バイオインダストリー振興事業

北海道の助成、JBA日本バイオインダストリー協会の支援事業


−地域バイオ育成推進事業−
 地域間のネットワークの形勢を推進し、地域のバイオ産業の均衡ある発展に寄与するため、道内各地域のバイオ振興団体からなる実行委員会により、地域が必要としている地域バイオ育成推進講座など各種バイオ産業の振興事業を実施しています。
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第2回釧路地域「産業振興研究会」報告
 去る平成12年3月24日(金)に釧路プリンスホテルにおいて第2回釧路地域「産業振興研究会」が開催されました。参加者はJBA古寺顧問を含め12名でした。
うまみ、熟成メカニズムの解明をテーマに絞った今回は道立釧路水産試験場、道立食品加工研究センターからの話題提供に企業の取り組みを加えて、これからどのように研究体制を作るかの作戦会議となりました。
研究情報の収集や体制づくり、人的ネットワークの形成等課題は多いが、平成13年度も研究会を継続していくことが確認されました。研究会の概要は以下の通り。

1.秋鮭塩蔵品の短期熟成
  釧路水産試験場 利用部 主任研究員 西田 孟 氏

 国の補助事業で取り組んだ研究で、今年度で終了したものである。
山漬けはシロサケ(秋鮭)を積層状に塩で着け込んで、サケの重みで熟成する伝統的な製法。時間をかけて熟成したもの(山漬け:製造日数20〜30日)と塩出し、風干を省いて時間短縮したもの(改良山漬け: 3〜7日)及び新巻(さらに塩蔵を省き撤塩のみ:1〜2日)についてその違いを調べた。塩分、グルタミン酸、イノシン酸、粗脂肪、水分について分析し比較した。
山漬けは背肉部全体に塩分が浸透している。グルタミン酸、塩分が多いのが特徴。
改良山漬け、新巻では塩分の浸透は腹肉までで、背側の表皮からは少ない。
イノシン酸はむしろ新巻に多く鮮度の良い程多い。漬け期間の長いものは少ない。
今後はこれらのデータを生かして高品質でかつ低コストな塩蔵法の開発に取り組んでいきたい。実用化が今後の課題。

2.食加研における取り組みについて
−ホタテウロからの調味料及びシロサケ内蔵組織からの魚醤−
食品加工研究センター 発酵食品部
調味食品科長 池田 隆幸 氏

<今回のテーマ>
調味料によるうまみでなく熟成による本物のうまみで勝負したい。熟成をコントロールしたい。

(ホタテのウロから調味料を作る研究)
ホタテむき身⇒軟体部⇒ホモジナイズ⇒加熱⇒酵素⇒加熱⇒遠心分離などの処理によって作る。酵素反応によるエキス生産である。プロテアーゼA+Pがよいという結果が出ている。作った調味料にはタウリンが13.7%入っている。また貝の特徴であるグリシンが半分以上含まれており、グルタミン酸は意外と少ない。エキス中の重金属については、Feなどはほどよく入っている。Cd除去方法はイオン交換樹脂、キレート樹脂が良く検出限界以下となった。ホタテ軟体部2000gから166gのホタテエキス粉末を得た。

(シロサケの内臓組織から魚醤を作る研究)
エスニック料理で流行っているが、おいしくて、塩分の低いものを製品に使いたいという意図である。結果はグルタミン酸やグリシンが多く、色が濃いものができた。自己消化の活性が強い。内臓はペプチドやアミノ酸の生成量が多いが、肝臓、筋肉では少ない結果となった。
イカナゴ、しょっつるとの比較による評価を行ったが、塩分は一番低い。官能評価でも香りは魚臭くない。すっきりした味となった。機能性については、高血圧に効くACE阻害活性というのがあるが、内臓からとるとこの活性がある。高血圧抑制があるペプチドが多い。また短期間での製造が可能である。

3.企業の取り組み
葛路丸水 営業本部 第2課係長 佐々木 正善 氏

 サケ内臓魚醤に挑戦したがおいしくなかった。他の魚種でのものは作っている。熟成とは塩がまわることか、脂質がまわることか。凍らない、腐らない温度に漬けておけばできるのではないか。フィーレやフレークではやって評価は良い。氷温熟成のメンタイコがあり、応用できそうだ。

4.討論
 熟成とは自己消化によって時間経過と共にうまみが出ること。塩慣れとも言う。乳酸菌の添加の野菜漬けも興味あるところ。
 釧路に工業技術センターができる予定。産業支援をしたい。産業クラスターのテーマ化も可。魚醤のにおいを植物で消臭する研究をテーマにする予定有り。
 ポイントは熟成を科学することだ。脂がまわることをどう定量するかが難しい。熟成は微生物のハーモニー、微生物から探る方法がある。
おいしさの定量化へアプローチしたい。生物的、微生物、化学的、アミノ酸、脂質、物理的、食感等、脂質研究の調査も必要。
 (文責 西陰)


第2回釧路地域産業振興研究会の様子

北見オホーツク地域講演会オホーツクビール交流会開催報告

 さる、平成12年3月10日 北見市ホテル黒部に於いてオホーツク地域振興講演会が開催された。当日は、ビール関係者をはじめ45人の参加者が熱心に講演を聴講した。最初にオホーツクバイオテクノロジー推進懇話会小澤 副会長が挨拶され、オホーツク圏地域振興研究会の意義について話された。オホーツク地域は農林水産、一次産業が基幹産業です。新農業基本法が制定され安定供給、安全性確保など食品産業全般に関わる基本的な方向性が打ち出され、オホーツクの役割はますます大きくなっている。今回は、ビールの情報に関わる情報提供をしていただくので、この地域の地ビールの振興に役立てて下さい。残念ながら最初予定していたスコットランドのヘリオット・ワット大学国際醸造蒸留所センター スローター先生は不慮の事故のため講演中止となりましたが、代わりに急遽北海道立食品加工研究センターの田村氏から乾燥菌体の利用についての講演といたします。
 北海道立食品加工研究センター発酵食品部発酵食品科の田村 吉史氏が「乾燥菌による手軽な発酵食品づくり」を講演。いろいろな微生物が食品を作るために働いていることを微生物の基礎からわかりやすく説明した。次に、スターターカルチャーとして微生物を入れることの意義について述べた後、菌体を乾燥させる利点として、手間を省く、いつも安定、いつでも使える、培養設備がいらない、培養技術がいらない、製品の安定化をあげた。すでに、乾燥菌体を利用している食品は、パン、ワイン、ビール、ヨーグルト、チーズがあり、さらに食品加工研究センターの研究成果として清酒酵母の乾燥化を紹介した。
 次に、スコットランドのヘリオット・ワット大学、国際醸造蒸留所センターのオマー ユニス博士が、高比重麦汁(高濃度麦汁)によるビール醸造について講演した。高比重仕込みとは、通常よりも多くの麦芽を使い高濃度の麦汁を作り高アルコールを得る方法です。この方法の有用点は、通常のアルコール濃度に薄めれば設備の変更なしでたくさんの製品が作れること。希釈率を変えればたくさんの種類の製品が作れること。注意すべき点としては高濃度麦汁を作るため工場の稼働率が下がること、製品の泡保ちが悪くなること、酵母が疲れることや香りが変わるなどがある。高比重仕込みではビール中に含まれている疎水性ポリペプチドが通常仕込みの場合と比べ低下するため泡保ちが悪くなる。また、高濃度の麦汁を発酵させるため通常仕込みとは違った香りとなる。香りは発酵条件や金属イオンやアミノ酸などの添加により変化することを見いだし、これらを利用して通常仕込みと近い香りに調整可能な条件を確立した。


ヘリオット・ワット大学 オマー博士

 最後に東京農業大学生物産業学部の永島俊夫氏が「オホーツクの原料で醸造したビール、その特徴と成分について」という題で、これまでの東京農業大学での研究成果を紹介された。平成5年から地ビール許可に伴いビールの研究を開始し、平成7年に現在の試験醸造プラントを作った。昨年、ビール400L発泡酒100Lに更新したので、2ヶ月で1回の仕込みが可能となった。オホーツク産の原料としては小麦、ジャガイモ、トウモロコシを用いたビールの製造について実験結果を紹介された。また、網走ビール発足に当たっての数々の苦労話をされ、これからの問題点としてそれぞれの町全体として地ビールを応援することが大切であること、および日本の地ビール会社は営業に力が入り、醸造担当者を軽視する傾向があるとの苦言を呈された。


東京農業大学 永島俊夫教授

オホーツク地域産業振興研究会開催報告

 オホーツク地域振興講演会に引き続いて25人の参加者のもと地域産業振興研究会が開催された。今回はビールにテーマを絞って検討した。出席されていた7社の地ビール会社の方からオマー博士および永島先生に、高濃度培養について麦芽の乾燥機の使い方について活発な議論がなされた。また、各地ビール会社間の情報交換もなされた。食品加工研究センターに対する要望として、インターネットホームページを使った地ビール業界間の意見、情報交換の場を作ってほしいといういう要望が出された。北海道は地域が離れているので同じ業界でも競合しているようで競合していないと感じた。


オホーツク地域産業振興研究会

釧路地域産業振興研究会開催報告

 北海道バイオステージの次の日、平成11年11月13日に同じ釧路プリンスホテルにおいて釧路地域産業振興研究会が開催されました。当日は、22名の参加者があり活発な意見が交わされました。その概要を報告します。
 まず、高尾彰一HOBIA会長から開会の挨拶があったあと、北海道バイオ産業振興協会の産業振興事業について事務局から、「地域ニーズに即した研究開発を進めるための研究開発ニーズ・シーズの発掘を行うとともに、これらを産・学・官共同などによる研究開発に結びつけ、産業化事業化に結びつけ、できれば助成制度を獲得して具体的なテーマに結びつける」という趣旨説明がありました。これまでに、助成金獲得に成功した事例などに「どうしたら採用してもらえるのか?」「どうして前回不採用になったのか?」という質問がありました。次に、北海道通産局からは、具体的な通産省における研究開発の支援制度についてテクノサポートカレンダーという資料を使って説明がありました。この資料は、非常にわかりやすいと評判で、通産局の「出る杭は伸ばす」という方針と相まって会場の興味を引いたようです。また、ホクサイテック財団からコーディネーター事業や研究支援事業の説明があり、会場の参加者からはその利用方法についての質問が出ていました。これらの事業については、それぞれのホームページにも出ているので参考にしてください。

 総合討論会では、
(1) 補助金は書類の審査作成には時間と人手がかかるが、その手間を越えるものが得られる。
(2) 企業は、自分たちがやりたいときはたとえ障害があっても、やっていく。そのとき、ある意味ではやさしく、ある意味では厳しく見て欲しい。
(3) 地域共同研究センターを作ってほしい。
(4) 機能性を高めた商品開発の進め方はどうしたらいいのか?
(5) 業界のリーダーになる企業をまず育てていきたい。
などの、意見質問が出されました。
 特にHACCPに関しては
(6) HACCPというのとバイオの関わり?
(7) 日本の発酵食品、熟成食品はどうやってHACCPをクリアすればいいのか?
(8) 日本古来の食品をどうすべきか?
 などの点について議論が交わされ関心の高さが伺えました。
 今回は、残念ながら具体的なテーマには踏み込むことはできませんでしたが、お互いの意見を交換できて非常に有意義な会議でした。次回は、2月に行うことで閉会しました。


産業振興研究会

オホーツク地域 バイオ育成推進講座ならびにオホーツク地域産業振興研究会開催報告
平成11年9月21日(火) 網走セントラルホテル2F

今回の講座および研究会は、北海道の地域振興に貢献する事業の一環として計画され、地域バイオ推進実行委員会の主催で開催されました。共催は、オホーツクバイオテクノロジー推進懇話会、財団法人オホーツク地域振興機構、オホーツク・テクノプラザで多大なるご支援・ご協力を頂くと共に、産業クラスター研究会オホーツク、東オホーツク、西オホーツクの後援も頂き、多くのご参加を頂きました。 オホーツク地域バイオ育成推進講座では、オホーツクバイオテクノロジー推進懇話会 副会長の青柳 良隆様よりご挨拶を頂き、引続き基調講演では北海道大学大学院 農学研究科 助教授 浅野 行蔵氏より「遺伝子組換え作物の実像と考え方」ならびに北見工業大学 生体システム科学研究室 教授 山岸 喬氏より「オホーツク圏で採れる健康に役に立つ食品素材について」と題して講演頂き、質疑応答が行われました。
 去る9月21(木)に網走セントラルホテルで開催されました、オホーツク地域バイオ育成講座ならびにオホーツク地域振興研究会の講演要旨について下記の通り報告します。

I.オホーツク地域バイオ育成推進講座
1.「遺伝子組換え作物の実像と考え方」
          北海道大学大学院 農学研究科  助教授 浅野 行蔵 氏
 現在の食生活を支えているのは、多数の技術開発の成果である。苦いキュウリや辛い大根は姿を消し、米も特定名称が主流となった。アメリカでは、組換え作物の生産が軌道にのりはじめた。「遺伝子組換え作物」が、不安だという人の話に耳を傾けると多くは情報不足です。組換え作物の技術ポイントを紹介し、有用な効果と心配されている状況を考察する。
<遺伝子組換えってどんなこと> 遺伝子組換えは、太古の昔から行われていた。子どもは、父親譲りのところと母親譲りのところ、あるいは、祖母や祖父に似ている場合もある。これは、まさに遺伝子の組換えが起こっている証拠だ。
 植物の改良は、世界中から良い特徴を持った原種を集めて、掛け合わせて、目的の形質を持った子孫を探す。突然変異で、突如現れた形質を固定する育種方法もある。しかし、従来法では、1つの形質を変えるにも、膨大な時間と費用を要する。そのうえ、ねらった形質と一緒に悪い形質が出てくることもしばしばあった。
 結果が不確定な掛け合わせ法でなく、有用形質の遺伝子のみを取り入れる遺伝子組換え法が、注目を浴びるようになった。
<既に生活の中に入っている遺伝子組み換え> 我々は、すでに遺伝子組換え技術の恩恵を受けている。身近な商品としては、洗剤である。酵素パワーでクッキリ、少量で洗浄力もアップし、昔のリンの多く含む洗剤と異なり環境汚染も少ない。現在、日本で販売されている洗剤のすべては、遺伝子組換えによって酵素が作られている。
 医療でも役立っている。大手術をしてもアミノ酸輸液を使用すれば、十分な栄養補給ができる。人の栄養となる20種類のアミノ酸の多くは、組換え微生物を利用して生産されている。治療薬もヒト型インシュリン、インターフェロン、抗生物質、抗圧剤など遺伝子組換え技術が活躍している。また、特定の遺伝子による病気に対しても、欠損した遺伝子を人間に導入する遺伝子治療も始まった。
 食品分野での遺伝子組み換えの利用は、チーズ製造で進んでいる。チーズを作るには、ミルクを固めてカードを作る凝乳酵素(レンネット)が必要である。この酵素は、子牛の第4胃に含まれている。この酵素を取るために子牛を殺す必要があった。この酵素を麹カビに作らせて、子牛を殺すことなく、高品質のチーズをより安価に提供できるようになった。


北海道大学 浅野 行蔵 氏

<除草剤耐性の遺伝子組換え大豆は、枯れることのないスーパー大豆か?> 除草剤'耐性'といっても、ランウドアップ(商品名)という特定の除草剤に強い(耐性)だけである。他の除草剤を使えば簡単に枯れる。ランウドアップは、残留性がなく、安全性が高いので家庭菜園用にも販売されている。
 除草剤の作用は、植物体内のアミノ酸合成を止めて栄養不足にして枯らすのだ。「除草する」という行為は、人間に役立つ作物としての植物を守って、それ以外の植物を「雑草」として殺してしまう、というもっぱら人間のご都合による行為である。その際、有益な植物は、殺さず、無益な植物を殺すという、選択毒性が必要となってくる。除草剤に非感受性の酵素を微生物から作物に導入し、除草剤耐性とした。
<安全性は高いが、選択毒性がない除草剤> ランドアップは、アミノ酸合成経路の阻害剤である。除草剤の作用機構は、草の栄養として必要なアミノ酸の生合成系を止めてしまい、栄養不足で殺してしまう。アミノ酸の中でも芳香族アミノ酸と呼ばれるフェニルアラニン、トリプトファンそしてチロシンを生合成経路を止めてしまう。これらのアミノ酸は、人間では、食事で取らねばならない必須アミノ酸である。アミノ酸補給の方法が、植物とは異なるのでランドアップは人体には無害である。
 大豆、トウモロコシ、なたねなどの作物に遺伝子組換えが行われ、ランドアップ耐性となった。遺伝子組換え作物を使用すると安全性の高い除草剤が使用できる。さらに、世界の各地で耕作土の表面土壌の流出による砂漠化の問題が生じている。除草剤耐性の作物を植える際は、前年の畑を鍬返すことなく、前年の作物を残したままでランドアップで枯死させ、そのまま次の年の種をまく。表土の流出は防がれ、生産コストも減少する。
<害虫耐性のジャガイモ、トウモロコシ、綿> 昔から使われ国内でも販売されている微生物農薬BT剤は、甲虫が食べると死んでしまうタンパク質である。。このタンパク質は、バチルス属の微生物が、菌体の中に貯め込むタンパク質だ。近縁のバチルス属細菌には、納豆菌がある。殺虫性のタンパク質は、昆虫の腸管に付いて、虫だけに毒性を現す。人間には毒性はない。
 このタンパク質の遺伝子を植物に組換えて、微生物農薬を植物自身に作らせるわけである。実際に殺虫性のタンパク質を生産する組換え作物を使用すると農薬の使用量を減らせる。予想以上の効果も報告されている。BTタンパクは、甲虫には殺虫効果があるが、アブラムシは殺せない。しかし、組換え作物の畑では、農薬の使用量が減ったので、蜘蛛などの益虫が増加して、その結果、アブラムシが減少するという付加的な効果も観察されている。こうして減農薬のジャガイモを食べることが出来るのである。耐性の虫は、発生するか?と言う疑問に関しては、腸管のレセプターの変化した薬剤耐性虫ができる可能性はある。現実には、まだ報告はない。ちなみに北海道のジャガイモでは、虫の害よりむしろ細菌性の病気の害の方が多い。
<害虫耐性のジャガイモは、毒を持っているのか?> BTタンパク質は、以前から安全性が確認されており微生物農薬BT剤として販売されている。ネズミが、このタンパク質を5.2g(Kg体重あたり)食べても、なんの変化が観察されなかった。これは、60KgのヒトにするとBTタンパク質312gで、発現量から計算するとジャガイモ300t、トウモロコシ48tと食べきれない量に相当する。
<安全性試験では、何をしているか?> 導入した遺伝子から産生される物質新しく作られるタンパク質が、宿主の作物の中でどれくらいの濃度で作られるかを調べ、それよりも100倍以上高い濃度で実験動物に投与して、変化を調べる。短期間にたくさん食べさせたり(急性毒性)、長期間にわたって食べさせ続けたりして(慢性毒性)、異常がなければ、従来の作物と同等以上の危険性はないと判断する。
<日持ちの良いトマト その1> 畑で完熟したトマトは、おいしい。しかし、マーケットにならぶトマトは、青い実で収穫される。トマトが過熟すると果肉が溶けて、ドロドロになる。ペクチン分解酵素(ペクチナーゼ; ポリガラクツロナーゼ)が作られるためだ。
これは、生産地の近くでしか味わえない。北海道では、1年のうちせいぜい1ヶ月の期間だけとなる。
 組換えトマトでは、熟してから収穫しても、食卓でおいしく食べられる。組換え作物では、ペクチナーゼの構造遺伝子に相補するRNA(アンチセンスRNA)を作らせて、タンパク合成を止めている。熟成酵素の発現を抑制して、日持ち向上させているのである。
<日持ちの良いトマトは、プラスチックのように腐らないのか?> 従来のトマトは、熟成にともないトマト自身が、ペクチン質を溶かす酵素を作り、内部から溶けてドロドロになった。組換えトマトでは、この酵素を作れないようにして、溶けるのを遅らせている。一方、環境の細菌やカビが原因で腐敗するのは、従来のトマトと同じである。
<組換え植物は、アレルギーを起こすか?> アレルギーの原因となるのは、タンパク質が多い。もし、アレルギーの原因になるタンパク質を組換えで導入すると、確かにアレルギーが起こる。ブラジルナッツの例がこれにあたる。しかし、アレルゲンにならないタンパク質の遺伝子を導入してもアレルギーは起こらない。不測のアレルギーが起こる可能性を心配する人もいるが、これは従来の食品でも可能性があり、組換えだから可能性が増える理由はない。
 アレルギーの原因になるものは、たくさんある。日本の食物アレルギーの5大原因として、鶏卵、ミルク、大豆、小麦、米がある。そのほかに重篤ショックを伴うソバによるアレルギーも有名だ。アレルギーを議論する前に、組換え作物以外の食品の安全性を考えてみよう。
<食品の安全性の考え方> 食品は、歴史的に安全だという意見もあるが、実はは錯覚である。誰でも知っているように、食塩の取りすぎは、高血圧の原因になる。脂肪の取りすぎは、肥満や高脂血症を引き起こし、酒の飲み過ぎは肝臓疾患となる。山菜のフキノトウやワラビには、発ガン性物質が含まれていることは有名だ。食品でないがタバコの発ガン性も周知のことである。このように歴史的に食べている食品でも手放しで安全なものとは言えないのである。むしろ危険性を知りつつ摂取していると言える。一方、組換え作物だからといって、現状を上回る危険が発生する根拠はない。「もしも」の危険性を言うなら、従来の食品にも同等に存在している。これを「実質的同一性」とよぶ。
<異種タンパクを食べると体に悪いか?> ステーキやカニは、ご馳走である。しかし、ヒトにとっては完全に異種タンパク質である。雑食性の生物であるヒトは、膨大な異種タンパク質を食べている。もし、同種のタンパク質を食るなら、人肉を食べることになる。我々は、微生物のタンパク質もたくさん食べている、納豆、漬け物、麹漬け、パン、チーズ、ヨーグルト。だから、異種タンパク質だからといって安全性を問題にするのは、変なのである。
<NO組換え作物のトリック> ある団体が、組換え作物を問題にしたキャンペーンをしていた。よくよく話を聞いてみると、組換え作物が危険だとは、一言も言っていない。だた表示を求めている運動であったが、そのスローガンは「NO組換え作物」であった。この団体も組換え技術については勉強会をし、危険性がないことを理解していた。商売の世界では、他社品をけなして、自社品を売り込む手法は許されている。危険性のないものに対して、表示を法制化するのは、規制緩和に逆行する。問題なのは表示に官僚や外郭団体が関わることである。
<表示義務化で日本農業の凋落は加速する> 表示義務化の農水省の決定は、日本農業の凋落を加速するだろう。組換え技術で、減農薬、省力化、アレルギーの減少、畑で熟したおいしさ、など良い形質をもった種々の農産物を作ることが可能になるが、表示義務化でマイナスイメージがつくと、日本の企業は、組換えの研究を抑制するであろう。その結果は、基幹作物に関する有用技術は、すべてアメリカの特許で押さえられることになろう。すなわち、日本農業は、お米でさえ、アメリカから高い特許料を払って種を購入することになり、日本の農業は、アメリカ企業の軍門に下るのである。
<健康によい食品を提供する組換え作物> 農業者は喜んでいる。農薬の量を減らせ、畑を鍬込む作業がなくなり、作業量やコスト面でのメリットが大きい。そのため、アメリカ、カナダ、アルゼンチンの農家は組換え作物の生産を増やしつつある。
 消費者がメリットを享受できる組換え作物の開発も進んでいる。すでに完成しているのは、熟したトマトやアレルゲン少ない米などである。油の組成と健康の関係が議論されている。植物油を作る酵素の遺伝子が取り出されている。これらをナタネに遺伝し導入してやれば、もっとも健康によいω3とω6脂肪酸の比率(ω3/ω6比)の食用油が安価に利用できるだろう。
 著者自身、食物アレルギーを持っており、遺伝子組換え技術こそ安心して食べられる作物を作ることが出来るのである。未来予測としては、遺伝子組換え作物だからこそと言う理由で、減農薬や減アレルゲン、栄養成分豊富で安心して好んで購入する消費者が増えて行くと考えている。その中に、日本で開発された商品が入っていてくれることを願っている。

2.「オホーツク圏で採れる健康に役に立つ食品素材について」
      北見工業大学 生体システム科学研究室 教授 山岸 喬 氏
(1) はじめに
 まず、今話題の遺伝子組換え農産物についてお話ししたいと思います。ご存じの方も多いと思いますが、最初アメリカで日持ちのするトマトが成功し許可されました。しかし日本では、最初こういった新規食品についてはアレルギーが強いので許可されませんでした。農水省や、キリンビール(株)は、この遺伝子組換えしたトマトを栽培していましたが、その目的はアレルギーをなくするためでした。今でも日本はアレルギーが強く、世界の中でもっとも遅れてきていますし日本とアメリカの農業の体力差が開いてきているのが現状です。このことは、みなさんで考えていただかなくてはなりません。これまで、植物の育種は放射線育種といってγ線を当て、生き残った植物の中から目的に合う植物を選択するという方法で行われてきました。たとえば、冬でも枯れない高麗芝を開発し、現在茨城県でゴルフ場などで実用化されてきています。また、北見特産のハッカはニーズの変化に伴って品種がかなり変わっています。たとえば、機械化に適している品種やメントールの含量が増えた品種などがありますが、これらの形質はすべて遺伝情報なのです。遺伝子組換え植物は、たった一カ所のみ変えたもので、安全性としてはこれまで1000年以上もかけて安全性を確認したものと変わりがないのです。

(2) 北見の食材 タマネギ
 北見の食材で健康によいものが多いということを主眼に、現在私どもが研究に着手しているものをご紹介します。食品の機能のなかで今話題になているのが、生体調節機能です。北見特産であるタマネギの生理作用としてはイオウ化合物が血液凝固抑制作用、抗菌作用、ペクチンが血中コレステロール・中性脂肪低下作用、フラボン・ポリフェノールが抗酸化作用があると知られています。全国の1/3(北海道は2/3を作る)をこの地域が生産しています。そこで、加工して健康によいものを作ろうと考えています。特に、皮の部分はポリフェノールが多く、草木染めの色素としても利用されています。加工場で出る皮の量が大量で産業廃棄物として困っていますが、かさばってるので運ぶのも大変なので焼却しているのが現状です。タマネギの可食部は植物の増殖のための栄養分ですが、この皮にはそれを守るいろんな成分が入っているので有用な資源になると考えています。

(3) 北見の食材 ルバーブ(食用大黄)
 歴史的に宣教師がこの地に広めたのがルバーブで、漢方で使う大黄と近く、いくつかの生理作用が知られています。動物実験では整腸作用が確認されています。レモン並の酸っぱさが特徴で、日本人にはあんまり好まれないので、もっと食べやすい形態にする必要があると思っています。また、食用部分は有機酸やポリフェノールが豊富ですから、健康によい食材として開発できると考えています。現在、50系統(国立衛生研究所から入手)のルバーブを集めており、北見の風土に合い、整腸作用等も持ち、しかもおいしいものになるように育種を行っています。


北見工業大学 山岸 喬 氏

(4) 北見の食材 ホタテ
 衛研当時は解毒の検査で研究が忙しかったのですけど、いまは有用物質を探しています。中でも、外套膜には15%のコラーゲンが含まれており、タンパク質もふつうのタンパク質とは違っていそうである。これらは、ミネラルの補給、ミネラルの吸収促進、皮膚の老化抑制が考えられる。特に耳の部分は、光や物理的な触覚器がありいろんな有用成分があるはずと考えていますが、研究はこれからです。

(5) 北見の食材 昆布
 オホーツクでは少ないが羅臼、利尻、礼文島は収穫している。昔から健康に良いと言われていたが最近健康にいいといわれている根昆布、茎、仮根が産業廃棄物としてでてきている。特に、仮根部が多い。ここには、ナトリウム、カルシウム、カリウム等のミネラルが非常に多く血圧降下作用があると言われています。これから、コレカット(共成製薬がつくり大阪のカイゲンが売っている)という商品がつくられていますが、これは昆布の中のアルギン酸を水に溶ける状態にして1本に4g入れたドリンクなのです。天使大学で便の堅さを比較したところ男性と女性は違う反応を示しました。男性はちょっとだけ食物繊維をとると便が柔くなったのですが、女性はなかなか柔らかくなりにくいのです。この辺も、ターゲットを絞ると良いかもしれません。

(6)これからの北見
 健康産業は1兆円産業です。この地域でも、この分野に進出できる可能性が大いにあります。
健康産業に進出するには
 a.食素材の確保 農水産加工場との連携
 b.科学的評価 官学との連携
 c.販路の確保 既存販路にどう乗るか
 d.権利の確保 特許、商標
 e.法規制の確認 薬事法、食品衛生法
が大事です。また、産学官の連携が特に重要なのは言うまでもありません。

II 産業振興研究会
−オホーツク地域でのバイオ開発の可能性とそのシーズ−
 地域バイオ育成講座に引き続き産業振興研究会が開催されました。今回は、北見地域の発展を目指してバイオの可能性を探る討論会にしたいとの熱意から、35名の参加者から活発な質疑討論が交わされました。以下その概要をご紹介します。
(1) 開会の挨拶
 産業クラスター研究会 東オホーツク 副代表 福岡 弘幸 氏
 非常にわかりやすく有意義な講演会ありがとうございました。以前、フィンランドの視察を行ったとき、ヘルシンキから車で1時間ほどのルシアというところで、産業クラスターの話を聞いてきました。30年ほど前に経済が底をついたときに、産学官で共同して情報交換を行い民間が積極的に地域の産業興しに取り組んだせいか10年で失業率が上昇したという話です。失業者に仕事を与えるという積極的な政府の方針が実を結んだ形になっています。今、日本特に北海道は未曾有の不況に陥っています。新しい産業づくりを今後ともクラスターを通じて作っていきたいと考えています。今行動を起こさないといけません。非常に厳しい時代背景になっておりますので、いち早く地域の活性化が必要なのです。産学官の連携で、この研究会を通じて有意義な話し合いをしていきたいと考えています。

(2) 参加者による討論内容
 北海道バイオ産業振興協会の研究交流事業の説明として、地域のニーズに即した事業化、企業化を目指したものであり、研究テーマが立ち上がったときの補助金の支援や地場産業の振興に役立てていきたいと考えていますとの発言があった後、出席者全員が自己紹介とバイオに対する思いを発表しました。特に、オホーツク地域の問題として、
a.有機肥料は本当に可能か?
b.遺伝子組換え農産物は是か非か?
c.北海道ブランドはいつまで続く?
d.北海道産の利用の仕方・・欲しくても量が足りない場合が多い!
e.パン用天然酵母や地ビール用酵母はどうやって探す?
f.農業、環境分野におけるビジネスチャンスを探る
などの話題について活発に意見が交わされました。いずれもすぐには答えのでない問題ばかりで、来年の2月に行われる予定のこの会に継続して討論していくことを確認しました。本会では、オホーツク地域に住んでいる人たちの意気込みが強く伝わってきました。特に、「大企業も小企業も、末端は数人でやっているから同じ!問題はその数人の能力である。」という発言は印象的でした。まだ会社は小さくても道央さらには本州の企業に負けないと言うオホーツクの人々の自負が強く感じられる会でした。
※次回はH12/1〜2月頃にテーマを決めて開催することを決めました。

地域バイオ推進育成講座報告
「食品の安全性を求めて」−HACCPの理論から活用まで−

 去る平成11年10月27日にホテルガーデンパレスで行われた札幌地域バイオ育成講座「食品の安全性を求めて−HACCPの理論から活用まで−」は、130名以上の参加者があり盛大に開催されました。最初に、地域バイオ育成推進実行委員会実行委員長である高尾彰一氏から開催の挨拶の後、北海道大学農学研究科の浅野先生、(株)京食北海道支社の山口氏とよつ葉乳業(株)十勝主管工場の三宅氏、北海道保健福祉部食品衛生課の米川氏の3人の講師からご講演と解説を頂き、総合討論では会場からも熱心な討論が行われました。また、続いて行われた交流会にも多数の出席者がありここでも熱心に演者を囲んだ討論が行われておりました。
ここに、その講演の要旨を掲載いたします。

1.FDAに学ぶHACCP
          北海道大学大学院 農学研究科 応用菌学教室 助教授 浅野 行蔵 氏

 HACCPなる言葉が、新聞やテレビで盛んに使われている。今回の講演では、HACCPのエッセンスを紹介する。

<HACCPは、製品検査なしで安全をめざす>
 HACCPは、宇宙旅行用の食品を作るために開発されたことは有名だ。安全か否かを出来上がった食品を検査して調べる方法はあるが、検査した食品は、サンプルを取るために開封される。封が開いていては、宇宙旅行には持って行けない。つまり、宇宙旅行のためには、製品検査をしなくとも安全な食品を作ることが必要なのです。

<HACCPは、問題解決方法>
 HACCPは、アメリカで開発された安全な食品を製造する方法である。今回の講演では、おおもとに戻ってHACCPの基本、こころは、なにかを考えてみた。その資料は、インターネットで公開されている。Codex委員会(FAO/WHOの合同食品規格委員会、国連内)のHP(http://www.fao.org/WAICENT/FAOINFO/ECONOMIC/ESN/codex/STANDARD/standard.htm)を参照下さい。
 安全な食品を作ろうと考えたとき、それぞれの食品について製造方法を具体的に決めるのは製造者であるので、何から手をつけたら良いのかを導き出すのにHACCPを使えば、解決の糸口を見いだせる。HACCPは、問題解決の方法である。

<危害要因の同定>
 HACCPでいう、ヒトの身体を脅かす危害は、毒性の微生物ばかりでなく、キノコや貝などの自然毒、ヒスタミンなどの代謝物、ガラスや金属の混入なども含まれる。食品ごとに危害要因は異なる。安全な食品を作るためには、どのような危害が、存在するかを調べ、正体を知って、対処することが必要だ。

<クリティカルは、危篤の意>
 食材は、様々な調理加工を経て食品となる。その過程で、安全に最も強く関わる工程を設定することが必要です。すなわち、CCP(クリティカル・コントロール・ポイント)です。最初のCのクリティカルは、「危篤」の意味も持つ。一線を越えてしまうともう戻れないぎりぎりのポイントだ。特定の加工工程さえ、しっかりと首根っこを押さえてコントロールしておけば、安全な食品を作ることができる、これがCCPなのだ。

<商業的殺菌は菌が生きている>
 安全な食品を求めて、微生物をすべて殺すならば、食品は、缶詰とレトルト食品だけになってしまう。安全に作る方法があるが、それでは食品の魅力が減り商品力が失われてしまう。
 そこで、食品のpHや糖濃度、添加物、包装などを吟味して、安全性を高めた食品組成にする工夫や、菌が存在しても生育しない静菌状態を作る工夫が必要だ。さらに、製造工程での微生物の混入など二次汚染の防止に環境整備も不可欠となる。

<HACCPの心をつかもう>
 HACCPと厚生省の通称、マル総(総合衛生管理過程)とは、異なったものである。HACCPは、個々の食品が、原料から加工されて商品へとできあがる過程を動的に追いかける考え方である。工場的な衛生管理は、SSOP(Sanitation Standard Operation Procedure、衛生標準作業手順書)として、考え方を別にして行われる。
本物のHACCP は、強制されたり認証を受けるためにやるものではない。HACCPの考え方で製造方法を改善すれば、企業の利益を生むし、顧客の利益にもなる。不良品が減り、ミスが減り、ロスが減り、失敗が減り、工場の稼働率が高くなる。大企業だけでなく、中小企業、レストランでも実施可能なのである。HACCPは、問題解決方法である。知恵の集積である。建物と設備さえ対応すればHACCPができるのではない。
 HACCPの本格的スタートには、平均2年を要する、というのが標準的だ。しかし、2年待たねば効果が出ないのではない。準備を始めてすぐ効果が現れる。HACCPの心をつかんで、企業利益をつかもうではありませんか。

2.水産加工業における品質保証と品質管理のあり方を考える
          (株)京食 北海道支社 品質保証室長 山口 博 氏
(1)はじめに・・製造と品質管理について
 基本的にHACCPなり食品に関する品質保証や品質管理のあり方、あるいは安全に関する情報、経験というのは業界全体で共有していくべきだと考えている。そしてより安全な方向に向けて各企業が取り組めたら良い。私は最初から食品業界に入ったわけではなく、最初は精密機器の会社にいて、QC、製造管理、品質保証という経験をし、品質管理の考え方を習った。ところが、京食にいくと製品を管理するという基盤が全くなかった。そこで、管理の必要性を一緒に考えて行く基盤の構築を進め、ISO9000の取得へと繋げた。

(2)品質保証と問題点
 品質保証というのはユーザーがこのメーカーの作る物は大丈夫だという安心感を与えることで、それには品質管理、安全な物を作る基本的なノウハウ、サービスまで含めて品質保証と考えるべきだ。品質管理とは、現場の中で行うべき技術的ノウハウでこれは決して外に対してやる物ではない。それにはまずHACCPにあるような安全製品を作るためのシステムを作り上げなければならない。総合的な品質管理と全体をマネージメントとして考えた品質保証が必要である。
 問題点は、末端の営業や製品担当者や作業者が自分たちの取り組みがお客さまにどう思われていて、何を望まれているのかを理解していないことが多いことだ。
 開発設計時で確認を要する検討事項は、1)安全に関する要求と製品特性の把握、2)品質規格上の客観的基準、3)製品プロセスに関する多角的な検証、4)要求ニーズに対する妥当性検証、5)社内組織における相互関係などがある。そして、製品の品質に大きな影響を与えているものとして、1)原料の受け入れ、保管管理から出荷管理までのプロセス、2)製造加工のプロセス、3)製品の保管管理から出荷プロセスがあり、これらの管理計画を定める必要がある。

(3)具体的取り組みについて
実際現場の中でHACCPをやっていくのは実は大変なことだ。作業する人の衛生に対する意識の統一が難しい。事務所も含めて全体で考えていくことが重要。品質管理のメリット、重要性、価値などが作業員に分かってもらえるような教育をすることが大切。小集団活動(QC)というのは食品企業ではあまり一般的ではないが、非常に有益な手法である。
教育訓練も大事だが、むしろHACCPに必要な実際の日々の管理に利用できるように、社員が取り組みの意味を理解して、メリットとその価値観を共有することがまず大切である。

3.「HACCPの承認取得と承認後の要点」
よつ葉乳業(株) 生産技術グループ 三宅 正博 氏
(1)はじめに
 当社は平成8年から取り組みを開始し、その中で農場から食卓までの衛生管理を目指した。食品衛生法で定められているのは、工場に入ってから出るまでで、それ以外については全く何も決められていなかった。

(2)行程状況と管理基準
 乳業メーカーはパターンが決まっているので、ハード面では限定された範囲しか変わることはない。ただ、ソフト面となると、各社各工場が様々な形で違いがあることが明らかになってきたため、基本となるところは社内的に統一した。HACCPはソフト面の基準作りが大切。工場内の基準をきちんと決めておくことが重要。ちぐはぐなやり方、整合性をとれないやり方がでてきた時に、これらをまな板の上に載せてどういうやり方が適当なのかをみんなで集まって文書化していった。

(3)申請−承認の流れ
 社内の方針が決まったら、チーム皆でプランを作って保健所に相談に行った。そしてその検証を行い、うまくいかない点を直して、できあがったものを保健所の方に見てもらった。保健所とのヒアリングから2,3の指導を受け、その後部分的な修正を加え申請書類を完成。そのあと現地調査として、厚生省、あるいは地元保健所の方が入る。このときは、申請書に基づいて工場の現場がなっているか審査される。雪印の問題があった後からは、この審査には必ず厚生省の方が入ることになるそうだ。総合審査の結果、改善指導があり、その改善後に実際に改善の具合を見に来る。改善指導通りになっているかどうかを調べるためである。申請から承認まで3ヶ月から半年かかるのが普通。
(4)承認後の自主検査
 承認後は内部監査(自主監査)を年1〜2回自ら決めて自らやることになっている。外部監査は結構厳しいのでこの内部検査でどれくらい直せるかが重要。当然、はずれている場合は必ず指摘され、文章が残ってくることになる。一回通ったからもう大丈夫という世界ではなく、その後も厳しいし、状況が変わると変更届を必ず出さなければならない。CCPに関わる変更があった場合は厚生大臣に申請書を出す。HACCPを見直しなさいと言う一行があるが、これが内部監査になるのだと考えている。HACCCPが機能しているか、プランと適合しているかと言うことを常に見直している。

4.「HACCPの構築と問題点−雪印乳業食中毒事件への行政の対応を主体として」
          北海道保健福祉部 食品衛生課  参事 米川 雅一 氏
(1)はじめに
 今、北海道では、26カ所180人のHACCPを指導できる保健衛生管理人をおいて、相談を受けたり、HACCPがきちんと運営管理されているかをチェックしている。また、来年の1月から厚生省の担当官を地方に配置することにもなっている。北海道は中でも結構しっかりとやっている。まずHACCPについて考える場合、こういうシステムというのは決まりに基づいて固定されるという考え方は間違い。HACCPは常に進化すると考えてほしい。いろんな食品に対する導入の仕方が違ってくる。そこにある工場の環境条件もしっかり考えなければならない。

(2)環境条件の重要性
昨年は、小樽を中心とした腸炎ビブリオ、そして今年は雪印の事件といった立て続けにおこる大きな食中毒事件が起こった。HACCPだけではなく一般的衛生管理に入るような事柄を含めて、地域特性を掌握したCCPを考えておかないと非常に問題が生じることになる。これまでの経験から、CCPを考えるときに工場の立地条件を考えておかなければならないと言うことを痛感した。環境条件というものがとても重要。
今回の雪印の事故のように、環境要因を念頭にCCPが考えられているかどうかを、HACCPを導入するしないに関わらず一般衛生管理に導入しなければならない。ところがそれが念頭に置かれていない、さらには今回の雪印大樹工場のように危機管理がなされていないと食中毒事故が起こってしまう要因になる。

(3)今回感じたこと
 マスコミの対応は非常に間違った報道が多過ぎる。HACCPを徹底的に問題にした7月の時点での我が国の対応というのはいったい何だったのか。HACCPの問題等よりは食中毒の原因となる菌の増殖要因を明らかにしなければならなかったのに、HACCP全体を悪いということを報道したために、完全に国民の目がそっちにシフトしてしまった。専門家ですら、そっちに振られてしまった。今全容が明らかになってくると、大樹工場で突発的事故が起きたときに微生物学的な知識をもって対処できるかどうかが問題。一般にHACCPでは一般的衛生管理をきちんとやることが一番大事なこと。当然、これからもHACCPは大いに普及し、みなさんにHACCPに基づく衛生管理をやってもらいたい。
 そのために北海道庁は保健所を通じて、厚生省としっかり手を組んでHACCPの普及に努めて参りたい。また、北海道として道産の食品の安全性を示すことは死活問題であり、これからも道をあげて取り組んでいくことが必須であると考えている。

「南空知ニュービジネスチャレンジフォーラム」
〜地機産業とバイオ技術の融合を探る〜開催報告(速報)

 去る平成11年10月27日(水)に三井グリーンランドホテル サンプラザにて「南空知ニュービジネスチャレンジフォーラム」〜地域産業とバイオ技術の融合を探る〜が開催されました。
今回のフォーラムは、北海道の地域振興に貢献する事業の一環として計画され、地域バイオ推進実行委員会並びに空知地域新産業創造振興協会・南空知産業クラスター創造研究会の主催で開催されました。
 後援は、岩見沢市他管内10市町村、岩見沢商工会議所他管内3商工会議所・商工会、JAいわみざわ他3JAで地域の多く方にご参加を頂きました。
 会場中央にはカボチャ等の作物が置かれ、三方を三段のイス席で囲む作りとなっており、トーク番組のスタジオを連想させるものでした。
 フォーラムを成功させたいという地域の思いでこのようにしたとの話に感激致しました。
開会の挨拶を高尾HOBIA会長他より頂いた後、基調講演「地域バイオ育成講座」を北海道農業者サロン事務局長(雪印種苗株式会社 主管)田中正夫様より「北海道農業のビジネスマインド〜高付加価値と多様性の追求」と題して独特な話術と北海道農業者サロンのメンバー紹介を含めて講演頂きました。
 以下に、概要を報告致します。

田中 正夫氏は、久しぶりにこの地域を見て回った感想について、「岩見沢は食事の美味しい店が思い浮かばない、昔どじょう鍋があったやってみてはどうか。歴史博物館では水で苦労していたことのみが印象に残った、展示に工夫が必要と感じた。」と語り、農業に対しては、
○ハーブを手がけているが、それよりトウモロコシとトマトを一緒に植えてはダメというような作物同士の働きの利用。
○単作障害から輪作を実施しているが、冷害対策にもなる混作の研究。
○岩見沢は都市化しており、高齢者対象としての水田・畑付住宅を開発。
○空知の市町村の合理化・合併の推奨。
などを提言され、さらに、北海道農業者サロンのメンバー紹介の中では様々なアドバイスをされていました。

 休憩の後、「地域産業とバイオ技術の融合を探る」をテーマに全員参加型フォーラムが行われました。
 コーディネーターには南空知産業クラスター創造研究会コーディネーターの木村 浩一氏、パネリストは北海道農業者サロン 事務局長 田中 正夫氏、北海道東海大学 環境研究所 所長 西村 弘行氏、旭川バイオテクノロジー推進懇話会 会長 木村 晃久氏、南空知産業クラスター創造研究会 検討部会長 墨谷 和則氏で進められました。
 冒頭、木村コーディネーターより、「世界の人口は現在の60億人から2015年には107億人に急増する事、地下水位の低下、耕作面積の減少の中で、食料は毎年3%の増産が必要である」との問題提起の上で議論に入りました。
 ディスカッションでは、バイオは手段であり、目的が大事である。本当に厳しい消費者の生の意見を聞くことが重要。
 食料のポイントは美味しい・食べ易い・安価・安全・健康である。
 大学はベンチャー企業の立上げ等社会貢献が必要である。
 ニュービジネスは興すのではなく、必然的に出てくるものである。
 作物は健全なものを作るべきであり、理解を求める為に教育が必要である。
     等の意見がパネリストから出されました。
 最後に、パネリストよりキーワードの言葉として、木村さんは「チャレンジャー(若さ)」、西村さんは「アグリ・エコ産業」、田中さんは北海道農業者サロンのテーマである「国家に力を与え耕している土地に価値を与えるのは、そこに住む個々人の体力や気力に他ならない。土地の価値はそこに住む人間の価値によって決まる。」、墨谷さんは「ID農業(体験とデーター)」との紹介があった。木村コーディネーターよりまとめの言葉として「チャレンジと主張」としてフォーラムを終了しました。