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HOBIA例会・セミナーの記録 これまでのHOBIAの例会やセミナーの記録です。HOBIAの活動状況が見えてきます。 |
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「開会挨拶」 北海道バイオ産業振典協会 副会長 小砂 憲一 氏
本日は90名以上の参加者がありバイオ産業への皆さんの関心が高いことが伺われます。HOBIAも設立から16年経ち、設立当時はトマトとジャガイモの掛け合わせができて話題になった頃です。現在では遺伝子組換え作物ができ、家畜の糞尿の処理から遺伝子産業まで、ものすごい範囲でバイオが利用されています。遺伝子組換え作物については、それぞれの国の施策が決まっていないことが混乱の一原因であります。また生命倫理に関することまで含む様々な問題を提起しております。本日は、総会記念講演として、国のバイオテクノロジー施策の中心でご活躍の、経済産業省 製造産業局 生物化学産業課 塚本課長にご講演を頂きますので、我が国ではどのような施策でバイオを推進していくかをお聞きできると期待しております。
「バイオテクノロジー施策の新展開」 経済産業省 製造産業局 生物化学産業課長 塚本 芳昭 氏
1.はじめに
本年1月から我が国のバイオテクノロジーを統括する仕事をしている。一時期通産省を離れ、大学のシステム作りや大学と産業界との共同研究をどうやって行うかといった、いわゆる技術移転の仕事に携わっていた。具体的には東工大のTLOの立ち上げを行っていた。 この技術移転の面では、アメリカでは大学や公的機関からの技術移転がうまくいっている。アメリカの大学の技術移転に関する最新データーを見てみると、全体の7割がバイオであり、そこから生まれてくるロイヤリティは87%がバイオ関連で、額は700億から800億円と膨大である。アメリカでは大学がキーである。しかし、日本ではなかなかうまくいっていないのが実態である。 2.バイオテクノロジーを巡る最近の動き エポックメーキングだったのはヒトゲノムの解析。サイエンスとネイチャーに同時に発表された。国際コンソーシアムとセレラ杜が激しく競争したのはご承知のとおりです。 2月に経団連で講演したセレラ社のベンター社長によると、数千件の特許の仮出願を行い、実際にものになりそうな数十件に絞り込んで本出願したそうである。ゲノムを解析しても機能性が分からないと特許にならない。アメリカでは研究する前のパテント戦略がしっかりしている。いろんな展開の中で特許を見ながら戦略を考えることがこれからのバイオの手法となる。今のゲノム研究は読んだという段階で、これからは遺伝子の発現とタンパク質を解析するのが仕事になる。タンパク質はまだまだ未知の部分が多いのでこれから必死にやればアメリカに追いつく可能性はある。 今の遺伝子工学はアメリカのコーエンとボイヤーが出した基本特許から始まったが、彼らも当時は特許を取れるとは思っていなかったようだ。この遺伝子組換えの基本特許は97年に切れている。しかし、バイオに関わる多くの基本特許がアメリカ、欧米に抑えられている。研究テーマの絞り込みをしないと、いくら研究しても商業化というレベルでは全く意味がない。応用、実用化と言うことを考えると、大学および公的機関においても特許が非常に重要になってきている。日本のゲノム産業の市場規模は1兆2000億円の売り上げを上げており、これから化成品や環境浄化へ入ってくるはず。今やリサイクルがキーワードとなり、生産プロセスにおいても廃棄物が出ないことが重要になる。バイオによるアクリルアミド合成は世界の化学工業プロセスを変えつつあるし、医薬関係では光学異性体をつくるところにバイオプロセスが入り込んでいる。インク、紙パルプにも酵素を使い始めている。 3.米国、欧米の政策動向 ライフサイエンスに特化した予算配分はクリントン政権からブッシュ政権になっても変わらない。これまでも集中して予算配分してきたのに、1999年8月に大統領令を出してさらに強化し、10年間でバイオエネルギー、バイオマスの拡大をめざしている。植物バイオ、微生物バイオも盛んに行っている。トウモロコシから、エタノールをつくってガソリンに混入したり、ポリ乳酸からプラスチック、繊維に持っていくという資源循環型の戦略をとってきている。アメリカにおけるベンチャーは1300社くらいあり、欧州も全体で1300社くらいだ。日本では180社くらい。2010年に1000社生まれてくることを経済産業省はねらっている。イギリスも新しいベンチャーを支援する動きがある。2年前に90億円を15の大学に配り、ベンチャーを立ち上げたり、市場調査の資金として使った。 4.我が国のバイオテクノロジー関連施策の現状と今後の動向 きちっとした特許施策をとらないと研究しても無駄だ。アメリカにおける科学技術予算の0.5%は技術移転費用だ。論文を出してアカデミックな流れ(時流を作る)を作るのは重要だが、それ以外の人は役に立つ研究をやってほしい。そのためにTLOを整備していく。バイオを我が国の戦略として位置づける。その後に、基本方針、基本戦略をつくり、24兆円を投入し2010年にはバイオ市場規模を、現在の1兆円から25兆円にする施策が発表された。これでも、投入金額はアメリカの1/4くらい。オーダーメイド医療も重要だが、日本では本格的な臨床試験ができないので、新たな新規医薬品の開発は難しい。アメリカではFDAに専門家がいて相談に乗ってくれたり、前倒しでガイドラインを作ってくれたりするが、日本では行政組織の中だけで対応できるようにはなっていない。臨床に協力する体制も日本でははっきりしない。日本の製薬メーカーも臨床はイギリス、アメリカでやっているところがある。遺伝情報が分かるようになると、食生活で予防することができ、今後健康産業が伸びてくると予想している。 5.今後の課題 白川先生もノーベル賞をもらわなければ畑仕事をしていた。これが日本の現実。しかし彼のアメリカの共同研究者は金持ちになっている。努力し成果を上げた人が報われるようなシステムを作らないと日本は伸びないだろう。バイオは基礎研究と応用が結びつきやすいので、大学や公的機関がまずがんばらなければならない。大学もきちっとした行政法人化を行う。技術移転は手作りであり、各大学に設けなければいけない。今後はその連携が重要である。公務員倫理法に従うと一緒に食事もできない。行政の公務員と研究の公務員は違うことを理解すべきだ。大学機関を非公務員型に変え、世界と渡り合える研究できる機関を作る。バイオの開発を行っている人から率先して行動を起こさなければ何も始まらない。 講演される塚本氏 去る平成13年2月23日(金)に札幌市内で札幌商工会議所「バイオ&食品工業研究会」と北海道バイオ産業振興協会(HOBIA)との共催のもと、同セミナーが約80名の参加者で開催された。 「食品成分の新しい機能性 −生活習慣病の予防を目指して−」 東北大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 教授 宮澤 陽夫 氏
年間30〜50兆円の国民医療費が、将来100兆円にもなると懸念される。生活習慣病・予防食品の開発が急務となっている。同氏の講演は、各種の生活習慣病、例えば動脈硬化、痴呆症、発がん等々が酸化ストレスによって発症する確率が高く、その原因が活性酸素に起因し、原因除去食品の開発や食品成分の解明が重要となっていることや、それら生理作用の評価法の確立が重要視されると言及した。現在増加を続けているアルツハイマー型痴呆病と赤血球過酸化リン脂質との関係やアルツハイマー型痴呆症患者の脳にはビタミンE含量が少ないことから、発症原因に酸化過程が関与していることは明らかである。一方、DNAチップによる食品の健康機能・生産プロセス評価法の重要性も指摘された。
「電気的方法による農水産物の非破壊品質評価の現状と可能性 −農水産物の密度および電気的性質による評価を中心として−」 京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻 助教授 加藤 宏郎 氏
生体を対象とした非破壊計測は、農業・食品・医療などの広い分野で適用され、各種のハイテク技術が開発されており、現在も急速な進歩を遂げつつある。同氏の講演では、農水産物の計測・品質評価に用いられている方法を、最新技術に重点を置いて、その概要を展望しつつ、これまで研究されてきた電気や密度による品質評価方法について紹介された。特に、スイカやメロンなど農産物の非破壊品質評価、農水産物の電気特性と電気計測による評価、密度による品質評価と果実の体積計測について工場内施設の事例を示しながら述べられた。
セミナー会場風景 21世紀の幕開けを迎え、HOBIAの最初の行事として、先に案内しておりました例会を、60余名の参加のもとに下記により開催しました。 なお、例会終了後に40名が参加して、講師を囲み新年交礼会を開催しました。北海道経済産業局の菅野産業部次長と、(財)かずさDNA研究所大石所長から来賓の挨拶をいただいた後、なごやかに懇談し2001年のHOBIAの活動を誓い合いました。 <第91回例会>
1.日 時 : 平成13年1月24(水)14:00〜17:00 2.場 所 : ホテル札幌ガーデンパレス 孔雀の間 (札幌市中央区北1条西6丁目 п@011-261-5311) 3.プログラム (1) 開会挨拶 北海道バイオ産業振興協会 会長 高尾 彰一 氏
(2)講演
「組換えDNA工業化指針について」 経済産業省 製造産業局 生物化学産業課 安全審査係長 山本耕市 氏
組換えDNA技術については、これまで研究段階で自主的に安全確保を行ってきており、現在まで特有の危険性は報告されていない。標記指針の目的は、事業者がDNA技術の研究成果を生産活動に利用しようとする際の安全確保のための基本的な要点を示し、組換えDNA技術の利用に係わる自主的な安全確保に万全を期しその技術の適切な利用を促進することである。
この指針が対象とするところは、組換え体を使った生産活動すなわちプロセスや設備・装置の安全性であって、使う組換え体などではない。 対象とする利用形態には、人為的に外界から隔離された閉鎖系例えば発酵タンク等での組換え体利用に際しての装置の取扱整備、運転管理方法などを4段階に分けて規定した「第一種利用」と、屋外を含んだ自然条件下における限定された区域でのヒトならびに主要な動植物に対して非病原性であり、作業区域及びその周辺の生態系に有害な影響を及ぼす可能性が低い組換え体利用の取扱方法及び安全管理方法について定めた「第二種利用」がある。 指針の対象として、現在は試薬酵素や触媒酵素の生産が主となっているが、今後、動植物を利用した工業生産(動植物工場)、環境浄化事業への利用(バイオレメディエーション)などが増加すると想定している。 バイオテクノロジーの研究成果の利用について、今後は安全性評価とリスクコミュニケーションが重要になっているが、その中心となっているのが安全性評価の結果の的確な情報発信とPublic Understandingであると考えられている。 組換えDNA技術工業化情報システムについては、以下のHPで公開されている。 http://www.meti.go.jp/policy/bio/dna/top.htm なお、組換えDNAについては研究段階、生産段階、対象物などに係わって、省庁に分かれて指針があるが、整理される方向に行くと思われる。 「バイオテクノロジーが支える北海道農業」 竃k海道グリーンバイオ研究所 研究統括部長 谷田昌稔 氏
1.北海道農業の現状
専業率が高いこと(豊作、不作の影響を受ける)、高齢化(65歳以上増)、農家数の減少(20年で約半分に)、輸入品および道外品との競争等が問題である。 そこで、次世代への戦略としては、規模拡大による効率化、コスト削減(持続可能な農業への配慮が必要)、2次産業とのつながりによる付加価値付与、消費者ニーズへの対応(新たな価値創造)、作物の機能性の発掘、品種改良等の技術開発などが挙げられる。 2.植物バイオ技術とその目標 植物細胞が脱分化してカルスになり再分化して植物になる「全形成能」を利用する。培養する細胞のもとになるのは、茎頂、胚、葯、胚種、カルス、プロトプラストなどであるが、ウィルスフリー、時間短縮、物質生産などの目的により使い分けられている。 3.グリーンバイオ研究所の研究 設立当初は、細胞操作と遺伝子操作であった。 イネの規模拡大に対応できる湛水直播き栽培技術には直播種の開発が必要であった。また、北海道では寒さに強いことが求められる。小麦は寒さに強いが、その理由としてある種のカタラーゼが、耐寒性と相関する存在であることを発見した。小麦のこの酵素遺伝子を稲に遺伝子組換えして導入すると稲の耐冷性が向上した。 園芸作物のユリについてプロトプラストをとって融合してから再分化することで色などについて中間形質を得ることができ、コストを下げるだけでなく、今までにない価値を生み出した。 有用遺伝子を解析し、有用物質を植物で生産する植物工場も考えている。 4.新たな期待 マルチストレス(冷、乾燥、塩分)耐性の解明、実用的耐病(カビ、細菌、ウィルス)性作物の育種、植物による環境浄化(分解、濃縮)、植物工場(医薬品、生分解性プラスチック原料等)、遺伝子発現の制御、植物の機能性因子の特定と利用(ゲノム解析、DNAマーカー)など出口を意識して研究している。 ニューバイオとオールドバイオのバランスを考えて進めている。 「バイオテクノロジーにおける産業技術戦略」 経済産業省 産業技術環境局 産業技術総合研究所
生命工学工業技術研究所 生体情報部長 岡修一 氏 「バイオ産業技術戦略」は、緊急雇用対策や、産業競争力強化のための国家産業技術戦略に向けてバイオ分野に関連して日本バイオ産業人会議のバイオ産業技術戦略委員会が提案した。 バイオ分野では、製品に開発するまでのリードタイムが10年前に比べて長くなってきており、他の産業で短縮傾向にあるのと対照的である。また、製品のライフサイクルも短くなっている。 研究技術動向としては、ゲノム解析が重要になっており、ヒトについては、細胞レベルの技術開発もされている。これらに関連してタンパク質やDNAの分析機器の開発も重要である。 ゲノム配列の解明を含めた情報の産業への利用としては、バイオ医薬('80年代)、環境、食糧('90年代)から今後はDNA情報、神経細胞情報を産業に応用することが重要になる。ゲノム解析については、真正細菌から始まり真核生物であるヒト、マウスなどで終了あるいは進行中であるが、シロイヌナズナの解析が日米欧の協力で終了したことは、植物のバイオ研究で意味が大きい。社会的な理解と支持の獲得も必要になる。 「ポストゲノム戦略」は科学技術会議政策委員会が策定した。今後取り組むべき分野として、ヒトゲノム多様性解析、疾患主遺伝子の解析、タンパク質構造機能解析、ゲノム情報解析(バイオインフォーマティクス)、ゲノム機能解析研究(系統的な遺伝子発現解析、点突然変異体を用いた体系的解析)が挙げられている。 応用分野への取り組みの強化では、生活習慣病等の五大疾患研究、脳科学研究、免疫アレルギー、感染症研究、再生医学研究、植物や家畜等、食糧への応用に関する研究、発酵微生物の研究、新しい微生物の開発、工業化プロセスへのバイオ利用(環境応用分野に関する研究)が取り上げられている。 これらのことから、遺伝子多型と疾患や薬物との関係解明による創薬や個体毎に合わせた投薬、治療が期待される。また、機能性食品の評価、健康状態の非侵襲的モニタ、ゲノム情報に基づいた目的物質の生産や分解に適した微生物の創製、DNAチップの電子機器や情報解析分野での応用も視野に入る。 4月以降の独立行政法人「産業技術総合研究所」の中で生命系は以下の研究部門と研究センターになる。 (研究部門) 生物遺伝子資源、分子細胞工学、脳神経情報、人間福祉医工学 (研究センター) 生命情報科学、ジーンディスカバリー、生物情報解析、ティッシュエンジニアリング、ヒューマンストレスシグナル 第91回例会・新年交礼会の様子 去る平成12年12月5日(火)札幌ガーデンパレスホテルで開催された本シンポジウムには、約100名の参加者があり、参加者から高い評価を頂きました。本シンポジウムは(財)北海道科学・産業技術振興財団の大学組織研究交流支援事業の補助を受け、さらに北方系機能性植物研究会(会長:西村 弘行)の会員が母体となって開催されたものです。まず、基調講演として元特許庁・特許技監の佐々木信夫先生(北海道東海大学環境研究所・教授)に、「北方バイオ資源を活用した知的財産権の現状と将来」と題してご講演戴き、「道内の少ない特許件数は、研究レベルが低いというより、特許化を促進するコーディネーター人材が少ないため」と結論づけました。特に、研究者の特許常識として次の三点を重視されました。 @何が自分の発明か〜論文・特許の事前調査 A特許専門家との対話 B論文発表と特許申請のタイミング 引き続き、北方系機能性植物研究会会員研究者より発がん予防食品、ダイエット食品、アルツハイマー型痴呆予防食品、血糖上昇抑制食品等々生活習慣病予防に関連した基礎研究から応用研究まで貴重なデータの発表が多数なさました。尚、出席者からこのようなシンポジウムをぜひ継続して欲しい旨の要望がありました。 (文責 : 西村)
研究発表風景 いま、環境静脈産業の企業化が望まれ、新技術の開発とその事業化が重要視されています。11月17日(金)に北海道東海大学環境研究所が主催し、HOBIAも共催で参加した地域環境問題5周年記念シンポジウムが開催されましたので、基調講演とパネルデスカッションの要旨を紹介します。 <基調講演> 「北海道における環境問題と道内企業の取り組み」 帯広畜産大学名誉教授・産業クラスター研究所 所長 美濃 羊輔 氏 北海道における特有の環境問題は、どうしても一次産業由来のものである。問題を農業、林業、水産業の3分野に分けて考える。 <農業と環境> 農業界で最大の問題は家畜のふん尿であり、廃棄物のうち35%が家畜のふん尿である。ふん尿の処理に関する新しい法律が公布され、実施まであと4年である。この法律の骨子は、家畜のふん尿を野積してはならず、地下浸透を防ぐための基盤を作ること、雨水などによるふん尿の流出を防ぐための屋根をつけることの2点にある。 ある町の調査では、施設を自前でつくるとなれば、資金がなく酪農業をやめざるを得ないと答えた人が、全体の2/3を占めている。 各地域で役場や農協が集中管理方式を検討し始めた背景にはこのような理由がある。 現在の道内の動きだが、一つは、バイオガスプラントの建設で、家畜ふん尿に生ゴミ等を加えて発酵処理でメタンガスを生成させ、それを電力に変換しようとするもので、この方式は、すでにデンマークやドイツなどでかなり普及している。普及しているのは、外国ではこの方式が何らかの国策と連動しており、このことを考えて導入しないと後で大変なことになる。 二つには、肥料としての有効利用である。家畜のふん尿には3つの種類がある。スラリー(固液の混ざったもの)、固形物(水分をかなり除き山積可能なもの)、液体(主として尿)である。一般に、スラリー状のものはスラリーストアーの中に入れ、好気発酵処理後、畑地や草地へ還元されている。だが、この方法には多額の電気代がかかり経営を圧迫している。最もコストが安くつくのは固液を分離し、固の部分は堆肥化、液の部分は好気発酵後畑地や草地へ還元するか、河川へ放流するかである。ここで問題になるのは、液体部分の処理にスラリー同様かなりの電気代を要することである。この問題を解決するため、新しい技術開発を佐呂間町のある企業が開始した。それは、曝気を行う代わりに藻を用いる方法である。藻の発生する酸素を好気性微生物に利用させ分解させるものである。この過程でかなり浄化された液体を素焼状物質の層を通して空気中に蒸発させるのである。この方法では、電力も必要とせず河川への放流もなしにすませられる。 変わった方法としては、ふんを炭化し融雪剤として用いるものがあるが、今の所コスト高で実用化が困難な状況にある。 次に、農業用資材に由来するものがあるが、資材の多くは塩化ビニールやプラスチックで作られており、例えば、マルチフイルム、肥料袋、牧草ロールのラップフィルム、ビニールハウスのシート、ナガイモのネットがある。従来、これらのものは家庭からでる厨芥類とともに野焼されてきた。その結果、農村地域でダイオキシンが発生したのである。ドイツなどではダイオキシン濃度が0.1ng/土壌1t以上では農業をやれない法律が成立している。法律のあるなしにかかわらず、やはりダイオキシンの発生は極力抑える必要がある。そのためには、ダイオキシンを発生させない素材に帰るのが最も有効な方法と考えられる。マルチフイルムについては、道内の企業が石油系樹脂からダイオキシンの発生しないものを開発した。財団法人北海道地域技術振興センターの技術開発支援第1号で、散布も簡単ではぎ取り不要な、ブラックリキという商品名ですでに販売されている。これは土壌を5℃から7℃高める保温効果があり、作物の収量も10%程度増収を見ている。他のものについても、できるだけ早い時期に別の素材で作る技術開発を道内で行うべきである。 でんぷん糖から紙を作る方法も確立した。このような素材で肥料袋などが出来れば野焼をしてもダイオキシンは発生しない。 素材の後始末をどうするかではなく、今後はフロント型(環境問題を発生させない素材に切り換える)の技術開発を目指すべきであろう。 もう一つの問題は環境ホルモンである。環境庁で認定している環境ホルモンには70余種あるが、このうち2/3が農薬である。人体にホルモンとして作用するかどうかはいまのところグレーゾーンにあるが、やがてこのような農薬は排除してゆくべきであろう。この問題の解決には、やはり生物農薬の開発が必要になろう。道内では試験場などでかなりこの分野の研究が行われているが、民間ではほとんど行われていない。 <林業と環境> 林業界においては、廃材が最大の問題となっている。下川町や足寄町などで経済的に価値の低い樹種を高付加価値化する研究が開始された。このような地域で技術開発が進展すれば、廃材の有効利用にも生かされる。今後、牛舎の敷料が欠乏すると予想されている。廃材からの敷料作りや、家畜ふん尿の水分調整剤の開発など今後ぜひともやらねばならぬ課題だろう。変わったところでは、大樹町クラスター研究会でやっている白樺廃材を微粉にした木材粘土から彫像を作ろうというものがある。 <水産業と環境> 水産業界にも多くの問題がある。特に魚介類を加工している所はいずれも頭を痛めている。ホタテのウロからカドミウムを除去する方法も確立されているが、未だコストが高く新商品開発の素材としては不十分である。太平洋沿岸地域では年間6千tという莫大なヒトデが混獲され、放置しておくと悪臭を放つため、大きな環境問題となっている。このヒトデを牛ふんバーク堆肥(発酵中のもの)の中に入れると2週間で分解されることが明らかとなった。肥料成分も良くなり作物の発根を促進する物質も生産されることや、粉末をラワン蕗の圃場に散布すると、ウスグロハナアブ被害の軽減に効果があることなどが確認されている。広尾町では鮭の内蔵物等を発酵処理して堆肥化しているところもあるが、その過程で酸性化することが問題となっている。牛ふんなどでは、アルカリ化することで、バレイショそうか病が発生しやすくなるなどの問題が発生している。 両者を合わせて発酵させるとちょうど良くなる。このように、一次産業に由来する廃棄物を横断的に利用することで、個別の素材の欠点を補完することも可能になる。個々の貝殻なども粉末にして、カルシウム資材として販売しているところもある。これらも、高温で焼くことにより多孔性のものに変化し、土壌中で溶解し易くなるので今後の技術開発が期待される。 <二・三次産業由来の廃棄物について> 二次産業由良の廃棄物中の大きなものは、でんぷん廃液とポテトパルプである。両者とも悪臭を放ち大きな環境問題となっている。 でんぷん廃液については、タンパク質を回収し、家畜の餌にしているところもある。ポテトパルプについては、最近紙や容器を作る技術が開発された。現在、中札内村を中心に事業化が可能か否かを検討している。食品加工工場からも種々の廃棄物(廃油、煮汁、規格外品など)が排出されているが、これらに対する処理技術が確立されていない場合が多い。 三次産業からのものとしては、生ゴミの処理が最大の課題であろう。病院、レストラン、ホテル等からの残飯やスーパーなどからの期限切れ食品など、二次産業由来のものと合わせて、その処理技術の開発が望まれる。道内にも僅かながら、このような分野に係る企業が出来てきたことは喜ばしい限りである。今後は、これらの企業が連携して技術を確立する必要がある。と同時にローテクノロジーを見直し、先人の体験等の視点を持ちつつ、先端を追い求め技術レベルを問うのではなく、何が大切かを考える必要がある。 そして畜産と水産業等、業界が横断的に取り組む必要がある。 十勝・釧路地域で釧路高専、釧路公立大、帯広畜大は地域共同研究体制を構築したので、これからは大いに使って欲しい。 <パネルディスカッション> コーディネーター 田村 修二氏 (産業クラスターモデル事業化委員会委員長) パネリスト 黒柳 俊雄氏 (北海道大学名誉教授・札幌大学経済学部長) 石塚 庸三氏 (泣泣E研究所 代表取締役所長) 高瀬 勝氏 (産業クラスター研究会「イルムケップ21」会長) 作田 庸一氏 (北海道立工業試験場化学技術部主任研究員) コーディネーターの田村氏から、自然環境をいかに維持するかは、生命維持のための基本的課題であり、市場経済の発展で目先の利益や生活が優先され、その場の対応が先になり、根本的な努力が無視されがちであること。それらの解決には知性や教育が大切であるとともに、因果関係を合理的に説得できる科学的データの必要性がある。環境問題は難しいが、基本的には個人が行動することであり、全ての人の協力が必要である。生産者、消費者と単純な分類でなく、誰でも家族を経営する生産者であり、ゴミを排出する消費者であることを自覚することが必要であることなどが話されました。 北海道としても、自然環境をこれ以上破壊しないこと、リサイクル農業とクリーン農業を進めること、知的で高付加価値の産業を育成すること、自然エネルギーや省エネルギーを進めること、都市と農村を融合した相互依存の産業構造を形成することなど、自然・社会等の分野で連携して、環境静脈産業を生きづかせる必要があることが提言されて、各パネリストが専門分野から基本認識を発表しました。 黒柳氏からは、北海道経済の自立のために資源の高付加価値化、環境問題を前提にした資源で消費者ニーズにあった安全性の高い、高品質のものを安定的に、安く、サービスする必要があること、また流通を無視出来ないので十分念頭に置く必要があること、特に静脈産業では地産地消で、技術開発とコストに留意し、市場を見極めてターゲットを絞り、高付加価値への取り組みが大事で、生産コストと流通コストをトータルで考える必要があること、そして地域間、産業間、産学官、自然科学と社会科学が連携した研究のネットワークを構築する必要があることなどの意見が出されました。 石塚氏からは、未利用資源を活用した商品開発について、なぜ今その必要性があるかを、ご自身の研究から、イカの甲(β−キチン)の利用、イカ由来βキチン質の特性、魚の硬質ウロココラーゲンの利用等について、北海道由来の資源にも応用出来る研究について発表されました。未利用資源の利用にあたっては、性質を見極めて、人がしない分野の開発で商品化を図る必要も強調されました。 高瀬氏からは、「イルムケップ21」の立ち上げと、異業種の人たちの結集から、「育てて食べて捨てる」から「育てて食べて畑に還元」のリサイクルへの取り組みについて、具体的に実践しているレビオシステムの説明がされました。 レビオシステムとは、町会単位でポストに各家庭からでる生ゴミを随時入れると、一次発酵(約50℃)でバクテリアの活動が始まるり、それをレビオカーで収集し、肥料を製造して、それを田畑に還元するシステムです。 また、異業種交流からの事業化における、人材、資金の確保などの苦労話も披露され、小樽商科大学ビジネス創造センターの瀬戸先生からのアドバイスで、開発商品の6割を道外に販売するものを目指して、株式会社へ組織変更して運営している状況の説明があり、生ゴミの処理に悩む中で具体的な取り組みの実践例が紹介されました。 作田氏からは、道内の漁業の主要な生産額を占めるホタテガイと、イカゴロの有害重金属の除去の取り組みについて、具体的な処理方法について説明されました。長万部町と砂原町の実用プラントの概要や、今後のシステムの確立に向けた取り組みの説明がありました。 質疑応答では、生ゴミ処理に有効な酵素は何か、食糧自給率の向上策が必要でないか、農業の保全をどうするのか、北海道としてのアイデアの発出、水、土壌、肥料の相対的な関係等々について、長時間活発な活発な質疑がありました。 最後に、コーディネーターの田村氏から、環境は難しい問題であり、智恵は困ってから出るものではあるが、行動に出て継続して行く事が重要である。まず、自分で解決することが環境問題である、と呼びかけがあり終了しました。 |