|
バイオインダストリー振興事業
北海道の助成、JBA日本バイオインダストリー協会の支援事業 −地域バイオ育成推進事業− 地域間のネットワークの形勢を推進し、地域のバイオ産業の均衡ある発展に寄与するため、道内各地域のバイオ振興団体からなる実行委員会により、地域が必要としている地域バイオ育成推進講座など各種バイオ産業の振興事業を実施しています。
|
|
去る2月22日(木)、平成12年度3ヶ所目の地域バイオ育成推進講座が開催されました。概要を報告します。 基調講演「バイオ未利用資源の商品化に向けて」 北海道立食品加工研究センター 副所長 清水 條資 氏
社会は、高齢化に向かっている。人生は単に生きているのでなく、元気に、考えて、喜んで、楽しい人生を送ることが重要で、このことが食品といろいろ関係があることが次第に判ってきた。
まず、本当に食と健康には関連があるのか、医食同源なのかということです。遺伝的に高血圧易発症マウスが開発された。このマウスは1%の食塩水で低タンパクの給餌では短期間で脳卒中になり、寝たきりになってしまった。しかし、同じマウスに食塩水を減じ、高タンパクの餌を与えて飼育したところ、天寿をほぼ全うした。このような実験の繰り返しの中から食と健康は因果関係があることが証明されてきた。したがって、人の場合も食生活によって脳卒中になりやすい家系の予防の可能性がでてきた。 つぎに、最近ヒトの遺伝子の解析が終わったと伝えられ、人の健康に計り知れない効用がある。健康を保つために、活性酸素の減少が重要。最近の研究で、ミトコンドリア(生物のエネルギー生産工場)の電子伝達系遺伝子が活性酸素で損傷をうけて老化や寿命に影響していることが分かってきた。これと食との相関が明らかになってくると、これをターゲットにすれば利益を生み出せるでしょう。 当研究所で行っている鮭の研究例を紹介します。鮭の水揚量が毎年12万t位ある。ブナサケから鮭節がつくられ、サケ節から調味料、骨からコンドロイチン硫酸が抽出され、化粧品原料となり、内臓から魚醤油、皮から人工皮膚や化粧品原料のコラーゲン、白子から健康食品、頭部からは血圧降下性のペプチドを発見している。捨てるところないほどです。これらの産業化が期待されています。 次に、馬鈴薯です。道産馬鈴薯のうち約60%がデンプンに加工されている。馬鈴薯は、ビタミンC、良質タンパク質も多く、研究すると面白いものが出てくると思う。帯広の食品加工技術センターでは、馬鈴薯タンパクから調味料を作って企業化している。長野オリンピックで馬鈴薯から作ったお皿を使ったことはご承知のとおりです。 デンプンから工業製品が生まれる可能性は高い。ビートは毎年約400万t生産されるが、これまでは砂糖しか採っていなかったが、ラフィノースというビフィズ菌増殖因子が採れている。北大の研究ではカルシウムの吸収を増加するフクトースダイマーが作れるようになり、健康に寄与するものが出来つつある。 当センターでは、遺伝子レベルの研究もしている。そのうち心臓病のマウスと正常なマウスはどこが違うかを研究しており、10数個の遺伝子が違っていることを突き止めた。道産の食品を食べたら効果があるかを究明したい。 廃棄物の中に価値あるものを見出し、生産コストの低減に結びつけるか、あるいは社会貢献につなげるか、そういったことが企業の発展につながると考えている。 基調講演される清水氏 <パネルディスカッション> 「21世紀の食を考える」 (コーディネータ) 旭川大学大学院経済学部 教授 佐々木 悟 氏
(パネリスト)
北海道立林産試験場 企画指導部 主任研究員 瀧澤 南海雄 氏
旭油脂梶@代表取締役社長 大塚 譲 氏 西神楽夢民村 村長 島 秀久 氏 潟jュー北海ホテル 顧問 押切 清 氏 【発言要旨】
【佐々木氏】 世界的な人口の増加、進みつつある地球の温暖化、都市の膨張による農地の縮小・畜産物消費の急増など、21世紀にはこれらの要因が作用して、世界的な食糧危機の到来が危惧されている。日本の食糧自給率は40%を切ろうとしている。自給率を高めるべく、地域農業の発展とともに、農産物の大きな価値を付加する地域食品産業の展開が求められている。 そのような地域の要求に対応して、急速に農業、食品産業分野にとりいれられているのが、生命工学、バイオ技術で、その応用は極めて多方面にわたる。とくに農業へのバイオ技術の導入は、21世紀の食糧供給の好転に大きく寄与すると期待される。バイオ、とくに遺伝子組換えの開発に対し、特許が与えられており、その取得を目指した企業や組織間、地域間による競争が激化している。 バイオ産業は様々な分野と結びついて、地域経済を活性化させ、我々の生活を豊かにする大きな可能性を持っている。地域産業としてバイオ産業を定着・発展させるべく、地域総ぐるみでその支援に取り組む必要がある。 【瀧澤氏】 バイオテクノロジーとは、生命の働きを利用してものを作ることで、味噌・醤油・塩辛などの発酵や、医薬品・食物・化粧品にも利用されている。バイオは進歩が速い。細胞融合や遺伝子組換えなど、言葉は日常生活に定着したが、その中身を理解する人はまだ少ない。 すでに、インターフェロンやインシュリンは、動物の遺伝子を組み入れた微生物で生産されている。細胞融合で作られた野菜や、クローン牛なども店頭に並んで生活に役立っている。植物バイオテクノロジーは、@植物増殖技術、A植物保存技術、B植物育種技術の3つに分けられる。 【大塚氏】 食品分野のバイオ技術は、すでに永年にわたって培われ、既に日本の食文化になっている。例えば、アミノ酸を作るバイオリアクターあるいは、調味料の高級化には、なくてはならない。 当社は、バイオ技術を農産物の種子の面と未利用資源(副産物)の二つの面で注目している。日本の油脂原料は100%近く輸入に依存している。米油やナタネ油、北海道産のひまわり油があるが、統計上微々たるものである。昨年遺伝子組換え食品の表示の義務化がなされた。当社は昨年11月から全面的に非遺伝子大豆に切り換えている。道産非組換え原料も割高ではあるがコストプッシュ分を製品に転嫁することは難しい。当社の未利用資源として多いのは、大豆タンパク製造時に発生するオカラで、現在は廃棄物である。有効活用の課題は、水分が85%と高いので乾燥が必要なことだ。 【島氏】 バイオ技術は農業の分野でも、増殖、品種改良で相当普及している。イチゴの苗やユリの球根の優良株の増殖は、今までに比べ短時間で多くの量が作れる。 農業者は、今まで量を多く取ることと規格化に力を入れ、身体の健康を考えた農作物を作ることが欠落していたように思う。現代は、豊かな食生活といわれるが、生産者、消費者が、食について真剣に考える時に来ている。 【押切氏】 将来の北海道の位置づけは、日本の食糧基地と考えられる。しかしながら、現状は、若年の農業離れと、離農が増えている。将来の農業は若年者にとって、楽しく夢のあるものでなければならない。そのためにはバイオテクノロジーによって、野菜も、米も、酪農もより良い品物作りが出来る仕組みに、早い時期に研究を重ね、活用しなければならない。 去る平成12年3月24日(金)に釧路プリンスホテルにおいて第2回釧路地域「産業振興研究会」が開催されました。参加者はJBA古寺顧問を含め12名でした。 うまみ、熟成メカニズムの解明をテーマに絞った今回は道立釧路水産試験場、道立食品加工研究センターからの話題提供に企業の取り組みを加えて、これからどのように研究体制を作るかの作戦会議となりました。 研究情報の収集や体制づくり、人的ネットワークの形成等課題は多いが、平成13年度も研究会を継続していくことが確認されました。研究会の概要は以下の通り。 1.秋鮭塩蔵品の短期熟成 釧路水産試験場 利用部 主任研究員 西田 孟 氏
国の補助事業で取り組んだ研究で、今年度で終了したものである。 山漬けはシロサケ(秋鮭)を積層状に塩で着け込んで、サケの重みで熟成する伝統的な製法。時間をかけて熟成したもの(山漬け:製造日数20〜30日)と塩出し、風干を省いて時間短縮したもの(改良山漬け: 3〜7日)及び新巻(さらに塩蔵を省き撤塩のみ:1〜2日)についてその違いを調べた。塩分、グルタミン酸、イノシン酸、粗脂肪、水分について分析し比較した。 山漬けは背肉部全体に塩分が浸透している。グルタミン酸、塩分が多いのが特徴。 改良山漬け、新巻では塩分の浸透は腹肉までで、背側の表皮からは少ない。 イノシン酸はむしろ新巻に多く鮮度の良い程多い。漬け期間の長いものは少ない。 今後はこれらのデータを生かして高品質でかつ低コストな塩蔵法の開発に取り組んでいきたい。実用化が今後の課題。 2.食加研における取り組みについて −ホタテウロからの調味料及びシロサケ内蔵組織からの魚醤− 食品加工研究センター 発酵食品部
調味食品科長 池田 隆幸 氏 <今回のテーマ> 調味料によるうまみでなく熟成による本物のうまみで勝負したい。熟成をコントロールしたい。 (ホタテのウロから調味料を作る研究) ホタテむき身⇒軟体部⇒ホモジナイズ⇒加熱⇒酵素⇒加熱⇒遠心分離などの処理によって作る。酵素反応によるエキス生産である。プロテアーゼA+Pがよいという結果が出ている。作った調味料にはタウリンが13.7%入っている。また貝の特徴であるグリシンが半分以上含まれており、グルタミン酸は意外と少ない。エキス中の重金属については、Feなどはほどよく入っている。Cd除去方法はイオン交換樹脂、キレート樹脂が良く検出限界以下となった。ホタテ軟体部2000gから166gのホタテエキス粉末を得た。 (シロサケの内臓組織から魚醤を作る研究) エスニック料理で流行っているが、おいしくて、塩分の低いものを製品に使いたいという意図である。結果はグルタミン酸やグリシンが多く、色が濃いものができた。自己消化の活性が強い。内臓はペプチドやアミノ酸の生成量が多いが、肝臓、筋肉では少ない結果となった。 イカナゴ、しょっつるとの比較による評価を行ったが、塩分は一番低い。官能評価でも香りは魚臭くない。すっきりした味となった。機能性については、高血圧に効くACE阻害活性というのがあるが、内臓からとるとこの活性がある。高血圧抑制があるペプチドが多い。また短期間での製造が可能である。 3.企業の取り組み 葛路丸水 営業本部 第2課係長 佐々木 正善 氏
サケ内臓魚醤に挑戦したがおいしくなかった。他の魚種でのものは作っている。熟成とは塩がまわることか、脂質がまわることか。凍らない、腐らない温度に漬けておけばできるのではないか。フィーレやフレークではやって評価は良い。氷温熟成のメンタイコがあり、応用できそうだ。 4.討論 熟成とは自己消化によって時間経過と共にうまみが出ること。塩慣れとも言う。乳酸菌の添加の野菜漬けも興味あるところ。 釧路に工業技術センターができる予定。産業支援をしたい。産業クラスターのテーマ化も可。魚醤のにおいを植物で消臭する研究をテーマにする予定有り。 ポイントは熟成を科学することだ。脂がまわることをどう定量するかが難しい。熟成は微生物のハーモニー、微生物から探る方法がある。 おいしさの定量化へアプローチしたい。生物的、微生物、化学的、アミノ酸、脂質、物理的、食感等、脂質研究の調査も必要。 (文責 西陰)
第2回釧路地域産業振興研究会の様子 さる、3月10日 北見市ホテル黒部に於いてオホーツク地域振興講演会が開催された。当日は、ビール関係者をはじめ45人の参加者が熱心に講演を聴講した。最初にオホーツクバイオテクノロジー推進懇話会小澤 副会長が挨拶され、オホーツク圏地域振興研究会の意義について話された。オホーツク地域は農林水産、一次産業が基幹産業です。新農業基本法が制定され安定供給、安全性確保など食品産業全般に関わる基本的な方向性が打ち出され、オホーツクの役割はますます大きくなっている。今回は、ビールの情報に関わる情報提供をしていただくので、この地域の地ビールの振興に役立てて下さい。残念ながら最初予定していたスコットランドのヘリオット・ワット大学国際醸造蒸留所センター スローター先生は不慮の事故のため講演中止となりましたが、代わりに急遽北海道立食品加工研究センターの田村氏から乾燥菌体の利用についての講演といたします。 北海道立食品加工研究センター発酵食品部発酵食品科の田村 吉史氏が「乾燥菌による手軽な発酵食品づくり」を講演。いろいろな微生物が食品を作るために働いていることを微生物の基礎からわかりやすく説明した。次に、スターターカルチャーとして微生物を入れることの意義について述べた後、菌体を乾燥させる利点として、手間を省く、いつも安定、いつでも使える、培養設備がいらない、培養技術がいらない、製品の安定化をあげた。すでに、乾燥菌体を利用している食品は、パン、ワイン、ビール、ヨーグルト、チーズがあり、さらに食品加工研究センターの研究成果として清酒酵母の乾燥化を紹介した。 次に、スコットランドのヘリオット・ワット大学、国際醸造蒸留所センターのオマー ユニス博士が、高比重麦汁(高濃度麦汁)によるビール醸造について講演した。高比重仕込みとは、通常よりも多くの麦芽を使い高濃度の麦汁を作り高アルコールを得る方法です。この方法の有用点は、通常のアルコール濃度に薄めれば設備の変更なしでたくさんの製品が作れること。希釈率を変えればたくさんの種類の製品が作れること。注意すべき点としては高濃度麦汁を作るため工場の稼働率が下がること、製品の泡保ちが悪くなること、酵母が疲れることや香りが変わるなどがある。高比重仕込みではビール中に含まれている疎水性ポリペプチドが通常仕込みの場合と比べ低下するため泡保ちが悪くなる。また、高濃度の麦汁を発酵させるため通常仕込みとは違った香りとなる。香りは発酵条件や金属イオンやアミノ酸などの添加により変化することを見いだし、これらを利用して通常仕込みと近い香りに調整可能な条件を確立した。 ヘリオット・ワット大学 オマー博士 最後に東京農業大学生物産業学部の永島俊夫氏が「オホーツクの原料で醸造したビール、その特徴と成分について」という題で、これまでの東京農業大学での研究成果を紹介された。平成5年から地ビール許可に伴いビールの研究を開始し、平成7年に現在の試験醸造プラントを作った。昨年、ビール400L発泡酒100Lに更新したので、2ヶ月で1回の仕込みが可能となった。オホーツク産の原料としては小麦、ジャガイモ、トウモロコシを用いたビールの製造について実験結果を紹介された。また、網走ビール発足に当たっての数々の苦労話をされ、これからの問題点としてそれぞれの町全体として地ビールを応援することが大切であること、および日本の地ビール会社は営業に力が入り、醸造担当者を軽視する傾向があるとの苦言を呈された。 東京農業大学 永島俊夫教授 オホーツク地域振興講演会に引き続いて25人の参加者のもと地域産業振興研究会が開催された。今回はビールにテーマを絞って検討した。出席されていた7社の地ビール会社の方からオマー博士および永島先生に、高濃度培養について麦芽の乾燥機の使い方について活発な議論がなされた。また、各地ビール会社間の情報交換もなされた。食品加工研究センターに対する要望として、インターネットホームページを使った地ビール業界間の意見、情報交換の場を作ってほしいといういう要望が出された。北海道は地域が離れているので同じ業界でも競合しているようで競合していないと感じた。 オホーツク地域産業振興研究会 北海道バイオステージの次の日、平成11月13日に同じ釧路プリンスホテルにおいて釧路地域産業振興研究会が開催されました。当日は、22名の参加者があり活発な意見が交わされました。その概要を報告します。 まず、高尾彰一HOBIA会長から開会の挨拶があったあと、北海道バイオ産業振興協会の産業振興事業について事務局から、「地域ニーズに即した研究開発を進めるための研究開発ニーズ・シーズの発掘を行うとともに、これらを産・学・官共同などによる研究開発に結びつけ、産業化事業化に結びつけ、できれば助成制度を獲得して具体的なテーマに結びつける」という趣旨説明がありました。これまでに、助成金獲得に成功した事例などに「どうしたら採用してもらえるのか?」「どうして前回不採用になったのか?」という質問がありました。次に、北海道通産局からは、具体的な通産省における研究開発の支援制度についてテクノサポートカレンダーという資料を使って説明がありました。この資料は、非常にわかりやすいと評判で、通産局の「出る杭は伸ばす」という方針と相まって会場の興味を引いたようです。また、ホクサイテック財団からコーディネーター事業や研究支援事業の説明があり、会場の参加者からはその利用方法についての質問が出ていました。これらの事業については、それぞれのホームページにも出ているので参考にしてください。 総合討論会では、 (1) 補助金は書類の審査作成には時間と人手がかかるが、その手間を越えるものが得られる。 (2) 企業は、自分たちがやりたいときはたとえ障害があっても、やっていく。そのとき、ある意味ではやさしく、ある意味では厳しく見て欲しい。 (3) 地域共同研究センターを作ってほしい。 (4) 機能性を高めた商品開発の進め方はどうしたらいいのか? (5) 業界のリーダーになる企業をまず育てていきたい。 などの、意見質問が出されました。 特にHACCPに関しては (6) HACCPというのとバイオの関わり? (7) 日本の発酵食品、熟成食品はどうやってHACCPをクリアすればいいのか? (8) 日本古来の食品をどうすべきか? などの点について議論が交わされ関心の高さが伺えました。 今回は、残念ながら具体的なテーマには踏み込むことはできませんでしたが、お互いの意見を交換できて非常に有意義な会議でした。次回は、2月に行うことで閉会しました。 産業振興研究会 「食品の安全性を求めて」−HACCPの理論から活用まで− 去る平成12年10月27日にホテルガーデンパレスで行われた札幌地域バイオ育成講座「食品の安全性を求めて−HACCPの理論から活用まで−」は、130名以上の参加者があり盛大に開催されました。最初に、地域バイオ育成推進実行委員会実行委員長である高尾彰一氏から開催の挨拶の後、北海道大学農学研究科の浅野先生、(株)京食北海道支社の山口氏とよつ葉乳業(株)十勝主管工場の三宅氏、北海道保健福祉部食品衛生課の米川氏の3人の講師からご講演と解説を頂き、総合討論では会場からも熱心な討論が行われました。また、続いて行われた交流会にも多数の出席者がありここでも熱心に演者を囲んだ討論が行われておりました。 ここに、その講演の要旨を掲載いたします。 1.FDAに学ぶHACCP 北海道大学大学院 農学研究科 応用菌学教室 助教授 浅野 行蔵 氏
HACCPなる言葉が、新聞やテレビで盛んに使われている。今回の講演では、HACCPのエッセンスを紹介する。 <HACCPは、製品検査なしで安全をめざす> HACCPは、宇宙旅行用の食品を作るために開発されたことは有名だ。安全か否かを出来上がった食品を検査して調べる方法はあるが、検査した食品は、サンプルを取るために開封される。封が開いていては、宇宙旅行には持って行けない。つまり、宇宙旅行のためには、製品検査をしなくとも安全な食品を作ることが必要なのです。 <HACCPは、問題解決方法> HACCPは、アメリカで開発された安全な食品を製造する方法である。今回の講演では、おおもとに戻ってHACCPの基本、こころは、なにかを考えてみた。その資料は、インターネットで公開されている。Codex委員会(FAO/WHOの合同食品規格委員会、国連内)のHP(http://www.fao.org/WAICENT/FAOINFO/ECONOMIC/ESN/codex/STANDARD/standard.htm)を参照下さい。 安全な食品を作ろうと考えたとき、それぞれの食品について製造方法を具体的に決めるのは製造者であるので、何から手をつけたら良いのかを導き出すのにHACCPを使えば、解決の糸口を見いだせる。HACCPは、問題解決の方法である。 <危害要因の同定> HACCPでいう、ヒトの身体を脅かす危害は、毒性の微生物ばかりでなく、キノコや貝などの自然毒、ヒスタミンなどの代謝物、ガラスや金属の混入なども含まれる。食品ごとに危害要因は異なる。安全な食品を作るためには、どのような危害が、存在するかを調べ、正体を知って、対処することが必要だ。 <クリティカルは、危篤の意> 食材は、様々な調理加工を経て食品となる。その過程で、安全に最も強く関わる工程を設定することが必要です。すなわち、CCP(クリティカル・コントロール・ポイント)です。最初のCのクリティカルは、「危篤」の意味も持つ。一線を越えてしまうともう戻れないぎりぎりのポイントだ。特定の加工工程さえ、しっかりと首根っこを押さえてコントロールしておけば、安全な食品を作ることができる、これがCCPなのだ。 <商業的殺菌は菌が生きている> 安全な食品を求めて、微生物をすべて殺すならば、食品は、缶詰とレトルト食品だけになってしまう。安全に作る方法があるが、それでは食品の魅力が減り商品力が失われてしまう。 そこで、食品のpHや糖濃度、添加物、包装などを吟味して、安全性を高めた食品組成にする工夫や、菌が存在しても生育しない静菌状態を作る工夫が必要だ。さらに、製造工程での微生物の混入など二次汚染の防止に環境整備も不可欠となる。 <HACCPの心をつかもう> HACCPと厚生省の通称、マル総(総合衛生管理過程)とは、異なったものである。HACCPは、個々の食品が、原料から加工されて商品へとできあがる過程を動的に追いかける考え方である。工場的な衛生管理は、SSOP(Sanitation Standard Operation Procedure、衛生標準作業手順書)として、考え方を別にして行われる。 本物のHACCP は、強制されたり認証を受けるためにやるものではない。HACCPの考え方で製造方法を改善すれば、企業の利益を生むし、顧客の利益にもなる。不良品が減り、ミスが減り、ロスが減り、失敗が減り、工場の稼働率が高くなる。大企業だけでなく、中小企業、レストランでも実施可能なのである。HACCPは、問題解決方法である。知恵の集積である。建物と設備さえ対応すればHACCPができるのではない。 HACCPの本格的スタートには、平均2年を要する、というのが標準的だ。しかし、2年待たねば効果が出ないのではない。準備を始めてすぐ効果が現れる。HACCPの心をつかんで、企業利益をつかもうではありませんか。 2.水産加工業における品質保証と品質管理のあり方を考える (株)京食 北海道支社 品質保証室長 山口 博 氏
(1)はじめに・・製造と品質管理について
基本的にHACCPなり食品に関する品質保証や品質管理のあり方、あるいは安全に関する情報、経験というのは業界全体で共有していくべきだと考えている。そしてより安全な方向に向けて各企業が取り組めたら良い。私は最初から食品業界に入ったわけではなく、最初は精密機器の会社にいて、QC、製造管理、品質保証という経験をし、品質管理の考え方を習った。ところが、京食にいくと製品を管理するという基盤が全くなかった。そこで、管理の必要性を一緒に考えて行く基盤の構築を進め、ISO9000の取得へと繋げた。 (2)品質保証と問題点 品質保証というのはユーザーがこのメーカーの作る物は大丈夫だという安心感を与えることで、それには品質管理、安全な物を作る基本的なノウハウ、サービスまで含めて品質保証と考えるべきだ。品質管理とは、現場の中で行うべき技術的ノウハウでこれは決して外に対してやる物ではない。それにはまずHACCPにあるような安全製品を作るためのシステムを作り上げなければならない。総合的な品質管理と全体をマネージメントとして考えた品質保証が必要である。 問題点は、末端の営業や製品担当者や作業者が自分たちの取り組みがお客さまにどう思われていて、何を望まれているのかを理解していないことが多いことだ。 開発設計時で確認を要する検討事項は、1)安全に関する要求と製品特性の把握、2)品質規格上の客観的基準、3)製品プロセスに関する多角的な検証、4)要求ニーズに対する妥当性検証、5)社内組織における相互関係などがある。そして、製品の品質に大きな影響を与えているものとして、1)原料の受け入れ、保管管理から出荷管理までのプロセス、2)製造加工のプロセス、3)製品の保管管理から出荷プロセスがあり、これらの管理計画を定める必要がある。 (3)具体的取り組みについて 実際現場の中でHACCPをやっていくのは実は大変なことだ。作業する人の衛生に対する意識の統一が難しい。事務所も含めて全体で考えていくことが重要。品質管理のメリット、重要性、価値などが作業員に分かってもらえるような教育をすることが大切。小集団活動(QC)というのは食品企業ではあまり一般的ではないが、非常に有益な手法である。 教育訓練も大事だが、むしろHACCPに必要な実際の日々の管理に利用できるように、社員が取り組みの意味を理解して、メリットとその価値観を共有することがまず大切である。 3.「HACCPの承認取得と承認後の要点」 よつ葉乳業(株) 生産技術グループ 三宅 正博 氏
(1)はじめに
当社は平成8年から取り組みを開始し、その中で農場から食卓までの衛生管理を目指した。食品衛生法で定められているのは、工場に入ってから出るまでで、それ以外については全く何も決められていなかった。 (2)行程状況と管理基準 乳業メーカーはパターンが決まっているので、ハード面では限定された範囲しか変わることはない。ただ、ソフト面となると、各社各工場が様々な形で違いがあることが明らかになってきたため、基本となるところは社内的に統一した。HACCPはソフト面の基準作りが大切。工場内の基準をきちんと決めておくことが重要。ちぐはぐなやり方、整合性をとれないやり方がでてきた時に、これらをまな板の上に載せてどういうやり方が適当なのかをみんなで集まって文書化していった。 (3)申請−承認の流れ 社内の方針が決まったら、チーム皆でプランを作って保健所に相談に行った。そしてその検証を行い、うまくいかない点を直して、できあがったものを保健所の方に見てもらった。保健所とのヒアリングから2,3の指導を受け、その後部分的な修正を加え申請書類を完成。そのあと現地調査として、厚生省、あるいは地元保健所の方が入る。このときは、申請書に基づいて工場の現場がなっているか審査される。雪印の問題があった後からは、この審査には必ず厚生省の方が入ることになるそうだ。総合審査の結果、改善指導があり、その改善後に実際に改善の具合を見に来る。改善指導通りになっているかどうかを調べるためである。申請から承認まで3ヶ月から半年かかるのが普通。 (4)承認後の自主検査 承認後は内部監査(自主監査)を年1〜2回自ら決めて自らやることになっている。外部監査は結構厳しいのでこの内部検査でどれくらい直せるかが重要。当然、はずれている場合は必ず指摘され、文章が残ってくることになる。一回通ったからもう大丈夫という世界ではなく、その後も厳しいし、状況が変わると変更届を必ず出さなければならない。CCPに関わる変更があった場合は厚生大臣に申請書を出す。HACCPを見直しなさいと言う一行があるが、これが内部監査になるのだと考えている。HACCCPが機能しているか、プランと適合しているかと言うことを常に見直している。 4.「HACCPの構築と問題点−雪印乳業食中毒事件への行政の対応を主体として」 北海道保健福祉部 食品衛生課 参事 米川 雅一 氏
(1)はじめに
今、北海道では、26カ所180人のHACCPを指導できる保健衛生管理人をおいて、相談を受けたり、HACCPがきちんと運営管理されているかをチェックしている。また、来年の1月から厚生省の担当官を地方に配置することにもなっている。北海道は中でも結構しっかりとやっている。まずHACCPについて考える場合、こういうシステムというのは決まりに基づいて固定されるという考え方は間違い。HACCPは常に進化すると考えてほしい。いろんな食品に対する導入の仕方が違ってくる。そこにある工場の環境条件もしっかり考えなければならない。 (2)環境条件の重要性 昨年は、小樽を中心とした腸炎ビブリオ、そして今年は雪印の事件といった立て続けにおこる大きな食中毒事件が起こった。HACCPだけではなく一般的衛生管理に入るような事柄を含めて、地域特性を掌握したCCPを考えておかないと非常に問題が生じることになる。これまでの経験から、CCPを考えるときに工場の立地条件を考えておかなければならないと言うことを痛感した。環境条件というものがとても重要。 今回の雪印の事故のように、環境要因を念頭にCCPが考えられているかどうかを、HACCPを導入するしないに関わらず一般衛生管理に導入しなければならない。ところがそれが念頭に置かれていない、さらには今回の雪印大樹工場のように危機管理がなされていないと食中毒事故が起こってしまう要因になる。 (3)今回感じたこと マスコミの対応は非常に間違った報道が多過ぎる。HACCPを徹底的に問題にした7月の時点での我が国の対応というのはいったい何だったのか。HACCPの問題等よりは食中毒の原因となる菌の増殖要因を明らかにしなければならなかったのに、HACCP全体を悪いということを報道したために、完全に国民の目がそっちにシフトしてしまった。専門家ですら、そっちに振られてしまった。今全容が明らかになってくると、大樹工場で突発的事故が起きたときに微生物学的な知識をもって対処できるかどうかが問題。一般にHACCPでは一般的衛生管理をきちんとやることが一番大事なこと。当然、これからもHACCPは大いに普及し、みなさんにHACCPに基づく衛生管理をやってもらいたい。 そのために北海道庁は保健所を通じて、厚生省としっかり手を組んでHACCPの普及に努めて参りたい。また、北海道として道産の食品の安全性を示すことは死活問題であり、これからも道をあげて取り組んでいくことが必須であると考えている。 3月19日 15:30より KKR札幌
参加者は10名と少なめでしたが、具体的な研究開発テーマが見えててくるなど有意義な会となりました。 北海道栄養士会会長の古水 扶美江氏は「道民の食生活の傾向について」と題し、食べるものと食べ方が変化していること、家庭における食事の乱れ、乳幼児の段階で母親の食生活の影響が現れていること、注目を集めている子供の社会問題にも食の問題があること、生活習慣病予防に食が有効であること、高齢者のQOL を高める=今を維持する為の食の重要性等について指摘されました。 次に、健康づくり財団が道民健康づくり指導=Active 8 の一環で3年間6600人の食事、栄養傾向について栄養士会が中心となりとりまとめた調査を紹介されました。報告書は近々刊行される予定になっており食習慣、疾病傾向等の関係についても解析できるデータとのことで、今後の活用が期待されます。 札幌医科大学医学部助教授 岡野 五郎氏は「運動・体力とQOL・寿命」と題して、軽い運動による低体力の強化ができること、そしてその体力の強化が危険因子の力を弱めることをデータに基づいて説明され、どのようなタイプの運動がどの程度の量必要であるかを明らかにされました。 意見交換、交流会では運動、栄養、疾病を関連づけて解析し、健康やQOL 向上のための食事、運動、生活のあり方をコンサルできるプログラムができるのではないか、それを目指そうということで大いに盛り上がりました。 <トップへ戻る> |