、イヌリンからのオリゴ糖の微生物による生産と利用についての研究も行った。最近のスクロース消費の現象を考え、これに代わる作物としてチコリーを考えた。チコリーの蓄積多糖はイヌリンであり、これを原料として安価なオリゴ糖の生産が可能な酵素を探索し、difructose anhydoride III(サイクロエフ・スリー)(図5)のみを生産する酵素を発見した。また、スクロースから合成したレバンからdifructose anhydoride IV(サイクロエフ・フォー)のみを生産する酵素を発見し,その大量生産に成功した。

図5.腸管でのカルシウム吸収を促進する Difructose anhydoride III(サイクロエフ・スリー)

 これらは、現在地域結集型研究「食と健康」に発展し、このプロジェクトの中でサイクロエフ・スリー及びサイクロエフ・フォーの新たな微生物による安価な大量生産方法を開発するとともにその有用性を検討し、日本人において不足がちなミネラルであるカルシウムの吸収を腸管内のタイトジャンクションを通して著しく促進することがはじめて見出された。これらはいわゆる難消化性オリゴ糖で、スクロースの約半分の甘味をもつ新たなる機能性食材を提供するものであり、近く製品化も見込まれている。

3)乳酸菌の新機能開発
北海道の酪農生産物として重要な乳製品の製造に関与する乳酸菌に関する基盤的研究を実施し、一例としてはヨーグルトの製品寿命を長くする方策として、酸性下ではその生育及び乳酸生産速度が低下するATPase低下株の造成や、乳酸菌のプロバイオティックとしての作用としてのコレステロールの低下の機構が乳酸菌がコール酸を菌体内に蓄積することによるものであること、また菌株間で大きな差があることをはじめて明らかにして、乳酸菌の基本的理解と応用に新しい道が拓かれつつある(図6)。

図6. 腸管内で胆汁酸が腸内細菌の菌体内に吸収される仕組み。

2.ゲノム解析プログラム「Phred/Phrap」のご紹介
         日立ソフトウェアエンジニアリング(株) ライフサイエンス推進本部 山下 巌 氏

Phred/Phrapは大量シーケンシングを行なっている世界中の研究機関・大学などで広く採用されている高速・高精度な配列連結プログラムで、ゲノム解析分野でのデファクトスタンダードとなっています。従来、主にUNIX環境で使用されていたこのプログラムをWindows環境で簡単に使うことが出来るようにしました。DNAオートシーケンサから出力された波形データのベースコーリング、ベースコール後の各塩基の信頼性評価、および、配列の連結・編集が可能です。

■主な機能
(1) Phred - ベースコール&クオリティ評価
DNAオートシーケンサが出力した波形データファイルを読み込み、ベースコールおよび各塩基のクオリティ値の計算を行ないます。クオリティ値とは、ベースコールした各塩基がどの程度の確率で正しいかを表す値で、波形データの品質を客観的に評価できます。読込めるファイルはABI PRISMR373、377、3700、SCFの各フォーマットで、フォーマットは自動的に認識されます。
(2) Phrap - 高精度・高速・大量配列アッセンブル
高速、高精度な配列連結プログラムです。Phredで計算したクオリティ値を使用すること、および、シーケンシング時のシーケンス方向をファイル名のパターンから自動的に認識することにより、高精度な処理が行なえます。
また、数万個の配列を一度に処理できますので、ゲノムレベルの連結や、大量のcDNAの連結が可能です。入力データとして3000個のショットガン配列を用いた場合、Phredは約4分、Phrapは約2分と非常に高速に処理が終了します。
(3) Contig Manager - コンティグプロジェクト管理

1) プロジェクト
配列の連結・編集作業は、Contig Managerでプロジェクトを作成して行ないます。このプロジェクトには、配列、波形データ、クオリティ値、連結結果、解析パラメータ等、あらゆるデータを保存しておけますので、作業の中断・再開が容易です。
2) マップ表示
連結後の各コンティグは、ウィンドウ上部のマップビューにグラフィカルに表示されます。Phrapによって連結されたコンティグにはクオリティ値が付いており、ユーザが設定した閾値により色分け表示が可能です。これにより、クオリティが低い部分が一目で分かり、Contig編集作業の効率が向上します。

3) データの管理
ウィンドウズのエクスプローラのようにフォルダを階層的に作成し、コンティグやフラグメントを分類しておくことが可能です。また、名称パターン(末尾が_Rで終わる等)によるフラグメント/コンティグの検索を行なうことができます。これらにより、数万件のデータも容易に管理できます。
4) トリミング・その他
ベクターを最大6個まで指定してベクタートリミングが可能です。トリミングした塩基は'N'で置き換えられます。その他、コンティグの解除、トリミングのやり直し、データの追加、部分的な再アセンブル、フラグメントの削除等が可能です。
(4) Contig Viewer - コンティグ結果表示・編集

プロジェクトウィンドウからアセンブルされたコンティグをダブルクリックすると、そのコンティグの詳細がContig Viewerで表示されます。

1) マップ表示
ウィンドウ上部にはコンティグと、それを構成するフラグメントの状態(位置、長さ、向き、クオリティ値)が一目で分かるようなマップが表示されます。また、コンティグのクオリティ値もグラフィカルに表示されます。クオリティ値はユーザが設定した閾値により色分けて表示されます。非常に長いコンティグの場合、任意の部分の拡大表示が可能です。これにより、クオリティの低い部分へ素早く移動することが可能で、コンティグの編集効率が向上します。

2) 配列表示
ウィンドウ下部にはコンセンサスおよびフラグメントの塩基配列が表示されます。クオリティが低い塩基やコンセンサスとフラグメントに不一致がある塩基を自動的にマーキングして、低クオリティ部分・不一致部分に素早くジャンプすることが可能です。

3) DNASIS Proとの連携
塩基の編集を行ない、編集後の配列で再アセンブルが可能です。コンセンサス配列をDNASIS Proへエクスポートして、プライマー設計等の各種解析が可能です。

(5)Trace Viewer - 波形データ・クオリティ表示
Contig Viewer上でコンセンサス配列の塩基をクリックすると、そのbp位置に自動的に波形を揃えて表示します。Phredによるクオリティ値、および、複数波形を同時に表示することが可能です。Phredクオリティ値は、ユーザ指定の閾値による色分け表示が可能です。Phred後のシーケンスをfastaファイル、または、SCFファイルへエクスポートすることが可能です。

■応用例
(1)大量データ解析
オプションのDNASpaceと組合せることにより、波形データをPhredによりクオリティチェックしてクオリティの低いデータは自動的に排除、または、トリミング、その後Phrapによるアセンブル、コンセンサス配列の翻訳、複数データベースに対して連続してホモロジー検索、データベースへの格納、といった一連の処理をワークフローとしてあらかじめ定義しておき、数万個のデータを自動的に処理することが可能です。

(2)SNPs解析支援
複数個体の同一遺伝子領域の波形データを入力してPhred/Phrapで処理することにより、複数配列が相補鎖を考慮してアラインメントされます。Contig Viewerでは、コンセンサス配列と異なる塩基がマーキングされますので、SNP候補が一目で分かります。さらに、その場所の波形データを自動的に位置を揃えて表示することが出来ますので、SNPの判定に役立ちます。また、SNP部分の塩基とデータ名をクリップボードにコピー可能です。

■最後に
今回ご紹介するPhred/Phrapを始めとして、DNASIS Pro関連製品をHOBIA会員の皆様には日頃の感謝を込めて特別価格にて提供させて頂きます。詳細は下記当社営業まで御連絡下さい。

日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
北海道営業所 札幌市中央区北三条西3-1
TEL:011-222-4460 FAX:011-281-3349
担当:飯田
ホームページ:http://bio.hitachi-sk.co.jp/

3.ベンチャーキャピタルの投資の実態
          (株)UFJキャピタル 事業投資部 部長 篠原 浩 氏

(1)ベンチャーキャピタルの投資の実体
 三和、セントラル、東洋信キャピタルがこの1月に合併しUFJキャピタルを作った。総勢100人でやっている。単なる出資だけではなく企業の支援を考えている会社である。事業投資部は銀行とは関係なく、良い企業を自ら判断して出資することが出来る。投資の大半は自己資金でやっているので、期限はない。バイオベンチャーなどでは製品が出来るまで10年かかる会社もあるので、そういう会社には適している。会社が成長している限りは株を持たせてもらっている。470社うちの100社くらいは、当社が株主の一つとなっている。

(2)投資先
 業界内では第2位。第1位はジャフコである。合併によって規模だけは大きくなったけれど、その規模に見合った機能を付けるのが今の課題である。ベンチャーキャピタルはこれまでお金を出して終わりだったが、投資をしてどうやってそれを高めていくかが課題であり、ここ3年間でかなりお金を使ってきた。業種別で言うと、ライフサイエンスは9%と大きいが、アメリカでは13%となっており日本はまだまだ少ない。単純な比較は難しいが、ベンチャーキャピタル全体としてバイオには力を入れつつある。長期的にも産学連携、大学発ベンチャーに投資する方向である。これまでのTLOよりもより企業化に向かっているのは追い風である。これまで弊社に投資を持ち込まれたのは2000件、投資は170件である。見送りしたのはそのうちの半分1000件で、残りの830件は引き続き検討させてもらっている。投資先としてはITが40%で最もたかく、半分は1年から3年未満の若い会社である。出資シェアは1%が19%、1〜3%が39%,3〜10%が36%である。顧問として、大学教授、弁理士、弁護士、公認会をおいて投資の判断をお願いしている。

(3)ベンチャー企業への提言
 本当に会社を応援できるキャピタリストとつきあうことが大切。でも、その能力のあるキャピタリストは全体の20%くらいである。取引先ベンチャー企業は、銀行の取引先が無いところが48%このうち36%を当社主導で投資している。投資時の決定要因として産業収益の低いところが問題だが、経営者の資質が極めて重要である。投資を見送った理由をみると、ビジネスモデルが弱いが24%で一番で、技術とビジネスのリンケージがしっかりしているかどうかに着目している。
弊社のバイオベンチャー投資のチェックポイントは、

1)企業を見るポイント(大前提:技術に投資しない、事業に投資する)
@ 開発段階から、最終ユーザーが絞り込まれているか?
A ターゲットユーザーの、どのようなデメリットを解消させられるか?
B 現状からどの程度改善するか?(10倍ルールを摘要)
C 新しい手法で、新しい市場をクリエイトできるか?
D ステージごとのEXIT戦略が描けるか?
2)経営者の資質を見るポイント
@ 自社のリスクを掌握しているか?(企業ステージごとのリスク)
A 株主・経営陣・従業員をまとめ上げられるか?
B 自分のネットワークでビジネスをしようとしてないか?(=ベストパートナーを選んでいるか?)
などがあげられる。

総会記念講演の様子

【懇親会】
 講演終了後、懇親会が開かれ、来賓の佃政芳北海道経済産業局産業部長、石川久紀北海道総合企画部次長があいさつされ、多数の参加者がなごやかに懇談しました。

バイオ&食品工業公開セミナー開催要旨

 HOBIAは、札幌商工会義所バイオ&食品工業研究会と共催で、公開セミナーを開催しています。今回は、平成14年2月19日(火)、北海道経済センターにおいて開かれました。その概要を報告します。

1.「函館とイカ〜イカゴロを利用した釣り餌の開発など」
函館地域産業振興財団 北海道立工業技術センター  研究開発部長 宮嶋 克己 氏

 北海道立工業技術センターは降雪だが、函館地域産業振興財団は民営で、道から委託を受けて運営している。新事業創出促進法が施行されたのを受け、当財団も昨年4月に名称を変更した。センターの目的は、新産業創出による地域活性化。オリジナル商品の閑黄を目指している。センターの受託共同研究は、近年増加しており、平成12年度は19テーマだったが、平成13年度は36テーマ(今年1月現在)に急増している。成果例を何例か挙げる。
 @ EL(electronic letter)商品
 発光シートの開発で、屋外で使えるものを開発し、外国車のステップ部分などに使用されている。平成12年に企業を設立している。
 A 昆布ブロックの開発
 海に入れて、コンブが付着する漁礁となるもので、平成7年に新会社を設立し、ブロックの開発に成功。平成11年に「コンブロック」はグッドデザイン賞を受賞した。
 B 船釣り用オモリの開発
 釣り用オモリは、できるだけ速く海中の目的の位置に到達することが求められるため、流体力学の技術を使って開発。こちらもグッドデザイン賞を受けたほか、第1回北海道釣り大賞も受賞した。
 C だったんそばの開発
 昨年4月にそば店主から委託を受けて閑菟に着手し、無添加で5日間の冷蔵流通を可能にした。昨年8月にはゆうパックに採用されている。

 次に、本講演のテーマのイカゴロを利用した釣り餌の開発の話をする。イカの国内の漁獲量は年間60万tで、日本人1人あたりの消費量は、魚の中でイカが第1位である。そのため、イカゴロの処理問題が大問題となっている。
イカゴロは、イカの総体重の11%も占め、道南の渡島・桧山でのイカゴロ排出量は年間で1万5000tから1万6000tにも上り、処理費用は加工業者の負担である。そこで、イカゴロの有効利用を考え、釣り餌の商品化に着手した。平成2年にスタートし、平成5年には、イカゴロを固める安全な凝固剤を開発した。曳在、「イカス餌」の商品名で函館地域を中心に販売している。また漁業用には、キンメダイの延縄用に使われている。課題としては、まだまだ販売量が少なく、利益を出すところまではいっていないことである。また、今後は、ゴロのみでなく、皮や目、スミなどの利用も考え、ゼロエミッションを目指す。

2.「北海道の機能性食品の秘話〜蝦夷から現代まで」
   北見工業大学 生態システム科学研究室 教授 山岸 喬 氏
 私は、生薬と名品とは区別しにくいと考えている。北海道のアイヌ民族、開拓民たちは、どのようなものを食べて健康を維持してきたのかについて興味を持ち研究している。中国のアムール川近くの民族は、アイヌ民族と類似点がある。山丹交易の影響で、薬の知識も導入されたとみられる。江戸時代の書物には、徳川幕府に献上された蝦夷地の薬物の記録が残されている。タケリ(オットセイのペニス)やオクリカンキリ(えぞザリガニが脱皮するときにのみできる胃石)などで、これらの採集には、アイヌ民族の協力が不可欠だった。
 江戸時代の医師高屋養庵が蝦夷地での任務時代の医療を記録した「椴夷地響固御用諸留控」によると、蝦夷地では、寒気のあたりで多くの人が死んだが、効果がある植物として、ギョウジャニンニクなどがあげられている。また、薬としての陳皮についての記述があり、これはビタミンCに効果があることを経験的に知っていたということだろう。私は、健康に役立つ野菜やハーブに注目しているが、有望なものとしてハマナスがあげられる。ビタミンCと結合したポリフェノールを含んでいる。またマリアアザミやルバープがあり、ルバーブは端野町で栽培し、すでにゼリーやジュースなどとして商品化されている。
 また、これまで捨てるしかなかったコンブの仮根(ガニアシ)には抗腫瘍活性成分があり、大量合成の技術も確立しており、現在は動物実験中である。コンプを溶かす酵素の特定に成功しており、特定保健栄養金品「コレカット」として販売している。そのほか、オホーツク地域で多く生産されているタマネギの生体調節機能については、すでに明らかになっている。同じく同地域の水産物・ホタテに注目している。ホタテのヒモには、ミネラルを吸着する力があるとみられ、ミネラル食品として特許をとる準備を進めている。

シンポジウム「食と健康を考える2002」開催要旨
      
 8年目になった「シンポジウム食と健康を考える」が去る2月18日、ポールスター札幌で開催された。今年のトピックは、最新技術の使用で急速に進歩を遂げている「腸内環境の理解」。以下にその概要を述べる。

1.「消化管から健康をつくる−−難消化性食品成分の働き」
 北海道大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 食品化学講座 助教授 原 博 氏
 消化も吸収もされない食品成分、難消化性糖質には、健康に関係する多くの機能が知られており、その大半の働き場所は消化管である。新食材として誕生したDFAV(2分子の果糖の結合糖質)のカルシウム吸収促進作用を中心に、「難消化性食品成分」の消化管を舞台とした働きを紹介する。
1)難消化性食品成分とは
 難消化性食品成分の定義は「ヒトの消化酵素で消化されない食品成分の総体」であり、これに当てはまる代表は食物繊維である。最近多く市場にでている、難消化性オリゴ糖も有名になってきた。このほか、難消化性デンプン(レジスタントスターチ)があり、これは消化されにくい(されない)デンプンで、食物繊維と似た生理作用を持っている。日本では、これらを「難消化性」と表現するが、実際は“non-digestable”あるいは“indigestible”で「非消化性」とするほうが正確。生理的特徴は、小腸では消化されず、大腸に流れ込む食品成分である。難消化性食品成分の生理作用は、胃や小腸内容物の粘度を増加させる、イオン交換能をもつ、保水能により大腸でカサ効果をもつ、そして、大腸の微生物を増加させるなど。微生物は、難消化性成分を食べて、代謝して短鎖脂肪酸をつくり、それが大腸細胞の栄養になっている。短鎖脂肪酸とは、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。
2)大腸によるカルシウム吸収
 今回の講演では、難消化性食品成分の機能性の中でカルシウム吸収に焦点を当てる。Ca吸収に対する大腸の寄与を調べるため、ネズミの実験では、非吸収性マーカーと呼ばれる物質を餌に混ぜて摂取させ、Ca吸収を測定した。その結果、わかったことは、通常Caは主に小腸で吸収されているが、Caが溶けにくいリン酸塩などの場合、小腸での吸収は減少したが、それを補うように大腸で吸収が増加した。ここで、食物繊維を摂取するとCa吸収が増加したが、実験的に盲腸を除去したネズミでは、吸収増加は起こらなかった。食物繊維は、盲腸で発酵して短鎖脂肪酸へと代謝される。このためpHが低下してCa塩が溶解しやすくなって吸収が促進されたのだ。また、胃を切除したネズミでもCa吸収は減少したが、この時大腸でのCa吸収は増加し、大腸は小腸の補償をしていることがわかった。グアガムは、食品の増粘剤として広く使用されている水溶性の食物繊維で、発酵性が高い。これとCaをともに接種するとCa吸収は増加した。フラクトオリゴ糖も同様の生理作用がわかっている。胃切除で大きく減少した。Ca吸収は、フラクトオリゴ糖の摂取で回復した。これは、大腸発酵によってできた短鎖脂肪酸によるCa塩の溶解効果である。
3)DFAVのCa吸収促進効果は、新しい機構
 Difructose anhydride(DFAV、果糖が2つ結合した糖)は、もともと植物中に見いだされていた糖だが、微量なので食品原料としては、用いられていなかった。北大で、微生物の探索研究の結果、効率的にほぼ純粋なDFAVを作る酵素が発見された。その後、日本甜菜製糖で工業化開発が行われ、比較的安価にかつ純粋に製造することができるようになった。DFAVがユニークなのはCa吸収機能である。DFAVはCa吸収を促進するが、いままで述べたオリゴ糖とは、基本的に異なった仕組みで促進しており、大腸発酵によらないCa吸収促進が見られた。DFAVとCaをともに摂取すると小腸でも大腸でもCa吸収が増加した。その仕組みを解明するために腸管粘膜細胞の変化を調べた結果、DFAVは腸管粘膜細胞のタイトジャンクションを開いて、そこからCaが吸収されていることがわかった。ヒトでの小規模な試験でもDFAVは、Ca吸収を促進するらしいという証拠が得られている。現在は、DFAVを特定保健用食品の申請を行うべく、大規模なヒトでの栄養試験が行われる予定であり、食品としての開発が進んでいる。

2.「大腸は健康の発信源」
−見えてきた!腸管内細菌叢の全貌−
  理化学研究所・微生物系統保存施設室 室長 辨野 義己 氏

 私達が毎日排糖する糞便(乾燥物)の約1/2は、腸内細菌である。その大部分は酸素のあるところでは生育できない偏性嫌気性菌。最近の遺伝子技術を使用してその全貌が見えてきた。今回は、腸内細菌と健康について述べる。
 一人ひとりの腸管内には、糞便1グラムあたり実に約1兆個も常在している。大多数の腸管内細菌叢が棲む場は、大腸。大腸は、ヒトの臓器の中で、最も多い種類の病気が発症する場である。腸管内有害菌の代表である大腸菌群やクロストリジウムなどが生成した腐敗産物(アミン、硫化水素、アンモニア、フェノール、インドールなど)、細菌毒素、発がん物質、二次胆汁酸などの有害物質は、腸管自体に直接障害を与えるととともに、一部は吸収され、長い間にはヒトの各種内臓に障害を与え、発がん、老化、肝臓障害、自己免疫疾患、免疫能の低下などの原因となっていると考えられる。
 私達が年齢を重ねていくと、しばしば腸管内細菌叢のバランスが乱れてくる。その特徴は、ビフイズス菌の出現率が低下し、また出現したとしても菌数が減少する。逆に、若い時には出現率も菌数も低かったウエルシュ菌(腐敗細菌の代表)が高率に出現し、しかも菌数が著しく増加する上に、大腸菌や腸球菌の菌数も増加するのが普通。こうなると、生理機能低下の結果、食事成分などの腸管内滞留を招き、それにより腸内腐敗は産生された宿主にとって有害な物質が多量に産生されるようになり、これが腸管より吸収されて、いわゆる「腸年齢の老化」が進む。腺年齢は、生活が不規則あるいは食生活が偏っているなど、若い人々ほど老化しているというのが現実。つまり、実年齢と腸年齢が反比例している。このことは現在、日本人の健康を考える上で重要なポイントとなる。
 昔から「快食、快眠、快便」などと言うが、からだの健康状態は、この便の姿(大腸の健康状態)に反映される。毎日、バナナ2本の様な便がスムーズに排泄されれば、健康状態もよいと判断することがでる。これは、とりもなおさず健康で生きていくための目印ともなる。もし、このような便が出にくい時は、毎日の食事の質と量を工夫すること、とくに発酵乳や食物繊維を食生活に多く取り入れ、運動不足を解消することによって、理想的な便をつくり出すことができる。

3.「プレおよぴプロパイオテイクスとヘルスクレーム」
 ダノン健康・栄養普及協会 常務理事 平原 恒男 氏

 米国では、1990年に「栄養表示教育法」が成立した。食事と疾病の11項目の関係について『疾病のリスクを低減する可能性がある』と商品に表示して良いことになった。
これをヘルスクレームと呼んでいる。日本では、2001年4月に保健機能食品制度が施行され、従来の『特定保健用食品』と、新しく『栄養機能食品』が加わった。そのため特定保健用食品の審査に変化が起きている。
1)ヘルスクレームに関する内外の動向
 1984年から始まった文部省特定研究「食品機能の系統的解析と展開」において食品の3次機能が注目され、以来「機能性食品」という用語が世界的に広く使われるようになった。そこで厚生省は1991年「特定保健用食品」の制度化を行ったが、これは健康に対する効果が科学的に立証された食品に、国が一定のヘルスクレーム(健康強調表示)を許可する制度である。
 米国では、1990年に「栄養表示教育法」が成立し、1994年完全実施に入った。食事と疾病の関係について『疾病のリスクを低減する可能性がある』と表示してよい。更に1994年に「栄養補助食品健康教育法」が成立し1999年完全実施されたので、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸などは、FDAの許可なしに『身体の構造と機能に対する効果』を表示できるようになった。
 欧州は国により規制に差がある。機能性食品のEUとしての法制化はまだ行われていない。ただし、EU内のある国で販売されている食品を他の国が禁止してはならないという指令があり、実際乳製品を中心として日本を上回る規模の機能性食品市場が存在する。CODE](国際食品規格)では、すでに「栄養素機能表示」が採択されているが、これに「高度機能表示」と「疾病リスク低減表示」を加えたものをヘルスクレームと定義している。ヘルスクレームの必須条件として、真実であることの科学的裏付けと誤解を招かないための医薬品表示との区別が、世界的コンセンサスになっている。
2)特定保健用食品の推移
 表示許可・承認品目の数は1994年以降毎年20ないし70ずつ増加し、2001年末には289品目に上った。その60%は、整腸作用をうたう食品である。
市場規模は2001年末に、小売希望価格で4,120億円に達した。1999年末に2,270億円であったので、年間伸長率は、140%である。保健の用途別にみると、“整腸作用”が全体の81%を占めており、なかでも乳酸菌などのプロパイオティックスが3,170億円の競模で、全市場の77%を占め年間伸長率は約130%である。オリゴ糖、食物繊維などのプレバイオティックスは計184億円であるが、2年前の販売金額に比べるとオリゴ糖は60%、食物繊維は110%で、全市場に対する占有率も計9.1%から4.6%に低下している。
 市場の伸びが著しい用途は、“むし歯”と“血糖値”だ。2年前に比して各々5.0倍、3.6倍に拡大し、2001年末の市場占有率はいずれも4.5%である。販売金額を食品の形態別に分類すると、発酵乳41%、乳酸菌飲料38%、その他の飲料8%で、これらが全市場の87%を占めている。


シンポジウム開催風景

3)プレ及びプロパイオティツクスの科学的根拠とヘルスクレーム
 特定保健用食品の許可を得るには、所定の書式に従って申請書に添付資料を添えて最寄の保健所に提出する。内容は、「保健の用途」「摂取量」「安全性」などに関わるヒト試験がもっとも重要であり労力も要する。原則として申請する食品を用い、保健の用途の対象として適切なヒトについて、統計学的に有意差がつくだけの十分な被験者数で、ヘルシンキ宣言の精神を遵守して実施する。主要な試験結果については、許可表示に直結するだけに、学術誌への掲載が前提となる。作用機序、体内動態に関する知見も重要である。一方、「安定性」「試験方法」「ロット分析」など品質関連のデータ整備にも、相当な時間をみなくてはならない。なお、特定保健用食品の開発・申請については、(財)日本健康・栄養食品協会で懇切なマニュアルを発行しており、かつ有料ではあるがごく初期の段階から相談に応じているので、申請を検討する場合は、同協会特定保健用食品部に問い合わせるのが実際的と思われる。
 特定保健用食品の申請・評価に関しては、関与する成分と保健の用途ごとに指針が作成されつつあり、すでに4種類の指針が公表されている。そのうち“オリゴ糖を関与する成分とし、「お腹の調子を整える」等の旨を表示する特定保健用名品の申請・評価に関する指針”をみると、ヒト試験のプロトコール、腸内細菌叢や排便回数の評価方法などについて、詳しく述べている.
 (財)日本健康・栄養食品協会が発行している学術誌「健康・栄養食品研究」に投稿して特定保健用食品の申請を行うケースが多い。
4)保健機能食品制度における特保と今後の課題
 2001年4月1日に保健機能食品制度が施行された。従来の“特定保健用食品”に加えて“栄養機能食品”が、“保健機能食品”に属することになった。枠組みの変更に伴い実態面でも変化が起きている。
 ヘルスクレームについても改善の必要性が指摘されている。遠回しなお仕着せの表示でなく、科学的根拠を率直に伝える適切なヘルスクレームにすべきである。正しい認識の徹底が必要。また、言うまでもなくヘルスクレームは、消費者の理解と支持がなくてはその用をなさない。特定保健用食品制度の成否も、究極はその点についていかに努力するかに懸かっているといえよう。

ダノン健康・栄養普及協会ホームページアドレス
http://www.danone-institute.gr.jp/