HOBIA(北海道バイオ産業振興協会)



HOBIA例会・セミナーの記録
これまでのHOBIAの例会やセミナーの記録です。HOBIAの活動状況が見えてきます。
第90回例会報告

 去る11月16日に北海道産学官協働センター(コラボほっかいどう)において、北海道地域技術振興センター(HOKTAC)との共催で実施した第90回例会(北海道バイオセミナー)の講演要旨を以下に報告します。

<新規物質の開発と人材の育成>
          株式会社アミノアップ化学 代表取締役社長 小砂 憲一 氏

 潟Aミノアップ化学の前身は、1977年に北海道飼料研究所として設立したのがスタートである。
 81年には植物成長剤のアミノアップの開発に成功して85年に現社名になり、'89年には担子菌から植物性多糖類のAHCCを開発し、引き続き'92年に、アレルギーに有効な、しその葉エキスの開発に成功してヒットするなど、自然の恵みから素材を入手して製品を開発して会社の基礎を固めた。
 92年には全米特殊栄養補助食品学会賞も受賞し、97年にはソバポリフェノール等を独自に精製した天然素材のPMPを開発し、99年には北の企業家大賞を受賞するなど、業績を拡大している。
 成功させるという信念をもって、研究開発に当たっている。これらの開発製品については、特許を取得しており、このことが健康食品市場をコントロール出来る秘訣である。
 新規物質の開発に対しては、1つに、特許を取得すること、2つに、ニーズの把握と戦略を、全世界をターゲットに構築すること、3つに、自社で出来る技術レベルで出来る範囲の中で、独自性をもって経営すること、4つに、北海道産の原料を使って製品化すること、これは品質管理が確実に行えることから重要視している、5つに、誰もがわかるもので、説得できるものとし、例えば、しその葉、そばである。これらをアカデミックに証明して全世界に提供している。
 健康食品業はルールがない現状で、今後は健康食品の市民権を得て、業界レベルを上げルールを作る必要がある。
 これからは健康保持のために、健康食品は代替療法として全世界で伸びるので、機能性食品の市民権を確立するために、規制緩和が必要であると考えている。
 アミノアップ化学の製品は、限りなく薬品に近く、健康食品であるAHCC(キノコの菌体を培養)は全国700の病院で使用されているし、しそエキス(道産青じそ)、PMP(ソバポリフェノール)、GCP(大豆由来物質)は多くの医療機関で使用されている。
 そして、国内では北大をはじめ約30の大学、医学、薬学研究機関で共同研究しているし、国際的な研究交流も、タイ、ニュージランド、中国、韓国、米国等と積極的に実施しマーケットの拡大に繋げている。
 製造物責任等も科されている現在、医薬品並の品質管理を目指して、平成13年7月までにHACCPの認証を得るために準備中である。
 中小企業としての存在意義は、社会貢献であり、そのことを社員1人ひとりが自覚した人材育成が不可欠であると考えている。
 社員一人ひとりにボランティア、献血、独居老人宅の雪投げ等社会貢献を求めている。
 人材の育成では、完全実力主義で、学歴、性差、年齢は関係なく、どれだけ能力を発揮したかである。
 評価は、ボランティア活動といかに仕事をしたかが半々で、賞与と給料ベースが決まるシステムである。
 そういう人材46名の少数精鋭で、全世界を相手に研究開発と販売に当たっており、研究者も自分の開発した製品を世界に向けて説明し販売を行っており、ストックオプションも導入している。
 グローバルな視野に立った人材育成のため、英会話研修や海外研修など幅広い教育も行っている。
 企業経営理念が社員に浸透しており、今後も一層、天然由来素材からの製品の開発と社会貢献に努力する。

<食から展開する北海道活性化の可能性>
東京農業大学教授 小泉 武夫氏

1.FTについて
 FTのFとはファーメーテーション、Tとはテクノロジーで発酵革命と云っている。ITでは出来ない、人間で一番重要なことを解決出来るのがFT革命で、北海道の経済もFTでかなりの部分解決出来ると考える。
 21世紀は4つの大きいキーワードで解決することになる。
 1つは、環境問題で生ゴミ、家畜のふん尿をどうするか、切実な問題である。これはITでは解決出来ない。
 2つは、健康の問題である。未だガンやエイズの薬が出来ていない状況の中で、現在抗ガン剤などが微生物によって作られている。
 3つは、食料問題が重要でる。自給率が40%を切っていると云われている中で、これからの食料生産が微生物によって相当解決できる。
 4つは、エネルギーである。微生物による発酵によってエネルギーができるのか、と思われるかも知れないが、既に相当進んでいる。
2.発酵の現状について
 日本の発酵の総生産量に占める味噌・醤油・納豆等の食料面は17%しかなく、その中に1社で9千億円を占める大手のビール会社が入っている。全国2千軒の造り酒屋や味噌、納豆等の製造が入って全部で17%である。一般の人が考えている発酵は17%でしかない。
 非常に大きいのは、36,7%占めている医薬品である。例えば抗生物質は100%発酵である。抗生物質ができて手術ができて、化膿が止められるなどいろいろな病気が治せる。抗ガン、抗炎剤とか難病治療が出来ている。次に大きい化学製品ではアミノ酸の生産である。
 食品、医薬品、点滴用に用いられる全てのアミノ酸の生産は100%発酵によっている。最近はホルモン、サトウキビからの味の素、特殊なビタミンも発酵である。
 また、大きいのは発酵による酵素である。酵素とは微生物の作る蛋白質で生き物ではなく、生命体でないが物を分解したり、合成してくれる優れ物である。酵素を使った分野では最近病気を早く診断する酵素診断法が出来ている。また微量成分の計量関係は殆ど酵素である。そのほか環境関係で急速に発酵がのびており、例えば、水の汚れをきれいにしたのは、有機物を川に流す前に微生物処理をしたことによる。
 発酵の世界は食べ物だけではない。
3.健康と発酵について
 IT革命で根本的に病気を治すことは殆どない。もちろんコンピュータで原因を追及することはあるだろう。納豆菌の1例を取っても、納豆菌には何千何万といるが、納豆菌は強さが極めて強いことが証明されている。いかに発酵食品が人間の身体に良いかであるが、納豆は血栓症や高血圧が平常になるだけでなく、味噌にガン抑制成分があることが証明された。ガンは酸化質されて発生されると云われているが、微生物は有効な物質を作ってくれ、健康に微生物が貢献すると考えられている。この分野に発酵が大きな期待をされて、全く発酵に関係のない大手企業が医薬品に進出しており、日本農芸学会会員の殆どが微生物の作った有効成分の生産で菌を追いかけている。
4.新エネルギーと発酵について
 微生物でエネルギーが作れるかであるが、ジャガイモの澱粉を分解して中和してブドウ糖にし、それをアルカリ性にして発酵させるとグリセリンを作る。それをニトロ化すると爆薬になる。米国はその発酵法で爆薬を製造した。これが微生物の効果である。日本も戦後飛行機の燃料に微生物を使って研究した。今一つは約400年前に富山県五箇の山の中でソバ殻、稲わら、麦藁、木の葉、鶏の糞等と人間の尿を発酵させて微生物の力によって爆薬を作っていた。微生物は非常に強いエネルギーを持っているのである。
 また、炭化水素を発酵する菌が研究されており、この菌は有機物を体内に取り入れると、細胞の中に最大86%の炭化水素を蓄積する。
 炭化水素はガソリンの類似物で、この菌を遺伝子工学や組換えによって生産活動が激しい菌に組み込むと、生ゴミから石油が発酵生産出来るのではと研究されている。一方、水素についてアメリカンサイエンスで驚くべき研究がされている。水を取り込む非常に酸化力が強い菌で、体内に水素を取り込み酸化するときに大きいエネルギーを出し、排出するのは水で完全に無公害で、水が循環して原料はいらない。バクテリアの世界にはすごく超能力微生物がいる。色を消してしまうものや、麻薬を喰ってしまうもの、血液しか食べない物など、
また酸素があると駄目なもの、120℃でしか生きられないもの等を利用すると凄いことができる。
 これからは、エネルギーも発酵で解決の可能性がある。
5.食料と発酵について
 我々は既に微生物を食べている。キノコを例にとると、キノコは微生物で食菌といって最初は見えないが、菌糸が固まってキノコという食べ物を作っている。微生物には蛋白質が豊富である。乾燥菌体で蛋白質が70%もある。この蛋白質を人間が喰うのではなく、年間1兆トンとも云われる落ち葉に喰わせて、その発酵物を動物に喰わせて、それを人間が利用するなどを考えると食料生産が微生物に頼るのはそう遠くない。これからは食べ物も微生物の世界になってくる。
6.環境と発酵について
 環境で一番問題なっているのは生ゴミだが、FT革命では15年前からやっている。堆肥は完全に発酵しないと植物は根腐れする。昔は5年間かかったが、今は25日間で出来る。95℃から97℃で25日間発酵すると5年間のエネルギーの消費量に匹敵する。道内では浜頓別で行っている。
 我々は、生ゴミとは云わない、家畜のふん尿も廃棄物とは云わない、それは資源だからである。資源となると国は金をだす、廃棄物というと廃棄物処理業者を支援することになることから国は金を出さない。
 我々の方法は金がかからない。それは、農業者2人(酪農家でも可)と民間1人で農業法人を作り、町の生ゴミをチェーン循環型として土づくりの原料にする。ハザカプラントは100mのものが3億円弱するが、80%は国が出してくれる。20%は農林中央金庫が融資してくれる。融資分は町が生ゴミ処理代を出すので還元できる。出来た土を農家に無料で差し上げている。農業の再構築を考えた場合、資源として生ゴミの発酵処理しかない。ふん尿の海洋投棄も出来なく、埋め立てもキャパシテイがない。発酵した堆肥が肥沃だと誤解している面がある。有機農業でなく無機農業である。何故かと云うと有機物を無機物にして、その無機物の土を農業に使うからである。無機農業に対して肥料農業でないか。土を売る時代になったのでないか。発酵土壌が何故良いのか。それはミネラルが多いからである。例えば、亜鉛は遺伝子を作るし、痴呆症や情緒不安定、味覚障害に関係する。家畜のふん尿からこれらが出来るとすればすばらしい農業が構築される。生ゴミは有効な資源なのである。
7.食から展開する北海道の活性化について
 北海道はFTでいろんなことが出来る。北海道は経済面で独立するくらいの気概が必要だ。例えば道内で消費する酢だが100%本州から来ている。このことは屈辱的に考えるべきでないか。北海道で採れる麦で麦酢を作ればよい。ヨーロッパではモルトビネガーかビールビネガーである。酢一つ考えてもなんで北海道で作らないのか。不思議である。ましてビール会社があり発酵文化があるではないか。
 北の大地に大いに興味がある。北海道はワイン製造が盛んだが、この絞り残渣が大変な資源でないか。いろいろな物が出来るのが北海道でないか。
 フィンランドと北海道を比較すると、フィンランドはIT産業では世界のナンバー1であり、北海道より人口の少ない国が1.4兆円の黒字で、北海道が2.6兆円の赤字の違いは相当研究する必要がある。若い人を派遣して徹底的に調査する必要があるし、若い人を登用すべきである。そのような感覚を持つべきである。
 北海道の産業をFTによって進めるので有れば応援したい。


第89回例会講演要旨
 去る7月14日(金)にフジヤサンタスホテルにおいて第89回例会が開催されました。当日は約60名の参加者によって、盛大に開催されました。まず、高尾HOBIA会長の挨拶の後、北海道大学大学院農学研究科助教授の浅野行蔵氏と北海道電力総合研究所の渡辺恭吾氏から「カナダ・アメリカのベンチャー企業の現状」、拓殖大学 北海道短期大学相馬 暁教授からは「農業のワン・ツー・スリー産業化〜21世紀・テッペンランドがおもしろい〜」と度して講演をいただきました。皆さんご存じのように、カナダ・アメリカのベンチャー企業の現状については、浅野、渡辺両氏による連載がHOBIA NEWSにありますのでそれをご覧いただくことにして、今回は相馬氏の諌演要旨のみ掲載いたします。

○農業のワン・ツー・スリー産業化 〜21世紀・テッペンランドがおもしろい〜
   拓殖大学北海道短期大学 教授 相馬 暁 氏
1.農業はトータルフードシステム
 私は農業はトータルフードシステムの一環であると思っています.生産、加工、流通、消費、これを一貫して繋いでいかないと農業は成り立たない。消費サイドは、物がどうやって作られているなどという生産のことを何にも知らないし、農業生産サイド、流通サイドもバラバラです.流通サイドも物を右から左に流すだけで正しい情報を何も流していない。日本の食糧はどうなるのか、そこから我々は考えなければならないと思っているのです。
2.なぜ取り残された北海道産業
 その良い例が北海道120年間の開拓の歴史です。昔北海道は、絶世の美女だったのです。男どもが争って金を貢いでくれました。北海道には北洋漁業があり、炭坑があり、造船、鉄鋼、重厚長大な産業が賑わっていたのです.明治、大正の頃の北海道農業は世界的な競争力を持っていたのです。エンドウや金時豆がどんどん売れて成金まで生まれたのです。第1次世界大戦が終わった後、アメリカは日本の金時豆やエンドウに対して100%の関税をかけるほどでした。北海道農業は、きちんと国際競争力を持っていたのです。北海道の大豆はそのころ世界で最高水準の品質と言われていました。どんどん売れていたのですが、その頃から国が、北海道を日本の国内植民地と規定して、原料供給基地と決めたのです。農産物買い付け令で、大豆を買い付けし、本州のキッコーマン、ヤマサ等々いろんな醤油会社、味噌会社に高い債段で売りつけます。北海道には、産業育成という名目でその払い下げ原価以下で安く渡したのです。高い大豆を売りつけられた本州の企業は、付加価値の付く味噌、醤油を作ろうとしたのです。そうして、味噌や醤油屋から発酵工業が発展し、今は医薬品を作る会社まで出てきました。それが産業集積、ノウハウの集積だったのです。安い大豆を使って商売していた北海道の会社は、そういう知恵がまわらず廃れてしまった。明治の頃は、北海道には味噌醤油会社が118社あったのですが、今はなんと15社しかない。これが悲しいことですが現実なのです。
3.新潟県と北海道の差
 昭和20年代、あのころの日本の96%位の人たちは腹一杯ご飯を食べることを願っていたと思います。そして農業の目的は間違いなくとることでした。目方がとれて寒さに強い病気に強い品種が正義でした。そのころ東の横綱、北海道のネコまたぎ米、西の横綱、新海の鳥またぎ米が美味しくないお米の横綱として番をはっていたのです。ところが昭和31年、新潟はすでに時の流れを読み、米は美味しくないと売れない時代が来ると判断しました。官民あげて良質米生産に取りかかったのです。誰も見向きもしなかったコシヒカリ、体が弱くて背が高い、足も長く現代娘。そして、肥料をやると倒れてしまう。少しも良い形質がないのです。ところが、新潟の人たちがこのおいしさに惚れたのです。いやがる農家を説得して県の奨励品種として植えた。意識改革をし、田中角栄さんの力を借りながら、15年間血の汗を流したのです。そして、15年経ったときにコシヒカリ大国になっていたのです。東京でも大阪でも名古屋でも、新潟のコシヒカリを高いお金を払ってでも買います。だから、減反政策が始まったとき、割り当てられたのは4%です。その時に北海道には40数%の減反面積が割り当てられました。これは、時代の変化を読み切った新潟と、読めなかった北海道の差なのです。農政部、中央会やホクレン、農業試験場の責任なのです。
4.きららをどう売るか?
 ご飯お茶碗一膳の中3480粒のご飯が入っています。1升のお米を炊くと魚沼産のコシヒカリは、220から223グラム、きららは残念ながら、230グラムを越えます。一般的に釜太りの大きい米ほど美味しくないと言われています。しかし、これからは変わります。今私たちが食べているお米の68kg中23kgがご飯として売り買いされています。後5年経ったら米で売り買いされている量と、ご飯で売り買いされている量が同じになります。10年後の農家はご飯作りのプロでないと生き残っていけません。その時に、同じおいしさでの米で2.4倍のものと2.6倍のものではどちらが儲かりますか。炊き上げボリュームが大きい方が儲かりますよ。これからは、ご飯として考えていったときには今までの家庭の炊飯器の条件と全然違うお米を考えなければ駄目です。こういう時代の変化を今私たちが感じ取って10年後の研究を始めて行かなきゃ駄目なのです。また、無洗早炊き米ってご存じですか。無洗米は外食産業中心に20万トン取り引きされています。今これが一般消費者に入り始めました。パックの中に150グラム入っていて、「独身貴族」と書いてあります。東京のOLの方が仕事帰りにこれを二つ三つ買って帰ります。そして、すぐ炊飯器に入れて水入れてボタンを押します。炊けている間に化粧を落とし、素頻になってほっとしたときにはご飯が炊け上がっている。これは、150グラムで200円です。そしたら10キロいくらになりますか。これは北海道のきららを使っているのです。この儲けは北海道の農家に入っていないのです。全部、知恵を出した人の物になっているのです。これが技術、特許になっています。特許でガードしながら米産業が伸びて来ているのです。そのときに日本で一番米を作っている北海道、何もそういうことやっていないじゃないですか。
5.研究員の教育とは
 私は研究員を、蟻の時代、魚の時代、鳥の時代、そのように教育してきたつもりです。大学を出て試験場に入ります。大体、30までは蟻の時代で、圃場に毎日送り出します。あの圃場に財産が落ちているからきちんと見てこい。そして、自分の数字を一生懸命貯める、そういう知識と経験とデーターを集める時代。そして、30才になると研修に出します。隣そのまた隣の人が何をやっているかを知って手をつないでいく。そしてこのころから学会活動を活発にやらせるのです。そして、34、5になったら今度は鳥の時代。上から空間的に全体を見られるようにする。40になったら自分なりの農業観、哲学を持っているか持っていないか、そこを抜擢するか否かのポイントにしています。人間はそうやって育てて教育していかないと駄目。それはどの企業だって同じだと思います。技術は、どんな高等なことをやっても、相手が理解して使ってくれなければ、やっていないことと同じです。そういうのは自己満足に過ぎない。試験場の技術なんて特にそうです。農家あるいは企業の方が理解してやって下さって初めて我々がやってきたことが役に立つのです。
6.外見形質、流通形質、加工形質、基本形質どれが大事?
 物の善し悪し、点産物は四つのポイントで言います。第一は、見栄え、外見形質。たとえば大根が曲がっていますと市場規格外で出荷できません。これに何とか付加価値付けるのが実は加工サイドの仕事です。その次は流通形質と言って、ロットの揃い、日持ちが良いか悪いか。3番目に、最近大きなウェイトを占めるようになってきた加工適性です。今の野菜類農産物の半分以上が加工流通なのです。そこは生食用の条件とは全然違います。最後に一般消費者が求めているのは基本形質と言って、食べておいしくて体に良くて安全か。全部が、絶対的に良い物など無いのです。良い悪いというのは地域によっても立場によっても違う。市場の人は、外見形質と流通形質で品物を選びますが、加工業者は外見などは関係ありません。一般消費者は食べておいしくて体に良くて安全、基本特性のところが問題になるのです。それを何か勘違いして、誰にでも良い物があると思っていると大間違い。相手の求めている物を提供したときに初めて良い物なのです。相手の求めている物を知った上で提供していく。これが、私は商いの第一歩、原点だと思います。そのあたりが北海道にはないのです。この30年間で食がどんなに変わったか。良いか悪いか別にして、食が変わると、食に関わる食品産業も、農業も、流通も全部変わらざるを得ないんです。そして、私たちが本当に農業を守ろうと思ったら、食のあり方そのものに提言をしていかなければだめです。
7.ISOPPの取り組み
 ISOPPという事業体ができました。32の企業が20万ずつ金を出し合いました。そして、56人の農家が参画しました。良家の負担は確か4,5万です。それから通産省からも助成金を入れてトータルで1000万になりました。農家の方が、過去6年間の土作り、これを小学校の履歴書として登録する。それから、過去3年間の化学肥料、有機肥料の使い方を中学校の履歴書として登録する、過去3年間の薬の使い方防御歴を登最する、これを高校の履歴書として登録する。これをつけて直ぐそばにいる食品メーカーに渡す。食品メーカーさんはこのクリーンな農産物を化学薬品や食品添加物を使わないで特色のある加工品にしましょう。これが大学の履歴書となります。履歴書付きで流通させるということです。このIOPPというのはISO14000、9000、8000このシリーズを地域、企業でとるのを目標にしています。そしてHACCPを取ろうとしていますので、この二つの組み合わせでISOPPと言っています。今や農産物にすべて情報をつけて出せるようになった。それが可能になったのがIT革命なんです。たとえば、事前にE−mailで情報を流して、このメロンはこの糖度でいくらという情報をバイヤーに流してやります。そこで、バイヤーはこのバーコードのメロンはどうやってできたかを調べると、農家の顔、圃場、履歴書がずっと出てくる。これが品質保証です。これがイソップで徹底的にやっていこうとしている新しい流通です。これは生産流通消費まで、奥様の口元まで私たちは農業をトータルフードシステムとして考えて運んでいく仕組みを考える。このイソップという会社のおもしろいところはソフト会社の社長さんが代表なのです。異業種交流なのですね。3年間通っていてやっと出来上がったのですが、今こういうおもしろい動きが北海道の中に出てきた。このあたりが発想の転換なのです。
8.発想の転換から生まれたクリーン農業
 泣いている短所は、切り口変えたら長所になるのです。これをやるのが技術開発なのです。北海道はいつも泣いている厳しい気象条件、私たちは4年か6年に一回冷害になります。この厳しい気象条件を泣き言に使っていました。そうじゃなく、この厳しい気象条件を財産にしよう、そうやってみると単純なのです。北海道の厳しい気象条件は、作物や人間に厳しいだけでなく、虫や病気にも厳しい小菜蛾という農薬の効きにくい害虫は北海道で年間5回発生します。岩手に行くと7回、北関東で9回、大阪では12回も発生します。だから北海道はおしなべて農薬の使用量は府県の半分くらいで済んでいるのです。それなら、これが一番の特色です。安心安全を求めているお客様に安心安全をお届けする。この土俵で勝負をかける限り北海道が生き残る。それじゃ、これをもっと進めようと言うことで考えたのがクリーン農業です。農薬、化学肥料の3割削減。そして、安心、安全、おいしさ3ポイントの向上。新しく新得から来た中央農試の場長が私を抜擢して企画情報室長にしてクリーン農業を宣伝させたのです。そうしたら、知事室長がこれを行政レベルで引き上げるには4年以上かかるから、今年は知事選だから知事の公約に掲げると言ってくれました。そして、人と地球にやさしいクリーン農業、これは横路前北海道知事の選挙公約になりました。
9.リーダーの条件とは
 世の中10人集まって、みんながいい仕事だというようなものを5年かかってやっても、終わったときには腐っています。せいぜい10人中1人か2人です。そういうものを読みとる先見性がリーダーには無いとだめです。リーダーが仲良しクラブの会長になっているようなそういう社会だから発展しないのです。リーダーが先見性を持って決断して、これだ!駄目なら俺が責任取る、それくらいの人がいないからいっまで経っても発展しないのです。ちなみに、先ほどクリーン農業を取り上げてくれた知事室長さんは今の堀知事です。


講演する相馬教授