バイオインダストリー振興事業

北海道の助成、JBA日本バイオインダストリー協会の支援事業


−研究交流事業、地域バイオ育成推進事業−
 地域バイオ育成推進事業
 地域間のネットワークの形勢を推進し、地域のバイオ産業の均衡ある発展に寄与するため、道内各地域のバイオ振興団体からなる実行委員会により、地域が必要としている地域バイオ育成推進講座など各種バイオ産業の振興事業を実施しています。


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 「地域バイオ育成講座in旭川」のご報告

【日時】平成17年11月4日(金) 13:30〜17:00
【場所】旭川グランドホテル(旭川市6条通9丁目)
【プログラム】
13:30〜13:35 開会 
NPO北海道バイオ産業振興協会会長   冨田 房男
13:35〜14:35 講演1
「食品としてのきのこ―有用成分の機能性を探る―」
北見工業大学化学システム工学科教授  青山 政和 氏
14:35〜15:05 講演2
「健康食品に求められること」
株式会社スリービー 取締役  石田 真己 氏
15:15〜16:15 講演3「食品の健康・保健機能評価」
旭川医科大学健康科学講座非常勤講師  妹尾 秀雄 氏
16:15〜16:55 意見交換

 同講座は、非常に多数の参加者を迎え、大変盛況で終わりました。また、講演者の皆様の御講演がとても内容のあるものでしたので、講演後の意見交換も熱の籠もったものになりました。この報告で、その一部でも御紹介できれば幸いです。
(HOBIA企画運営委員:富永一哉)

「食品としてのきのこ―有用成分の機能性を探る―」
北見工業大学化学システム工学科教授 青山 政和 氏

 食生活の急速な欧米化により、生活習慣病が増えている。こうした問題点と、大学の研究室でのきのこに関しての研究について話す。
 日本は先進国型の人口構成を持つが、高い医療水準に関わらず少子化が進んでいる。この構成は、2050年には70歳代が突出している形になる。平均寿命や新生児死亡率の面から見ると、医療の質は非常に高いと言える。非小細胞肺ガンの5年延命率からも、同じようなことが言える。医療費の先進国との比較ではコストが安く、比較的簡単に医療を受けることができる。加齢に伴いガンと認知症が大きな問題となり、生命医維持のコストと医療費の増大が問題となる。
 我が国の成人の健康状態は極めて深刻な状態で、3人に1人は生活習慣病である。これに対して、所謂健康食品は効果があると考えられていて、今や1兆円産業として消費も増えている。こうした食品の原料として、北海道の天然資源は非常に有用である。その重要な成分としてきのこがあり、食物繊維や多糖類などがその有効成分として挙げられる。きのこには、カリウムを代表とするミネラルとB群ビタミンが多く、免疫機能賦活効果もある。こうした効果は、成分中のグルカンによるものと考えられている。
シイタケから取れるレンチナンには、ガンの進行を抑える作用が知られている。こうした効果は多くのきのこに見られ、アガリクスなどは良く話題になる。ヤマブシタケには神経細胞の成長因子があり、痴呆予防効果がある。糖尿病軽減効果もあり、生活習慣病予防に役立ちそうである。マイタケにもβグルカンがあり、抗腫瘍効果や血圧降下作用が知られている。マンネンタケには非常に多くの機能が知られており、多種多様な機能性が期待される。カバノアナタケは科学的解明より、話題性が先行している様な気がする。
きのこ(コウタケ、マイタケ、マンネンタケ)の薬理活性について道立衛生研究所と共にスクリーニングをしたが、ACE阻害活性は評価ができた。コウタケからはいくつかの糖アルコールが見つかったが、合成薬よりは効力が弱い。しかし、機序としては競争阻害ではないかと思われる。マンネンタケにおける機能成分には、糖アルコールとまだ同定できていない非競争阻害を示す強力な成分がありそうである。
最後に、ガンを宣告されてから健康食品を用いても効果は無い。安価な食品としてきのこを食べることではるかに効果があることを理解してほしい。

「健康食品に求められること」
株式会社スリービー 取締役  石田 真己 氏

 当社の経営理念は、食を通して健康や地域社会に貢献していくことにある。 健康食品の定義は、一般食品に分類され、健康人に向けた食品と言える。トクホも含む健康食品市場は2004年で1.9兆円に達している。年齢階層が高くなると支出が増える傾向が見られる。
 当社では、20年来タモギダケを生産してきた。道立林産試と協力して、生産と機能成分の研究も続けてきた。その裏には、エビデンスを持った効果の表現をしたいと考えたからである。タモギダケの生産は、衛生管理が施された培養室で、ロボットを使い人工培養している。製品としては、生と水煮、熱水抽出物の製品化の3つの方向で出荷していて、道内主要スーパーと首都圏スーパー向けに販売している。水煮製品は、学校給食や自衛隊給食などに出している。タモギダケはシメジなどと比べると後発商品になるので、旨味成分や食品の安全性を表現して、売り込みをしている。
 食材として熱水抽出物を製品化しており、同時に健康食品としても製品化している。機能性評価は、札幌医科大学と協力している。また、人介入試験を東札幌病院と協力して進めている。健康食品に求められるのは、いくつかの要素がある。安全であり、効果が実感できて、求め易いことなどである。こうして要求を満たす商品を作っていこうとしている。
 最近話題になったマジックスパイスと協力したスープカレーの販売は、年商3億を目指す。このほど、今年度の農林水産大臣賞も受賞させて頂いた。味の素も巨大市場である「未病」を狙うとしており、更に「テーラーメード食品」は注目されてきたと思う。我が社は小さな企業だが、こうした市場を目指そうと考えている。

【質問】学会発表のテーマを教えてほしい。病院との共同研究の結果はいつ頃分かるか?
【応答】:要旨の中に一部書いてある。結果は、希望者のみで検討しているため、今のところ良い結果を得ているが、nを20とする予定なので、もう少し時間が掛かる。

「食品の健康・保健機能評価」
旭川医科大学健康科学講座非常勤講師 妹尾 秀雄 氏

 現在実験中のものがあるが、データがまだ出ていないのでお話しを控えさせて頂く。きのこで記憶にある話として、北見の保健所長をしていたときに、タマゴタケモドキの食中毒事件を思い出す。食べてしまうと、治療の方法が無くて犠牲者を出した事例だが、その後に抗ガン剤抽出の可能性も検討したことを思い出す。痴呆症に関して、ドクササゴの中毒は末梢が非常に暑くなる症状を示し、痴呆改善薬の可能性も検討した。保健所できのこの相談会をすると、採った場所をなかなか教えてくれない。危険を感じても、場所が特定できなくて困ったことがある。
 知り合いが肺ガンにかかり、かなり広がっている状態だったため、放射線治療と抗ガン剤治療のみにした。免疫賦活活性を使った方法しか無かったが、結果的に手遅れとなった。病気になってからでは遅く、普段から機能性を持つ食品を摂ってもらうことが重要だと思う。食品関連の研究所に勤めたこともあり、食と健康を繋ぐようなベンチャーを立ち上げる予定である。来年から、起業に関しての規制が緩和されるので、現在準備中である。
 目標は2つ有り、その1つは便秘の改善についての効果のある食品を検証する。食品加工研究センターと協力して、乳酸菌を含む食品で腸内細菌の菌叢検査や血液検査を行い、明らかにしようとしている。また、東川町の発芽玄米の効果について検討を開始しており、12名の被験者で調べているが、まだデータとしては不十分である。国から予算をいただいて、3年で4億円程度の予算で検討したいと思っている。
 もう一つのプロジェクトは、温泉の健康効果について明らかにしたいと思っている。定期的な入浴と同時に食事の制御もして、医学的な知見を得たいと思っている。都市エリア事業として、旭川エリアで検討を進めたいと思っている。温泉は天人峡温泉と協力し、皮膚科の病院も巻き込んで研究したいと思っている。12月から試行実験を開始する予定で、数名の人で試験をする予定である。既に、個人的に糖尿病の湯治をしている人も多いようで、温泉側から食事に関して協力を求められている。
 年齢構成の高齢化の話があったが、これからは2度目3度目の仕事をする時期が来る。自分自身も直腸にポリープが見つかり、一部ガン化していたが、取ってしまえば健康体である。早くに発見したり、食事で抑えたりするとガンでさえ問題はない。
 最近、プロバイオティクスが話題になっているが、腸内細菌は種類も量も多く、様々な疾病に関して関係が分かってきている。今後検討が予定されている項目も多く、非常に興味深い。また、プレバイオティクスと言う概念も広がってきており、菌体を活性化する成分を腸内に導入することにより菌叢の改善を図る方法も注目されている。その機序に関しても、かなりのところが分かってきている。また、同じ試験をしていても、家族間でも違った反応が現れることも情報が出てきている。食生活も含めた統合医療が必要な時代で、「ピンピンころり」を目指したいと思っている。こうした研究に関して、旭川医大と旭川地域をベースとした検討を進めていくので、機会がありましたら皆様にも御協力頂きたいと思う。

【意見交換】
冨田:話したりなかったことや聞きたいことなど、話を進めていきたいと思う。
菊池(林試):自分たちも都市エリアを考えているが、どの様なイメージを考えているか?
妹尾:食加研の所長として都市エリア事業を見ており、今までの研究開発と異なり事業化を重視していると思う。インプットしたお金以上のアウトプットが必要だと思う。実際には、医学部を巻き込んだ評価を行うことにしており、また林産試の所長ともお話しをしている。木工品の安全性等に関しても取り組みが可能なら、検討してもらいたい。
冨田:それぞれの地域で代表する研究機関などが必要だと思うが、旭川ではどこになるか?
妹尾:市の高度化センターになると思う。きのこに関しても興味はあり、愛別町の担当者とも話している。
冨田:地域としてどの様に考えるか?
木村(旭川バイオテクノロジー推進懇話会会長):地域としては上川百万石と呼び、米が中心となっている。こちらは農業試験場が中心だが、林試を中心とした住宅材や木工業も重要である。また、温泉などの観光も重要なので、妹尾先生にはさらなる御協力を願いたい。
冨田:βグルカンは注目されているが、林試などの研究も含めて新たなきのこの種類はないか?
青山:βグルカンについては研究者によりデータに差があるので、もう一度研究を整理すべきだと思う。既に知られているきのこについて、成分や機能を再検討すべきだろう。
石田:自社ではタモギダケのみについて検討しているわけだが、企業としては商品が売れなければならない。他の商品との比較優位が必要になるので、効果を現す量などのデータを明らかにして頂きたいと思う。
冨田:旭川で都市エリアプロジェクトがスタートするとしたなら、他の地域と比べて大きな違いがあると思う。それは、医師が中心となって医学的見地からの研究ができることだと思うが、旭医大はどれくらい協力してくれるのか?
妹尾:ほぼ全ての教授が協力してくれる状態である。
冨田:やはりマウスでは限界があるので、この状態を青山教授はどの様に考えるか?
青山:試験管や動物実験には明らかに限界があり、医師の協力は魅力がある。協力してくれる医師は少ないと思うので、是非協力を取れるような仕組みがあると助かる。
妹尾:確かに、教授は忙しい。民間人という立場になって、調整を図ればお役に立てると思った。
冨田:今A-HIT Bioと言うベンチャーも経営しているが、地域結集型の研究予算をもらってDFAVの開発に成功し、腸内細菌の検討には自信がある。例えば、DFAVに関して検討するなら、どれくらいの被験者が必要か?
妹尾:便秘に関して検討した例はほとんど無く、かなりの老健施設などで協力を得られると思われる。こうした情報はまだ検討段階なので、実態が掴めないだけだ。例えば、温泉効果について調べようとしていて、既に湯治目的の多くの利用者があり、費用負担や医学検査の魅力によっては協力を得やすい。一人一人の人に御協力いただけば、意外に簡単に協力の輪が広がるものと思われるし、手応えがある。
会場から:3ヵ月程介護研修を受けた経験から、青山先生のヤマブシタケのデータはADSLのレベルに改善を見られたものと思う。スリービーのデータで、高齢者が増えると生活習慣病の改善が必要になるが、食品自体を作ってもらいたい。
石田:当社はあくまでもタモギダケの生産者で、健康食品は5年の実績しかない。しかし、未病の人たちを対象とした日々の健康や老化阻止に役立つ食事や献立提案をできればと考えている。そのために、効能に関しての評価を明らかにしていきたいと思う。
青山:健康に対する効果は、もしかしたら施設や病院の雰囲気が影響しているのかも知れない。もしそうなら、健康に関する検討は、メンタルについても考える人間科学の面からの検討も必要ではないかと思う。
冨田:東川町の温泉に出かける人たちは、ある意味健康で定期的に出かけていると思う。そうした人たちが、この地域にそれ程いるのだろうか?また、医学的データは厳密性を求められる。本当に対応できるのだろうか?
妹尾:大丈夫だろうと思っている。トクホを取るためには億単位のお金が掛かる。まずは、小さな検討から入るが、補助金などでパワーアップしていきたいと考えている。
冨田:地域の育成と考えると、今回は有意義な会になったのではないかと思う。最後に、講師の皆様に拍手をお願いしたい。

 HOBIA〜近畿バイオインダストリー振興会議交流事業の開催報告

平成17年7月11日「オホーツクのバイオ素材の可能性〜生産者と利用者を結ぶ懇話会」と題して、近畿バイオインダストリーとの交流事業が行われましたのでご報告いたします。
【講演】
「タイトル(月曜に事務局が記入します)」
北見工業大学教授 山岸 喬 氏
北海道の食品素材と、それに関する研究について紹介する。機能性食品は非常に大きな市場になりつつある。食品の機能性評価で重要なことは、人で効くことである。生化学者は細胞や酵素レベルで、化学者は成分分析から始めるが、定量分析や動物試験、複合的な効果の検討が必要になる。自分は、伝統的な食履歴や疫学調査などのデータを重視していて、こうしたことをベースに研究を進めている。これからは、遺伝子レベルの研究が重要になると思われる。例えば、食品の焦げの中にあるベンツピレンの発ガン性などの研究が好例である。テーラーメイド食品なども遺伝子レベルの研究と関連しており、糖尿病に関する遺伝子発現の研究でもよく知られている。最近注目されている研究では、食によってRNAの発現が変化するという研究がある。
 私が行った、エスラジオール様の成分についての研究では、DNAチップで検討した結果、アポトーシスとエストラジオールの受容体関連遺伝子に変化があった。日米の平均コレステロール値の変化について調べると、食生活の変化で値が接近している。また、日本人の死因の変化も食生活の変化が影響している。近年、前立腺ガンと乳ガンが急増しているが、これも食習慣と関連している。
 過去の食経験を探ってみると、江戸時代に蝦夷地警護のために来道した仙台藩士に同行していた医師の高屋養庵は、アイヌネギの効用について書き残している。松浦武史郎もアイヌ人の食について触れていて、かなりの栽培作物を作っていて、ルタバガ(スウェーデン蕪)をアイヌが栽培していたことが書かれている。岩谷省達は『胡地養生考』、ハマナスを煮てお茶のように飲むと良いことをアイヌが知っていると書いている。何故かいくら加熱してもVCが減らないことが分かり、VCがポリフェノール類との重合体を作っているために、加熱しても安定であることが分かった。また、便の臭いや老人臭の抑制効果もあることが分かった。
北見及び周辺地域を見ると、ソバは2,000年以上古い遺跡の中で見つかっている。ゴボウも、かなり早くに北海道に入ってきている。ヤーコンやケールなどの新しい植物も育てられている。ナガイモも健康食品の原料として、オホーツク地域から台湾などに輸出されている。ハトムギは、農業試験場で寒さに強い新品種が育種された。チコリも、端野町で栽培している。ベニバナもおそらく油の原料として導入されて、道内の遺跡から見つかっている。ルバーブは宣教師によって、古い時代に北海道に伝えられた。
ホタテの中腸腺は、ミネラルが豊富である。その外套膜は外部から入ってくる成分を漉し取る器官だが、そこに金属と非常に親和性の強い成分を見つけて、特許を取った。昆布については随分前から検討しており、水に溶けやすく加工した「ソルギン」はコレステロールの排泄を助ける機能を持つ特定保健用食品として、大正製薬では「コレスケア」、カイゲンでは「コレカット」の商標で発売している。捨てられていた昆布の仮根(ガニアシ)にはカリウムが豊富で、ナトリウムが少なくカリウムや他のミネラルも豊富なガニアシを使用した減塩塩を開発した。この仮根には、抗腫瘍活性もあることが分かった。
アメリカでマーケットを訪れた際に、非常に多種類のタマネギに驚いた。道の農業試験場などでは、育種に努めている。光を当てることにより、フラボン含量等の成分が変化する。当てる光の波長によって変化する成分が異なり、これにより新たな特許を出した。(文責:富永一哉 企画運営委員)

「不凍タンパク質含有大根エキスの製造とその応用性」
河原秀久:関西大学工学部助教授、(有)ビッグワールド取締役

世の中に身近にある事象やものを使って研究されている学舎らしくない先生と座長が紹介されました。
自然界では、低温から守るシステムがある。例えば、アメリカアカガエルは、細胞表面を瞬時に氷で覆い(氷核タンパク)低温から身を守る。
氷結晶制御とは?2つの方法がある。(1)積極的に氷を作る。瞬時に凍らせる。先に凍らせて、他を保護する。(2)「抗氷核」凍らせない。低温になっても凍らない(過冷却温度を下げる)(3)この他にも、凍結保護多糖(酵母の中に見つけた)もある。
不凍タンパク質があると氷の結晶形が変わる。6角形、菱形針状結晶。種々の生物に不凍タンパク質が、あることが判ってきた。タンパク質としての共通点はない。共通なのは、氷の4.5Aの格子画のところにスレオニン残基が、あてはまる構造であること。
すぐ思いつくのは氷菓子。世界的に興味を持たれおり、ヒルスバリー(米国)、ユニリーバ(ヨーロッパ)なども積極的に技術開発を行っている。冷凍貯蔵中の食品の物理的変化で、最も嫌われるのは、氷の再結晶化。解凍時に組織が壊れテクスチャーが極端に悪くなる。

<不凍タンパク質の効果>
【例1】魚(ワカサギ)由来の不凍タンパク質を野菜にしみこませれ(0.5μg/ml)ば、凍結しても組織が保持された。【例2】うどんに添加する場合では、最適濃度は10μg/mlであった。うどんに不凍タンパクを加えると、ねかし行程が不要になる。ねかさなくても生地がねかした状態となり製造時間が短縮された。【例3】不凍タンパク質を大豆タンパク質に加えると、可溶化するタンパク質が増加した。理由は研究中だが、膜の安定化と関係するか?豆腐製造に使うと。何もしないと解凍すると高野豆腐状態。不凍タンパク質を入れると解凍しても密な質が保てた。
野菜にも不凍タンパク質が含まれることを見つけ、すべて特許化した。キャベツ、ブロッコリーなどアブラナ科植物に発見。中でも大根は多いことが判った。しかも大根の葉は、廃棄物。大根葉1Kgから不凍タンパク質エキス約1gが取れる。これは、7.5トンのうどんに使える。製造企画すると、週2トンの大根を処理すると不凍タンパク質エキスを月産80Kg製造できる。グラム単価2万円とすると月売上げ16億円となる。用途もお弁当やチルド品など市場拡大の可能性は高い。

【質疑応答より】不凍タンパク質は、種々ある。アブラナ科からは、1万D以下の低分子のものも見つかっている。北海道の産総研で行われているのとは、全く違う。酵素活性としては、キチナーゼがあるが、ストレスタンパク質同じキチナーゼでも構造は違う。肉に与えても分解など起こさない。低温にするとタンパク合成が、誘導される。サルチル酸でも誘導がかかることを発見した。大根葉からの製造は、精製を行っていない。有効成分のタンパク質は、10%以下の含量である。
(文責:浅野行蔵 企画運営副委員長)

【質疑】
Q:オホーツク地域で、今後有望な食資源は何か?
A:かなりの植物がどの地域でも栽培可能なので、何でもできると思う。重要なのは、素材から発見した効用を地域で特許化して行くことである。
Q:ケールを生産する場合、農薬は必要ないか?
A:アブラナ科の植物は虫が付きやすいので、ケールは若干強い植物だが、農薬は必須である。
Q:チコリの話でイヌリンという名前があったが、どの様な効果があるか?
A:イヌリンは果糖が高分子になったものだが、人は消化ができないので食物繊維となり、血糖値の抑制に繋がり、善玉の腸内細菌を育てる。軟白チコリは根を捨ててしまうが、これを焙煎してチコリ・コーヒーとしている。また、根を微生物処理して、カルシウムの吸収を助けるDFAVができることが分かっている。チコリは病虫害に抵抗性があり、農薬を使わない栽培ができる。(西村先生の回答)
Q:タマネギに対する光照射で、ケルセチンができると思うが、配糖体で入っているのか?アグリコンで入っているのか?
A:両方とも増える。薄皮の部分が光の吸収帯になっているが、これを取り除いて光を当てている。そうすると、成分が劇的に変化する。

【パネルディスカッション】
(パネリスト、講師のほか、会場からも発言あり)
西村座長:まずは、パネリストの御紹介をする。各パネリストから、一言御自分のお仕事を御紹介願いたい。
奥山氏:白滝村で建設業をしている。西村先生に研究開発担当取締役をしてもらっている有限会社の大地の香では、農家が緑肥としているヒマワリを利用したいと思った。そこで、花粉から機能性食品を作ろうとした。技術開発は昨年度までにほぼ終わり、東海大学から出ている論文において生活習慣病に効果があるとされた。こうした開発努力が、農家の収益と農業振興に役立つことを願っている。私事ながら、西村先生に健康食品を扱う人は自分も健康である必要があると言われ、大減量をした。
渡辺氏:金印は、ワサビの製造会社である。当社は本社が名古屋にあるが、西洋ワサビの原料の栽培適地を求めて北海道に工場を建設した。現在、契約農家の土地は150町歩に達する。こちらでは農業問題にも取り組み、ジャガイモのソウカ病などについても興味を持った。ワサビの製造残渣の堆肥化にも取り組み、発酵技術により畑に還元することができた。これにソウカ病の抑制効果があり、多少とも地域貢献ができたのではないかと思っている
太田氏:道立オホーツク圏地域食品加工技術センターの事業について、ダウンストリームの支援という切り口で紹介する。バイオに関する研究としては、酵素加工技術開発を行ってきた。テーマとしては、麹と乳酸菌の技術開発を行ってきた。素材としては、タマネギや海産物を扱ってきた。これによって、商品化にも成功し、特許も取得できた。この中では、研修生や研究会が重要な役目を果たしてきた。今までに、29品目の商品化に成功している。地域アグリビジネスへの支援は、試験研究や共同研究・受託研究を進めていて、H16で受託件数は6件、H17は10件となっている。
角田氏:北見市で農業をしている。農園自体は息子に代を譲っており、(有)ハッピーファームという事業を現在は主宰している。主として、ガーデニング用の土を販売している。ブルーベリーを安く作れるシステムがないかという話があり、これも検討している。ハマナスの栽培にも興味があるが、これはまだ手を付けていない。人件費の安い地域とも競争できる生産システム作りを模索しているので、アイディアがあれば御紹介願いたい。
小野寺氏:常呂町で農業をしている。当初はあまり難しいことは考えていなかったが、ウィルスフリー苗やマイクロチューバの導入を始めている。地場品種を使い、加工用のニンニクを作り始めたが、これにもバイオ技術を導入できないかと考えている。
西村座長:国際競争の中に乗り出していく中、技術開発や販路開拓の必要がある。金印の渡辺さんに伺うが、堆肥ビジネスはまだ大きなものではないのか。残渣は、全て工場から出るものか?
渡辺氏:まだ試験的で、工場から出るいろいろな原料残渣が入っている。
西村座長:角田さんが扱う堆肥はどの様なものか?
角田氏:古い牛の敷きワラを使っているが、なかなか品質の調整に苦労している。花に良いものが望まれているが、ニーズに対応するのは難しい。
西村座長:北海道では結構堆肥が出回っていて、海産物を利用したものもある。栄養価等から見て、こうしたものは効果があるのだろうか?
角田氏:会場にいらっしゃっている菊池さんと言う方がこの分野に詳しく、海草類の効果があると思うが、まだ検討段階である。金印が製造した堆肥も検討しているが、少々値段が高いと思っている。
渡辺氏:畑作産品で、機械化が進んでいる分野に利用するには、我々の堆肥は高いだろうと思う。
西村座長:事業化と言う切り口からこうしたアグリバイオビジネス事業を見ると、どう思うか?
奥山氏:クラスター連携を通して、地域の産物の加工・事業化に取り組んでいる。産学官の連携で進めているが、金融の協力が必要と考えている。クラスターの仲間にも、幾つかの金融機関が参加している。また、大学や公的機関との協力も重要である。
西村座長:西オホーツクはなかなか進んでいると思う。民意を汲んだ開発も必要だろう。公的支援を取ることも必要と思うが、食品加工技術センターではどうしているか?
太田氏:実際、科研費を今年取得した。こうした努力はあるが、製品開発には大きな金額でなくとも良いが、大事なところで若干の費用を出してもらえると助かる。
西村座長:山岸先生に、そうしたプロジェクトを持ってくる面で、アドバイスをお願いしたい。
山岸先生:外部資金導入には、成果が要求される。昆布についてはカイゲン、ハマナスの研究については協和発酵、タマネギの技術に関しては大塚食品の協力を得ている。更に、販売部門の協力を得られるともっと助かる面がある。ベンチャーもいろいろ立ち上げており、僅かな工夫で売れるものを作ることができることが分かってきた。
西村座長:健康に関しての研究は、人を介した検証を行っていかなければならない。マーケッティングを行い、売価を明らかにして製品開発をする必要もある。原料についても、そうして探していかなければならない。ビッグワールドの企業戦略について教えてほしい。
河原先生:公的支援を受けたが、マーケッティングと汎用性を問われた。バイプロダクトの利用も考える必要もある。コンポスト化は、使う側の農家の意見が重要なので、自分たちは諦めた。大学の研究室では、微生物を利用した方法が主流だが、ミミズを生かすと植物病原菌に対する効果があることが分かった。シマミミズを利用しているが、これ自体が釣りの餌になり、同時に良い肥料ができればと思っている。
西村座長:小野寺さんに伺いたいが、独自のニンニクの種というのはどの様なものか?
小野寺氏:割ってみると、果肉がピンクで、辛味があり生食用には向かないが、加工用には問題がないと思われる。今年度から本格生産に入るが、加工業者と忌憚のない意見交換が製品化に役立った。特別栽培なので難しいところもあるが、労働生産性も上げることができたと思っている。地種なので、ウィルスフリー化を是非したいと思っている。バレイショの種も、マイクロチューバを利用した、自農場での一貫生産を目指したいと思っている。加工業者とも協力して、消費者に一歩でも近付いて行きたいと思う。
西村座長:タマネギについては関西方面の嗜好と北海道とは大夫違う。辛味が強いのは関西では嫌われるが、その分生理活性が強い。こうしたことに注目する必要があるだろう。
浅野氏:消費者が見えないと言うことを話している人がいるが、自分自身も消費者なのに何故なのだろうか?生産者としてはコストダウンが必要で、質を上げることも必要だろう。質とは何か、良いものとは何かについて会場からの意見がほしい。
西村座長:ハクランの話があったが、遺伝子組み換えについては小野寺さんどの様に思うか?
小野寺氏:遺伝子組み換えの公聴会に参加したが、安全かどうかばかりに話が向かう。既に、遺伝子組換えが関係する食品が過半数で、表示をしっかりすることが重要だろうと思う。しっかりしたデータもほしいので、道庁にはそうしたことを嘆願書にまとめて提出した。
西村座長:道庁には仕組みをしっかり作ってほしい
と思っており、農業試験場などでも試験研究をしてほしいと思う。
小野寺氏:繰り返すが、僅かでも入っているものについては、必ず表示してほしいと思っている。
西村座長:ウリ類を栽培するときにはネギ類を植えるとフザリウムの防除になるなどの安全な方法がある。こうした方法に加えて、組換え技術も有効なので、研究が発展してほしい。地域食品加工技術センターの厚谷理事長に、財団の今後の方針についてお話し願いたい。
厚谷理事長:健康食品の産業が1兆円産業になるとのことで、消費者の受け止め方や、分かり難い言葉の氾濫などについて考えた。こうしたことを改善していくべきではないかと思っている。所謂、医食同源に立ち返ることが重要で、素材が活かされた美味しい食品を作ることが重要と考える。そうした点から、河原先生のお話は大変参考になった。普通の食事をしていると健康になれる様なものを、地域材料で作ることが目標ではないか。
西村座長:食の多様化が進んでおり、スローフード
やフェアトレードにも携わっているが、そうしたことも地産地消に役立つと思う。
厚谷理事長:北海道庁は食と観光を重視していると言うが、その分野の予算が削られている。こうした問題を注目してほしい。
冨田会長:オホーツク圏でどの様な農業をするのかと言うことが問題だ。また、道庁が予算を削っていることは大問題である。医食同源は大切だが、実際にどの様に効果が出るのかを明らかにしていく必要があろう。こうしたデータを元に、農業政策も考えるべきだ。
西村座長:自分は新幹線構想に反対しているが、同構想は道の負担が5,000億円にもなり、それだけの余裕があるなら食に予算を付けてほしい。
新明先生:北海道の食材には興味があり、よく食べている。また、漢方薬の原料についても興味がある。コンポストに関しては、日本全体のホールで見るとリンと窒素が溢れることになる。輸入食品の傍らで、こうしたものを輸出してはどうかと考えている。
宮井氏:農家に役立つ講演はなかなか無く、特に日本発の農業に役立つ技術開発がない。ほとんど役立つ技術はアメリカ発で、国産の役立つ技術は明治にできたものだったりする。スローフードについても、小さな農家を守ると言う姿勢がない。
西村座長:確かにおかしなところがあり、これからも意見を出していきたい。
(文責:富永一哉 企画運営委員)


北見交流事業開催風景

 地域バイオ育成講座 IN 恵庭 報告

 去る6月24日、恵庭リサーチ・ビジネスパーク視聴覚室において、標記講座「地域に根付くか?花卉産業活性化のための新品種・新技術」が開かれましたので、以下に講演内容についてご報告いたします。

「花卉品種改良におけるバイオテクノロジーの利用」
(社)農林水産先端技術産業振興センター 企画調査部長 橋本 昭栄 氏

 日本の花卉の市場は伸びている。消費量が増加しているのはもちろん、花卉育種から見た統計値も特徴的だ。種苗登録の半数が、花卉である。花卉の特徴は、登録者の1/4が、個人であることだ。種苗法が改正されて、世界的にも権利を主張できる厳しいものとなった。改正種苗法に準じているかどうかは、ラベルのPVPマークを確かめれば判る。種苗法登録されている印である。
 花卉の育種法も日進月歩である。従来は、掛け合わせて次世代の花が咲くまで1年かかっていた。近年は、組織培養を活用して、遺伝子マーカーの解析によって、育種の成功の可否が1週間で判り、次の段階に進める。新品種の送出速度がアップしている。そもそも品種改良と言うことは、新しい形質を表に出すことであり、このことは、すなわち遺伝子の変化があったことを意味している。
 育種には、原種を集める、すなわち遺伝資源を集めるという段階がある。ジャガイモはアンデス、ムギはメソポタミア、大豆は南中国など、我々が利用している作物のほとんどすべてが、海外にその起源を持っている。
新しい遺伝資源を得るために、原種の遺伝の収集を行うことも重要な仕事だ。しかし、近年、カルタヘナ議定書などの植物遺伝資源をめぐる国際条約類が、出てきた。FAOの農業資源条約、UNEPの生物多様性条約など、それぞれ違った主張をしている。規制措置によって、原種の国内への持ち込みには、契約と費用が発生するようになった。しかし、1993年以前の持ち込みは規制されず、大英帝国などで、過去に大量に持ち込まれた植物たちは、既成事実化されてしまった。
 日本でも古くから花卉の育種は、行われてきた。その代表が、ソメイヨシノである。複数の原種細胞のキメラになっているので、木の寿命が、たかだか百年と短い。色変わりがたくさんある朝顔も育種の代表だ。色かわりの突然変異を利用している。
サントリーの植物ビジネスは、お酒の原料である、ブドウ、大麦の育種から始まった。方法としては、重イオンビームが、ある程度ターゲテイングができたので使いやすかった。
 花卉ビジネスを開いたのが、「サフィニア」(ペチュニアの種類)であった。原種を集め直して育種しなおした。値段は、通常の三倍の定価がつけられた。初年度は、さっぱり売れなかった。しかし、つくば万博の年、サフィニアだけが、暑い夏を咲き誇った。大きさも2m50cmと大きくなる。これで一挙に有名になって、高い値段で引っ張りだことなった。元々の原種は、南米のものなので、暑さに強かった。従来品は、その育種の過程で暑さに弱くなっていたのだ。原種は蔓性で、花は小さかったのを大きくした。また、ウイルスフリーは、現在では、当然の技術であり、ELISAによって簡単に検査できる。
 サントリーは、販売戦略にも工夫した。流通を変えた。「市場には出さない」方針で、価格を市場原理には任せなかった。新しい名前を付けてブランド戦略を行った。
 組換え技術を利用した育種は、もともと無い遺伝子を入れるときには、この方法しかない。ウイルス耐性で始めた、ウイルスにやられると一晩で茶色になる。これを防げる技術は、需要が高い。色に関しては、青いバラを求めての育種家の長い歴史があるが、元来持っていない形質(遺伝子産物)は、突然変異や掛け合わせでは、絶対に出来ない。色の生合成系を解析することによって判った。これに10年を要した。花の色と色素を調べた。アントシアンと一連の色は、主に3種の色であった。ペラルゴジニン、デルフィニジン、シアニジンである。ペチュニアは、日本で最初の遺伝子組換え花卉だ。赤紫のサフィニア・ブルーが、全世界に売れている。
 一方、販売的には失敗もかずかす経験している。失敗例としては、ロングライフの花卉で、商品価値がなかった。消費者も販売業者もさほど喜ばなかった。白いトリニアも商品価値がなかった。花が、見栄えしなかったのだ。
青いカーネーション(ムーンダスト)1300万本アメリカで売れている。一方、日本では、100万本程度である。これは、花卉市場の成熟度の違いである。だから消費地に近い、エクアドルで作っている。
 (当日、参加された女性へは、青いカーネーションがプレゼントされた)

「道立農試における花ゆり育種の現状と今後の展望」
北海道中央農業試験場 農産工学部 細胞育種科長   玉掛 秀人 氏

<ゆり生産および育種をめぐる状況> 
 花き市場は約1兆5千億円、70%が法人需要、30%が個人需要。国内の花き粗生産額は約6000億円で近年減少傾向だが、花卉輸入は470億円、やや増加傾向。北海道の花き粗生産額は160億円、このうちゆり切花は栽培面積83haで15億円の売り上げ、北海道の切花で第2位の重要な品目である。ゆりの原種は約100種類といわれ、このうち70種類が百合が原公園(札幌市)に導入されており、一部を公園内で見ることができる。これらはゆり育種の貴重な遺伝資源としての利用が期待できる。また、豪華で香りの強い「カサブランカ」に代表されるオリエンタル・ハイブリッド(以下Hbと表記)の親となったヤマユリ、ササユリ、カノコユリ等の原種は日本の固有種である。ゆりの園芸品種は、イギリス王立園芸協会で9つのグループに分けられている。このうち、オリエンタルHb、アジアティックHb、ロンギフローラムHbの3つのグループの品種が主に栽培されており、その多くはオランダで育成され、球根が輸入されている。北海道での栽培は、オリエンタルHbに偏っている。
 アジアティックHbは、以前日本でも民間育種家を主に育種が盛んに行われ、栽培もされてきたが、現在日本での育種は衰退、オランダでも縮小傾向である。オランダでは、新品種が、毎年たくさん作られている。近年、黄色のオリエンタルと称されるOT−Hbを育成するなど、遠縁種間育種が盛んになっている。オランダでの新品種創生のパワーはすごいもので、消費者のニーズをいち早く捕らえて市場を制覇している。
<北海道での花ゆり育種>
 北海道におけるゆり育種では、民間育種家の藤島昇吉氏が有名で、戦前よりアジアティックHbの品種改良に着手し、「明錦」、「金扇」等多くの品種を育成している。オリエンタルHbでは「白妙」を土屋淳二氏が、また、板垣寿夫氏は北海三共においてアジアティックHb「レッドブライアン」等を育成し、その後材料を引き継ぎ育種を続けている。
 道立農試のゆり育種は、戦前より道内に自生するエゾスカシユリの改良から始まる。平成4年からは、バイテク技術の一手法である胚培養法を利用した遠縁種間育種を開始した。これらの交配では、柱頭に花粉を受粉する通常の柱頭受粉とは異なる花柱切断受粉法を用いる。めしべを1cm程度残して切断し、さらに数mm縦に切り、その間に花粉をつけることで、花粉管の伸張が途中で止まってしまうことによる交雑不親和性が打破でき、受精が成立する。培養による雑種獲得には、最初から操作が大変な胚培養を行うよりも、最初に胚珠培養により発芽を促し、未発芽の胚珠より胚を摘出し胚培養を行う2段階の培養法「胚珠−胚培養法」が操作が容易で効率的であることを明らかにし、利用している。培養時の雑種胚が大きいほど発芽率は高く、0.1〜0.2mmの微小胚の発芽率は10%以下、一方1mm以上の胚では70%を超える。「胚珠−胚培養法」では、胚摘出時のダメージが小さく、また胚珠培養時に胚が生育することで、より多くの雑種が獲得できる。これにより多くの遠縁雑種獲得が可能となるが、この技術にも限度はあって、親側と花粉側との限定はある。例えば、LAハイブリッド(Lが種子親、Aが、花粉親)は、できるが、逆は出来ない。
花卉の育種家にとってのキーワードは、『新奇性』である。あえて『奇』を使用して、奇抜、奇天烈、奇妙な、今までどこにもなかった花を目指すことが、市場で認識される重要な視点である。
 種々の雑種作りを進めている。ロンギフローラムHbとアジアティクHbの雑種であるLA−Hbをはじめ、原種ヒメユリを利用した小輪アジアティックHb、耐病性に優れるトランペットHbを利用したOT−Hb、LT−Hb、さらに雑種獲得が困難なOA−Hbなど、たくさんの雑種を作り出している。これまで、2品種を発表しているが、栽培、出荷には至っていない。球根増殖がネックになっており、組織培養による大量生産も計画中である。
 多くの新奇な素材は作出できても道立農試だけでは市場性の把握は困難である。花きの世界では数年に一度の品種育成では相手にされず、また即種苗が供給できなければ流行遅れとなる。今後は、試験場、生産者、市場、種苗会社等との連携、協働による早期品種化体制、さらには品種化後、すぐに市場評価できる球根増殖・養成体制の確立を目指す。新品種を他産地との差別化が図れる北海道のオリジナル品種として、道内の産地で利用してほしい。また、独自品種を持つ事で、北海道の花き生産者に希薄な良いものを消費者に届けたいという意識(こだわり)が芽生えることを期待する。

(閉会の言葉)
 閉会の言葉で、道央バイオ研究交流会の伊藤幸良会長は、次のように締めくくられた。
 恵庭市は、道内一の花の街として有名になり積極的なアピールも行っている。国土交通省の最優秀賞を昨年受賞している。ガーデニングを本格的に行っておられる個人も多く、個人の庭も観光マップに載せてオープンガーデンとして楽しんでもらえるようになっている。このバイオ研究会も、明日からの花のお祭り「花と暮らし展」の週間にちなんで開催したものです。バイオ技術の中で花卉技術も育ててゆきたい。
(文責:HOBIA企画運営副委員長 浅野行蔵)


講座開催風景

 地域バイオ推進育成講座IN函館
「DHA、EPAの健康作用」〜さらなる活用を求めて〜

 平成16年10月8日(金)14:00〜17:00、函館ハーバービューホテルにおいて、企業関係では日本化学飼料、北海道乳業、研究関係から北大水産学部函館水産高校、道立工業技術センターなど参加者10名で開催された。
基調講演には「海洋微生物による有用脂質の生産と応用」と題して、広島大学大学院先端物質科学研究科助教授 秋 庸裕 氏にお願いし、その後HOBIA冨田会長をコーディネーターとして討論会を行った。  
秋先生の講演及び討論会の概要は以下の通り。 
[基調講演]
日本の食生活はアメリカ型に近づいており、食生活における油脂中の不飽和割合を6%〜42%(USA)から'60年代の日本の10%〜30%に上げることをめざすべきだ。それには不飽和脂肪酸の生産高め、応用を考える必要がある。
ドコサヘキサエン酸(DHA)は青魚などに多く含まれていて、食べると頭が良くなると言われている脂質成分。動脈硬化、炎症やガンを抑える働きもあり、健康食品の素材として注目されている。しかし、魚から取り出して精製するのは効率が悪いなどの問題があった。海洋微生物によって不飽和脂肪酸が作られることは以前から知られていたが、特にラビリンチュラ類Schizochytrium limacinum SR21は高い増殖性と脂質蓄積性を示すドコサヘキサエン酸(DHA)生産性海洋性微生物であり,DHAの工業生産への応用が検討している。オレイン酸からDHAに至る生成工程において、その途中を阻害剤で止めればEPAなどの他の有用産物を得ることができる。
ラビリンチュラは生物種で言えば、クロミスタ類に入り海洋の一次生産物である。凍結保存や形質転換しやすく使いやすい微生物である。分裂が早いので生産性が高い。
現在、KH-105を使って発酵漕での生産を行っているが、空気の送り込みが重要で、リパーゼを入れてやるとDPAの濃度を上げることができる。1回の工程の生産効率は40〜70%、もう1回やると90%まで行ける。この他界清算効率をもとに企業化が検討されている。
 今後の仕事はコスト下げることである。遺伝子操作で形質転換して機能を向上させることも目指している。
[討論会]
質疑では冨田座長の主導で、主に実践的な話題で進行して有意義なものとなりました。
・日本化学飼料より、自社の生産実績ではリパーゼ処理を5〜6段もやっても70%まではとても行かない。秋先生の実績は驚異的である。今後指導していただけないかとの要望が出された。
 ただ、広島では既に実用化に向けて動き出しているので、かんたんに参入できる状況にないと思われるが、穂刈氏の熱望は十分伝わったものと思われます。
・ラビリンチュラは海水中の炭素源あるところに至る所いて特異な生物ではない。(例えばマングローブ、海草などの生育地域)
・タカ、トンビの眼球の後ろにはDHAがたくさんあることが知られている。このDHAは獲物をねらって急降下する時の、眼の素早い動体視力コントロールに大きな効果を発揮していると言われている。アスタキサンチンも動体視力に効果ある。
DHAの食品への応用例では、DHA入り植物性油のドレッシングがある。函館地域では、DHA入りラーメンが開発されている。DHA入りヨーグルトは試してみたが臭いが残ってうまくいかず、今は取り組まれていない。
EPAの製法もこの方式で効率的にとれれば魅力的である。EPAはすでに医薬品になっているので、高価格の確かな市場が存在する。日本化学飼料では従来法での医薬品仕様のEPAを製造していて医薬品ノーハウを持っているので、むしろEPAの濃縮しやすい製法をぜひ欲しい。
秋先生の研究はDHA中心でEPAについてはやっておられないことから、共同研究の可能性はあるものと見受けられた。
日本化学飼料では現在イワシを原料としている。イワシだと最初から脂肪酸の種類が多いので、効率的なEPA濃縮が難しい状況にある。
EPAの医薬品としての効果はハンチントン病に対してはデータがとれている。また、うつ病にも効果が期待されており、マーケットが極めて大きいと期待されている。

 本講座では、DHA入りヨーグルトの開発テーマが出され、コンソーシアムを作って地域新生コンソーシアム公募への挑戦の企画が検討された。
USAやオーストラリアなどでは、既にDHAをアイスクリームなど乳製品に入れる研究が行われているが、魚臭を消すのが難しいらしい。今はDHA入り飼料を与えて腸から吸収させる方向のようだ。
カルシウムの腸管吸収研究の実績のある冨田先生から、飼料に入れて牛の体内で効率よく取り込ませられないかなど応援意見も出て盛り上がりました。この件は、その後の懇親会でも話題になり、ぜひ企画を固めようという方向が強くなったと思います。
 この度の地域バイオ育成推進講座in函館は、参加者は少数ではあったものの、当事者意識の高い専門家の参加によって大変深い議論になりました。研究開発の企画話も出て今後、秋先生と地元産学官、さらに北大を含め連携が深まることが期待されます。(文責 西陰研治)